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第一部 未成熟な想い (小学生編)
第35話
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太一は幸一の方を向かず、下の方を見ながらそう言った。
よそ見をしてコントロールが狂うのは嫌だったからだ。
「そんな! まだ小学生だよ。付き合うなんて」
幸一は美紗子と付き合っているのか? という質問にとても恥ずかしくなり、顔を赤らめて叫んだ。それからハッっとなり、今度は周りを見渡した。
幸一と太一以外は、誰も男子トイレにはいなかった。
「そんなにキョロキョロしてると、便器から外れちゃうぞ」
雰囲気で察したのか、太一は相変わらず下を見たまま言った。
「んっ、だ、大丈夫」
慌てて幸一はそう言うと、下を見た。
おしっこはちゃんと的を外してはいなかった。
「じゃあ、付き合ってはいないんだな」
今度はちゃんと横を向き、幸一の方を見ながら太一は言った。
「だからまだ小学生だろ。そんな事考えた事もないよ」
おしっこを終えた幸一は、ズボンのチャックを上げながら答える。
「そうか…」
言いながら太一もおしっこを終え、チャックを上げ始める。
それから振り返ると、既に洗面台の方に向かっている幸一の方を見て話し始めた。
「俺は好きなんだ。美紗子の事が」
「えっ!?」
またも太一の言葉に驚かされた幸一は、その場で立ち止まり振り返った。
「お前はひょろっとしていて細くて、色白でちょっと女っぽい感じだから、なんて言うの。女子に受けるタイプだと思ってた。だから美紗子と付き合っているって噂を見た時も、ああ、やっぱりって思ってた。ほら、俺は骨太だから、体格はこんな感じだろ。どっから見ても文系って言うよりは体育会系だ。だからかも知れないな、惹かれるのは。俺の知らない世界の女の子なんだよ、美紗子って。都会的で知的な感じで」
「ああ、それなら僕も感じるよ。確かに話していて楽しいし、可愛いと思うよ。でもそういう恋愛みたいなのは、僕らにはまだ早いよ。中学になってからでも遅くはない。そもそもそういう気持ちにならないし」
「その間に誰かに取られたらどうする!」
幸一の話の直ぐ後に、太一が叫んだ。
「えっ?」
そんな発想のなかった幸一は、またまた太一に驚かされた。
太一は叫んだ後下を向いて、少し何かを考えている様子だった。
幸一はその間動いていいのか分らず、洗面台の前で躊躇して立ち止まっていた。
それから少しして、考えが纏まったのか、太一は顔を上げた。
「兎に角、お前も美紗子の事は好きだろ?」
「嫌いじゃないよ。仲の良い友達だと思ってる」
好きという言葉に過剰に反応して、幸一は嫌々ながらという感じで言った。
「そうか…じゃあ仲の良い友達だと思っているのなら美紗子の為だ。幸一、お前これから美紗子と関わるな。美紗子と話すな」
「!?」
太一の口から出た言葉は、またも意味不明で、幸一を驚かせた。
「友達なのに関わるなってなんだよ!」
突然の事に声を荒げる幸一。
「友達だろ! ただの友達だろ! 好きとかそういうんじゃないんだろ? だったら友達の為に、少なくとも五年の間位は関るな。お前と一緒にいたり、話したりしていると、美紗子は…虐めに合うかも知れない」
つづく
よそ見をしてコントロールが狂うのは嫌だったからだ。
「そんな! まだ小学生だよ。付き合うなんて」
幸一は美紗子と付き合っているのか? という質問にとても恥ずかしくなり、顔を赤らめて叫んだ。それからハッっとなり、今度は周りを見渡した。
幸一と太一以外は、誰も男子トイレにはいなかった。
「そんなにキョロキョロしてると、便器から外れちゃうぞ」
雰囲気で察したのか、太一は相変わらず下を見たまま言った。
「んっ、だ、大丈夫」
慌てて幸一はそう言うと、下を見た。
おしっこはちゃんと的を外してはいなかった。
「じゃあ、付き合ってはいないんだな」
今度はちゃんと横を向き、幸一の方を見ながら太一は言った。
「だからまだ小学生だろ。そんな事考えた事もないよ」
おしっこを終えた幸一は、ズボンのチャックを上げながら答える。
「そうか…」
言いながら太一もおしっこを終え、チャックを上げ始める。
それから振り返ると、既に洗面台の方に向かっている幸一の方を見て話し始めた。
「俺は好きなんだ。美紗子の事が」
「えっ!?」
またも太一の言葉に驚かされた幸一は、その場で立ち止まり振り返った。
「お前はひょろっとしていて細くて、色白でちょっと女っぽい感じだから、なんて言うの。女子に受けるタイプだと思ってた。だから美紗子と付き合っているって噂を見た時も、ああ、やっぱりって思ってた。ほら、俺は骨太だから、体格はこんな感じだろ。どっから見ても文系って言うよりは体育会系だ。だからかも知れないな、惹かれるのは。俺の知らない世界の女の子なんだよ、美紗子って。都会的で知的な感じで」
「ああ、それなら僕も感じるよ。確かに話していて楽しいし、可愛いと思うよ。でもそういう恋愛みたいなのは、僕らにはまだ早いよ。中学になってからでも遅くはない。そもそもそういう気持ちにならないし」
「その間に誰かに取られたらどうする!」
幸一の話の直ぐ後に、太一が叫んだ。
「えっ?」
そんな発想のなかった幸一は、またまた太一に驚かされた。
太一は叫んだ後下を向いて、少し何かを考えている様子だった。
幸一はその間動いていいのか分らず、洗面台の前で躊躇して立ち止まっていた。
それから少しして、考えが纏まったのか、太一は顔を上げた。
「兎に角、お前も美紗子の事は好きだろ?」
「嫌いじゃないよ。仲の良い友達だと思ってる」
好きという言葉に過剰に反応して、幸一は嫌々ながらという感じで言った。
「そうか…じゃあ仲の良い友達だと思っているのなら美紗子の為だ。幸一、お前これから美紗子と関わるな。美紗子と話すな」
「!?」
太一の口から出た言葉は、またも意味不明で、幸一を驚かせた。
「友達なのに関わるなってなんだよ!」
突然の事に声を荒げる幸一。
「友達だろ! ただの友達だろ! 好きとかそういうんじゃないんだろ? だったら友達の為に、少なくとも五年の間位は関るな。お前と一緒にいたり、話したりしていると、美紗子は…虐めに合うかも知れない」
つづく
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