君が見た春を

稲佐オサム

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ももかの恋

「声にならない好き」

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高校時代、ずっと見ていた。
澪とハルキの距離が近づくたびに、胸がぎゅっとなった。

――私だって、ハルキ君のことが、好きだった。

でも、澪が嬉しそうに話す彼のことを聞くのが、何より幸せだった。
恋よりも、澪の笑顔が大切だったから。

大学では、それなりに友達もできて、告白されたこともあった。
でも、どこかで“あの日の気持ち”が残っていた。

社会人になってから、偶然同じ保育園で働くことになった年上の男性――安西先生。
控えめで、ちょっと天然で、でも子どもたちの前では本気でふざける。

「西原先生、俺、保育士って…人生で初めて誇れる仕事なんすよ」

その笑顔に、少しだけあの日の想いが溶けていった。

ももかは、ようやく声にできた。

「私…あなたと一緒にいる時間、すごく好きです」

それは、静かだけど、たしかな恋のはじまり。
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