夏から夏へ ~SumSumMer~

崗本 健太郎

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第7話 セミとピアノ

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*大好きなセミ取りの話
 1年生の夏休みに下松に帰省して、3週間ほど泊めてもらっていたことがあった。おじいちゃんとおばあちゃんの家の近くにはキリスト教の小さな教会があって、たくさんの木が生えていた。そこでは毎年セミが羽化しており、『アブラゼミ』や『クマゼミ』や『ツクツクホウシ』や『ニーニーゼミ』のような少し珍しいセミまでいた。

夏の時期に田舎に帰ると、毎日のようにおじいちゃんとセミ取りに出掛け、虫かごいっぱいにセミを取って帰り、おじいちゃんとおばあちゃんが寝ている一階の部屋の網戸に止まらせていた。

オスには『共鳴板』と呼ばれる器官があって、それを使ってメスに求愛するために鳴くのだが、今思えばセミの鳴き声がうるさかっただろうに、ぼくのために何も言わずに網戸に止まらせたままにしてくれていた。そして、そのまま捕まえていては寿命が残り2週間しかないセミの一生が可哀想だと言うことで、朝になると外へ逃がしてあげていた。

そんな中で少し珍しいものを見ることがあったのだが、それは幼虫を捕まえて来て夜に見る『脱皮』だった。セミの幼虫の背中が割れて中からセミが出て来て、次にその殻にセミがぶら下がり、最後に柔らかかったセミの体が乾いて硬くなるという具合だ。サナギの状態があるものを『完全変態』というらしいが、羽根が生え、新しく生まれ変わるセミの姿は凄く神秘的で、何度見ても飽きないものだった。


*ピアノを習っていた話
 1年生から習い始めたピアノには同じクラスのあみちゃんも通っていて、ぼくの授業の前に習っていた。けど、これが当時のぼくにとってはかなり苦痛で、練習嫌いのぼくは家であまり課題をやって行かなかったのだが、あみちゃんは毎回ちゃんと宿題をやってくるので、先生は毎回そのことを引き合いに出してぼくを叱るのであった。

我慢して続けていたのだが、あまりにもキツく言われるので泣いてしまったことがあり、「男の子なのに情けない」と言われたりしていた。結局ぼくは、ピアノを習うのがどうしても嫌になり、1年生の終わりにこの習い事を辞めてしまった。ぼくは今でもこの時に『ピアノを辞めなければよかった』と考えており、子育てをしている人は『別の教室を探す』などしてなるべく続けさせてあげるようにしてほしい。

そしてもし、小学生を教えている人がこの本を読んでくれていたら、その子を叱るのではなく、『その習い事の楽しさ』を教えてあげるようにしてほしい。昔の作曲家の曲などよりも、『流行りのアニメの主題歌』や『ジブリのテーマソング』などの方が、小学生は圧倒的に興味を示すものだと思う。 

この年頃の子供には根性だとか将来の為とか言っても意味はなく、指導者が『いかにその才能を伸ばすか』ということを念頭に置いて教えてほしい。なので、絶対に頭ごなしに否定して、その子の才能の芽を摘むようなことはしないでほしい。

そして、ピアノを辞めて3ヶ月ほど経ったころ、あみちゃんが指に包帯をして来たことがあった。どうしたのか聞いてみると、遊んでいて爪が剥がれてしまい、治るまではピアノが弾けないのだという。何をするにも不自由だし、気の毒だなと考えていたのだが、爪が治った時にピアノの腕が衰えてしまっていたらしく、結局あみちゃんも先生に怒られるのが嫌で、ぼくと同じようピアノ教室を辞めてしまった。


*こくごの授業の話
日本の小学校では国語の授業の時に『音読』というものを行っており、これをやることによって正しい発音を身に付け、かつ語彙を増やすことができるようになるのである。

教科書にのっていた話の中でも特に印象に残っているのは『おじさんの傘』という話で、これはあるおじさんがとてもキレイな傘を持っていたのだが、そのあまりのキレイさに使うことをこばみ続け、だれかの傘に入れてもらってばかりいた。

そのおかげで傘はきれいなままだったのだが、ある時出会った女の子から「どうしてその傘を使わないの?」とたずねられ、「もったいないから使えないんだよ」と答えた。すると女の子から「使わなければ、ないのと一緒だよ」と言われてハッとして、それからはそのきれいな傘を使って雨の中を歩くことができたという話だ。

他には、新美南吉さんの『ごんぎつね』という男が母親にあげようとしていたウナギを子ぎつねが食べてしまい、その償いのためにクリを送り続けていたのだが、最後は泥棒と勘違いされて撃たれてしまう話や、同じ作者の『手袋を買いに』という母ぎつねが心配しながらも、子供を信じて手袋を買いに行かせる話など趣深い話が多く掲載されていた。

この音読は宿題としても行われており、家に帰ってから家族の人に聞いてもらって『サイン』をもらうというものであった。後から知った話だが、場合によってはこのサインを偽造して、親の字を真似て書いて宿題をサボろうとする太い輩もいたらしい。

ぼくらの学校ではおそらく、真面目に取り組んでいることがほとんどであったため、そういうことはなかったのではないかと考えられるが、ぼくなんかはそんなまどろっこしいことをするくらいなら宿題自体をやってしまえば堂々と授業に参加できるではないかと思う。だが、中には宿題が出ていたことに学校に行ってから気付いたり、宿題をやることがめんどうだと感じる人も居たのだろう。

なんにしてもこの『音読』というもののお陰で今ではスラスラと詰まることなく日本語が話せているし、こういうところはいい意味での日本の教育レベルの高さを表している話であると思う。
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