君が見た春を

稲佐オサム

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① 佐久間と澪の初デート ―「ふたりで見た景色」

①佐久間と澪の初デート

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あの日、文化祭の後。
気持ちを伝え合った二人は、まだ“恋人”という言葉を使うには少しぎこちなかった。

佐久間ハルキが誘ったのは、冬の手前のとある日曜。

「澪、もし良かったら…映画とか、どうかな?」

「うん、行く」

短く頷いた澪は、マフラーをぎゅっと握っていた。

――

映画は静かな恋愛ドラマだった。
カップルたちが並ぶ中、澪とハルキは並んで座ったけれど、手はずっと触れられなかった。

エンドロールの後、澪はぽつりと呟く。

「…なんか、苦しかったけど、きれいだった」

「うん、澪っぽいな、そういう感想」

「え?」

「ほら…ちゃんと、悲しみの奥にある優しさを見てる感じ。前も思ったけど、君の目って、人の本当を見つけるんだなって」

澪の顔が少し赤くなった。

そして帰り道。
公園のベンチに座って、ホットココアを飲みながら、佐久間は静かに手を伸ばした。

「手、冷たいね」

「……うん。でも、あったかい」

その日は、夕焼けがやさしく二人を包んでいた。
初めて恋人同士として歩いた、冬の始まり。
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