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愛の言葉

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「ねーねー」
「なんだ?」
「好きだよ?」
「ああ」
「ああ、ってそれだけ?」
「何?」
「だから! 私のこと、好き?」
「ああ」
「じゃあ、ちゃんと自分の口で言ってよ!」
「……悪いが、部活が始まる時間だ」
「あっ……もう! 馬鹿!! 嫌い!!」



「……ってわけなの」
「(痴話喧嘩かよ……)で、もう3日も口きいてないと。そういうことか?」
「……うん」

だって悪いのはあっちだもん。
相談すると腐れ縁の幼馴染は、はぁあとため息をついた。

「じゃあちょっと耳かせ」
「え? 何?」

言われるがまま耳を近付けると、不意に肩に腕を回されてそのまま身体が引き寄せられた。

「な、何すんの⁈」
「いいから、……ほらおいでなすった」
「おい、何をしている? その汚い手を離せ。……来い」
「えっちょっ……」

彼に首根っこをひっつかまれて連れて行かれる途中、幼馴染がいってらっしゃいとばかりにひらひらと手を振るのが見えた。



「……」
「……」

沈黙が重い。
彼に連れてこられた空き教室で向かい合ったまま、一向に話し出す気配のない彼に、怒っているのだろうかと視線を向けると、ばちり、目が合った。

「な、何……?」
「……一度しか言わないが」

そう言って小さくため息をついた彼。
少し小さな声で、でもまっすぐに私の目を見て言った。

「……お前のことは、何よりも、自分より大切にしたい」
「……え?」
「お前が愛おしいと言っている」
「っ……」

不意にあふれた涙に慌てて下を向くと、彼の匂いに包まれた。
一瞬のうちに、私は彼の腕の中。

「知っているだろうが、私は……恋愛事には疎い上に、気の利いた言葉の1つも言えない。だがそのためにお前が他所の男に触れられる事は我慢ならない」
「ごめんね……大好き……」
「……ああ」


『愛の言葉』


そんなの無くても、愛してくれてるって分かってたよ
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