惑星ダイナーの主人、謎の男を拾う

ゆかり

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プロローグ

小惑星ジュディ

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小惑星ジュディは主要惑星系と惑星系を繋ぐかつての幹線経路沿いにあり、赤色巨星アポロンを中心に公転している。アポロンには五つの惑星があり、ジュディはその外側に位置していた。氷でできた大地からは宇宙の黒空とアポロン系を一望できる。フルーゲルはこの景色を見るのが好きだった。ジュディにぽつんと建っている星間ドライバー向けのダイナーは、元々フルーゲルの祖父のものだった。祖父亡き後店を引き継いだフルーゲルも、先代と同じく昼夜の運転で疲れ切った男達に熱いコーヒーを飲ませるのを生業としている。

けたたましい軍隊式のラッパの音が響いて、フルーゲルは目覚ましのアラームを止めた。祖父は元兵士だ。これなら起きれないなんてことはないと、わざわざ録音機能のついた目覚ましにラッパの音をセットしていた。祖父が生前に買った時計は持ち主が亡くなって三年経った今も壊れる気配がなく、毎朝きっちり四時にラッパを鳴らしていた。軍役を経たフルーゲルは祖父の趣味が悪いことを毎朝実感する。なんでもない日までこんな風に起こされたんじゃ気が休まらない。浅いマットの敷かれたパイプベッドの上でフルーゲルは身を捩りアラームを止める。毛羽立ちの酷い毛布がはだけてタンクトップと下着だけの若い青年の身体が露わになった。ゆっくり起き上がったフルーゲルは伸びをして、サイドテーブルからシルバーのネックレスを取って首に掛けた。ダイナーの二階にある住居には、店の表のライトの光が差し込んでぼんやりと明るい。アポロンから遠いジュディのような星で暮らす人々もテクノロジーのおかげで今は何不自由無い暮らしが約束されている。フルーゲルはベッド脇の窓から惑星系の中心を見た。巨大な赤い恒星の光が霞んでいる。

フルーゲルは顔を洗ってズボンを履き、愛用のジーンズのジャケットを羽織った。店を開ける前に買い出しへ行かなければならない。勝手口から出ると荷車が後ろに着いたオートバイを連想させる形の船がある。フルーゲルはそれに跨りゴーグルを目に付けた。ハンドルを握り締めて力強く捻ると低い音を立ててエンジンが火を吹く。バイクの周りの砂利が震え、エンジンの勢いで吹き飛んでいった。僅かに車体が浮かんだところでフルーゲルは前傾姿勢になる。また低くエンジンが唸り、バイクは閃光を残して消えた。

ハンドルの中央に表示されたディスプレイの案内に沿って、フルーゲルはバイクをアポロン系の一番外側の惑星に進める。足元は真っ暗な宇宙が広がっており道などありはしないが、ナビが示す通りに見えない道を行けば大型船と衝突することも無いし宇宙で迷子になることも無い。向かいから始発のスペースシャトルがこっちに向かって来て、フルーゲルの頭すれすれを通り過ぎていった。あれが出たということはもう5時だな。全く僻地に住むとただの買い物でこんなに時間を食うんだから。リングを持った大きな星が近づくにつれ、まばらに船が見えてくる。スピードを落としながら距離を詰めると惑星の表面にガスのトンネルがあってそこに船が列を作っている。フルーゲルはその最後尾にバイクを着けた。
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