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<水無瀬葉月>
僕の世界には遼平さんしか居ませんから
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『君からのプレゼントであれば何でも喜びますよ。適当な土産物屋に入って、一番最初に目に付いた物で構いません。例えば、地名の書かれたペナントとか、貴方の名前が入った箸とか』
「そ、そんな……、」
いくらなんでもそれは、
『もっと言えば、身に付けられる品がいいかもしれませんね。アホのように大喜びしますよ』
!!!
「ありがとうございます、探してみます……! 相談に乗ってくれて助かりました。お仕事頑張ってください!」
お礼を言いそっと受話器を置いて電話ボックスを飛び出す。
身に付ける物、と聞いて真っ先に思いついたのはネクタイだった。
遼平さんはいつもカッコイイけど、スーツ姿は遠目で見ても目立つぐらいに凄くカッコイイ。
遼平さんと言えばスーツだって印象がある。僕が最初につけたあだ名も『強面スーツさん』だったぐらいだ。
買う物は決定!
でも……、ネクタイってどこに売ってるのかな?
紳士服店ってどこにあったっけ。
十八年間、家と学校の往復しかしてこなかったからお店の知識がない。
知ってるのなんか、それこそ百貨店やスーパーだけだ。
百貨店?
そだ、百貨店なら売ってるはず!
ちゃんとしたブランド品も買えるだろう。
よし、決定だ。
ここから百貨店までは徒歩三十分程度。
時間は六時半で、今から行ったら家に帰りつく頃には八時を過ぎてしまう。
でも、遼平さんは毎日帰ってくるのが遅い。早くても夜十時だ。慌てることは無い。
慌てる事は無いって判ってたのに――いつの間にか早足で百貨店に向かったのだった。
三十分の道のりを二十分で走破し百貨店にたどり着く。
存在は知っていたものの、入るのは始めてである。
立派なガラスドアの前で思わず二の足を踏んでしまった。
なんだか、僕、場違いだ……。
だ、大丈夫。場違いだろうと、入っただけで怒られることはないはず。
僕には遼平さんへのプレゼントを買うと言う目的があるんだ。入らなければ始まらない。
き、緊張する……。
一度、横目で通り過ぎてから引き返し、ドアに手を掛けた。
お……重いぞ……!
扉はガラスドアなのに重厚で、まるで敵の侵入を阻む要塞の扉のようだ。
突然扉が軽くなった。
後ろから来ていたサングラスをかけた黒髪の男の人が押してくれていた。
「ありがとうございます……!」
お礼を行って中に滑りこむ。
目の前の柱に案内板があった。
さすが百貨店。親切な設計だ。
早速案内板を見上げるけれども……。
ふわー。
案内板には様々な店名が書かれてあった。
紳士服店もたくさんある。
そのせいでかえってどこに行けばいいのかわからない。選択肢が多すぎるよ。
年代によって好まれるお店がちがったりするのかな?
「なにかお困りですか?」
ふわりと優しい声で話しかけられた。
制服を纏い帽子を被った受付嬢さんだ。ダークブラウンに染めた髪にウェーブをかけた、垂れ目で優しそうな女性だった。
「ぅ、その、ネクタイを、買いたくて」
「プレゼントですか?」
「はい」
ただでさえ人と話すのに慣れないのに、女の人が相手だと恥ずかしくて目も合わせられない。胸のリボンに話しかけるものの頬が熱くなっていく。
「お相手はどんな方ですか? 年齢は?」
「えと、二十代の男性で」
「お兄さんかしら?」
「いえ、とても良くしてくれる友人です」
「身長はどれぐらい?」
「190cm以上です」
「随分長身の方ですね。有名人だと誰に似ています?」
「えと、僕、有名人は知らなくて……、でも、凄くカッコイイ人です」
「見た目はマフィアです」
突然、耳元で声がして「うわぁ!?」っと悲鳴を上げてしまった。
さっき扉を押さえてくれた黒髪サングラスの人だ。
「そ、そんな……、」
いくらなんでもそれは、
『もっと言えば、身に付けられる品がいいかもしれませんね。アホのように大喜びしますよ』
!!!
「ありがとうございます、探してみます……! 相談に乗ってくれて助かりました。お仕事頑張ってください!」
お礼を言いそっと受話器を置いて電話ボックスを飛び出す。
身に付ける物、と聞いて真っ先に思いついたのはネクタイだった。
遼平さんはいつもカッコイイけど、スーツ姿は遠目で見ても目立つぐらいに凄くカッコイイ。
遼平さんと言えばスーツだって印象がある。僕が最初につけたあだ名も『強面スーツさん』だったぐらいだ。
買う物は決定!
でも……、ネクタイってどこに売ってるのかな?
紳士服店ってどこにあったっけ。
十八年間、家と学校の往復しかしてこなかったからお店の知識がない。
知ってるのなんか、それこそ百貨店やスーパーだけだ。
百貨店?
そだ、百貨店なら売ってるはず!
ちゃんとしたブランド品も買えるだろう。
よし、決定だ。
ここから百貨店までは徒歩三十分程度。
時間は六時半で、今から行ったら家に帰りつく頃には八時を過ぎてしまう。
でも、遼平さんは毎日帰ってくるのが遅い。早くても夜十時だ。慌てることは無い。
慌てる事は無いって判ってたのに――いつの間にか早足で百貨店に向かったのだった。
三十分の道のりを二十分で走破し百貨店にたどり着く。
存在は知っていたものの、入るのは始めてである。
立派なガラスドアの前で思わず二の足を踏んでしまった。
なんだか、僕、場違いだ……。
だ、大丈夫。場違いだろうと、入っただけで怒られることはないはず。
僕には遼平さんへのプレゼントを買うと言う目的があるんだ。入らなければ始まらない。
き、緊張する……。
一度、横目で通り過ぎてから引き返し、ドアに手を掛けた。
お……重いぞ……!
扉はガラスドアなのに重厚で、まるで敵の侵入を阻む要塞の扉のようだ。
突然扉が軽くなった。
後ろから来ていたサングラスをかけた黒髪の男の人が押してくれていた。
「ありがとうございます……!」
お礼を行って中に滑りこむ。
目の前の柱に案内板があった。
さすが百貨店。親切な設計だ。
早速案内板を見上げるけれども……。
ふわー。
案内板には様々な店名が書かれてあった。
紳士服店もたくさんある。
そのせいでかえってどこに行けばいいのかわからない。選択肢が多すぎるよ。
年代によって好まれるお店がちがったりするのかな?
「なにかお困りですか?」
ふわりと優しい声で話しかけられた。
制服を纏い帽子を被った受付嬢さんだ。ダークブラウンに染めた髪にウェーブをかけた、垂れ目で優しそうな女性だった。
「ぅ、その、ネクタイを、買いたくて」
「プレゼントですか?」
「はい」
ただでさえ人と話すのに慣れないのに、女の人が相手だと恥ずかしくて目も合わせられない。胸のリボンに話しかけるものの頬が熱くなっていく。
「お相手はどんな方ですか? 年齢は?」
「えと、二十代の男性で」
「お兄さんかしら?」
「いえ、とても良くしてくれる友人です」
「身長はどれぐらい?」
「190cm以上です」
「随分長身の方ですね。有名人だと誰に似ています?」
「えと、僕、有名人は知らなくて……、でも、凄くカッコイイ人です」
「見た目はマフィアです」
突然、耳元で声がして「うわぁ!?」っと悲鳴を上げてしまった。
さっき扉を押さえてくれた黒髪サングラスの人だ。
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