BL(?)短編集

土田

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○○の日とかもろもろ

ポキプリ

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「はい、これあげる。」

そう言われて友人から差し出されたのはお馴染みの赤い箱のお菓子。
もらえるものはもらっとくをモットーに生きている俺としてはいただかない訳にはいかない、ということで快くそれを受け取った。

「サンキュ。気前いいな。」
「行きにコンビニ寄ったら入って直ぐんとこに置いてあってさぁ。」

自分から話を振っといて悪いが俺の意識は既にもらったお菓子に向いていたため、「ふーん」と軽い返事をしながら箱の封を切り中の袋もビリッと破いて、早急に袋の中から一本そのお菓子を取り出した。
それを口に持っていきパクッとくわえると、小さい頃から馴れ親しんだ甘い薫りが口の中いっぱいに広がる。

それを見計らったかのようににこにことこっちを見ていた友人がその顔のまま、右手に白い紙切れを持ち左手は手の平を上に向けこちらに差し出してきた。

「…金、取んかよ。」

よく見ればその紙切れはコイツが学校に来るまでに通る道沿いにあるコンビニのレシートで、その内容は俺が今し方食ったお菓子を一つ買ったというものだった。

「別にぃ、イヤならお金じゃなくていーよ。
お前の誠意を見せてもらおうか!」

そう言うと目の前の男は手に持っていたレシートを投げ捨て、まるで赤ずきんちゃんに出てくるオオカミのごとく俺に飛び掛かりガシッと肩を押さえられた。
いきなりのことに目を丸くし男を見ていると、何を思ったか俺が今だにくわえていたお菓子の反対側に食らい付いてきたのだ。
更にそれだけでは止まらず、この野郎そのままこっちに向かってポリポリと食い進めてきやがった。

危ないッ!と咄嗟に今口に含んでる部分を噛み砕き男の腹を蹴飛ばすとあっさりと後ろに倒れ、その拍子にそばにあった机にぶつけたのかヤツは頭を抱え呻きながら悶えている。

このままコイツに今日一日唇をロックオンされたまま過ごすのは危険だと判断した俺は、捨てられたレシートを拾い上げそこに表記された金額に多少の色を付けそのレシートで包み、今だに悶えている男のポケットにそっと忍ばせ席に戻った。

なんか、どっと疲れた。
まだショート前だってのに、大丈夫か、俺。

はぁ…とため息を吐きがっくりと肩を落とした俺は、甘いものでも食って疲れを吹き飛ばそうと店で買うより高くついたお菓子をめいっぱい味わうために袋からまた一本取出し口にくわえのだった。


end
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