夏から夏へ ~SumSumMer~

崗本 健太郎

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第29話 四年生 転校初日

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第五章  四 年 生 編

*転校の思い出の話
1997年4月、大人気漫画ワンピースの連載が始まったこの年に、ぼくは大好きだった千葉から旅立ち、転校先の家へと向かっていた。ぼくらの引っ越し先は、あの『阪神淡路大震災』があった『神戸市東灘区』で、山手に地震の時に瓦が2枚落ちただけというかなり頑丈な一軒家の社宅があったので、そこを借りて住むことになっていた。

新幹線に乗って新神戸駅まで辿り着き、そこから地下鉄で三宮まで行って、阪急線の最寄り駅が偶然にも『岡本駅』であったことで家族で盛り上がったりしながら、そこから坂を上って新居まで向かった。

その日は雨が降っていて、初めて見る神戸の景色はどこか幻想的な感じがしていた。家の庭に飛び石があることに甚く感動し、駐車場のコンクリートの壁をカタツムリが食べているのを不思議に思ったりしながら、新生活が始まる期待と不安が入り交じった感情に妙な高揚感を覚え、その日はなかなか寝付けなかった。

そして迎えた転校初日、慣れない学校に行くのはかなり不安な体験だった。1年生から入学する妹とは違い、『人間関係が既にできている集団』の中で暮らし始めるのは、子供にとっては負担の大きい事で、当日はそわそわしっぱなしだった。

学校に着くと40代くらいの女性の先生が案内してくれて、校庭に並んでクラス毎に分けられたプリントから自分の名前を探し出そうと試みた。
「前まで3クラスやってんけど、今年から4クラスになってみんな喜んでんねん」

 先生は至って普通なのだが、ぼくにとってこの言葉は覚悟していたとはいえ、やはり少し衝撃的だった。その理由はこの先生が話している言葉というのが『関西弁』であり、ぼくが以前住んでいた関東で話されている『標準語』とは口調がだいぶ違っているからだ。

「そうなんだ。それでみんなこんなに盛り上がってるんだね」
「今年は転校生が多くてね。他にも15人くらい新しい子が来てるみたいやわ」
「ぼく以外にもそんなに居るんだ。あっ、先生、ぼく4組になったみたい」
「そうやろ。そやから私が案内してんねん。4組の担任の大下です~よろしく」
「そうだったのか。うん、よろしくね先生」

 そう言うとぼくは4組の札が立っている場所に並んで、教室に連れて行ってもらうのを待っていた。ちょっと厳しそうな感じもするが、親切に案内してくれて良い先生だと感じていた。
 それから暫くしておおした先生に案内されて、学校の入口側にある建物の3階の一番奥の教室に案内された。すると、隣の席に座っていた子が話しかけてくれて、少し身の上話をすることになった。

「転校生なんやろ?どっから来たん?」
「千葉の土気ってとこだよ」
「ふーん。結構遠いとこから来たんやな。千葉って関東やろ?」
「そうだよ。だからこっちのことは全然分かんなくって――」

「それやったら俺が教えたるわ。虎山って言うねん、よろしく」
「虎山くんか。ぼくは岡本っていうんだ、よろしくね」
「おかもとか、よろしく。まあわからんことあったらなんでも聞いてや」
「ありがとう、そうさせてもらうよ」

 転校初日は緊張するものだが、こうやって話し掛けてくれる子がいたりすると後々クラスの輪に入って行きやすかったりするので、虎山にはこの時のことで凄く感謝している。

そんなこんなで、初日はクラス替えだけだったので、この日は午前中で早々に学校を終えて帰宅した。これからの学校生活で起こる、『良い事も悪い事も』この時には知る由もないのであった。


*おおした先生の話
小学校の先生は授業中に時間が余った時に自分の昔の話をしてくれることがあるのだが、おおした先生もそういう時があった。そして、天使の話と題されたその話を20分ほど聞いた後、ちょっとした工作で出たゴミを授業終わりに一番前の席に座っていたぼくに

「それ、ほうっといて」と言って手渡してきた。
「うん」そう言って放置しておくと、次の授業の時間になって、
「ほうっといってって言ったやんか!!」と怒られてしまった。

ぼくはなにがなんだか訳が分からず、
「えっ、でも、ちゃんとほうっといたよ?」と言ったのだが、
「もうええわ」と言って、近くに居た井本くんに任せてしまった。
いもやんはそのゴミをつかんでゴミ箱に入れながら、
「捨てといてって意味やで」と優しく言って教えてくれた。

 今は改善されているのかもしれないが、ぼくらが小学生の頃(1990年代)には、転校生に対するこういった配慮は皆無で、『方言が本気で分からない』のを理解してもらえないことが多々あった。これは今でも理不尽だったと思うし、教員になる人は、『自分の言葉が方言かもしれない』ということを念頭に置いて話してほしいと今になっても思う。
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