烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

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魔導師の集い編

36 姉と妹

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 オークションが開催されるという場所は人気の少ない路地裏から入り、その奥にある小さなバーの地下にあるらしい。
  次々に仮面を付けた怪しい人達が路地裏へと入って行く姿が何度も見えたから間違いないだろう。

 「情報によればオークションに参加する為の条件は特に無いそうよ。注意することは仮面をしっかり付けて正体がバレないようにすることかしら」

 「また仮面……」

 「そうね、また仮面ね……」

 外した仮面をちゃんと持ってきていて正解だった。

 だけど、フェリーヌを助ける為には観客席には居られない。

 「ねぇ、エデン。本当にあの作戦を実行する気?」

 あの作戦
 それはさっき考えたフェリーヌ救助の為の作戦である。

 「うん。それが1番良い作戦だと思う」

 「……そう。無理はしちゃダメよ? エデンに何かあったら私……」

 「ミレイは心配性だなー。大丈夫、大丈夫! という事で、早速作戦を開始しよう!」

 ここに来るまでに市場で買い取った足枷と、手枷を取り出す。
 因みに奴隷商人の人から買い取ったものである。
 買い取る際には奴隷にならないかい? なんて誘われたけど、きっぱりとお断りしておいた。

 私はその手枷、足枷を身に付ける。

 フェリーヌ救出作戦の内容は、まずミレイが売り出し人となり私を奴隷として売る。人間がオークションに出される時に必ずと言っていいほど控え室(商品を置く部屋)に最初は置くらしい。そこでグランジュエの考えてくれた作戦通りにフェリーヌを救出する。

 私は試しに軽く手首を回したりしてみる。

 うん、ちょっと力を込めれば枷は壊れそう。
 もし、あちらで手枷や足枷を変えられたとしても私の力なら壊せるだろう。

 
 「じゃあ、エデン。行くよ?」

 「うん……お願い」

 私はギュッと拳を握りしめる。

 いよいよオークションに潜入だ。





 

 *****************







 薄暗い部屋に身動きも取れずに私はただただ泣いていた。
 聞こえるのは私の泣き声と、パタパタと騒がしい足音だけ。

 私はフェリーヌ・ディグラード。
 名高いディグラード公爵家の令嬢……だった。

 両親から熱い期待を寄せられ、ディグラード家の跡継ぎとして必死に頑張ってきてたのに……なのに何で?? どうして私はこんな事になってしまったの??


 私は自分の身に起こっている事にまだ頭がついていけていない。
 父に連れられて知らない不気味な場所へと行き、そこからパタリと記憶が無い。
 そして目が覚めたら視界は暗く、体の身動きが取れなくなっていた。重い手と、足。その事から何となくだけど自分の身に起こっている事は予想できた。でもその予想は当たって欲しくない。出来れば外れて欲しい。

 認めたくない。
 奴隷として売り飛ばされたなんて絶対に。


 ガチャ
 ギギギギギギぃー……


 扉が開くような音がして、私は身を縮めた。
 怖い……
 どんどん近づいてくる足音。
 体が震えているのが自分でも分かった。


 「しっかり歩けノロマ。ったく……しっかりしろよな」

 「……はい」

 「お前は売り飛ばされたんだ。奴隷として新しい御主人様に尽くすんだ。いいな?」

 突然聞こえてきた男女二人の声。
 私と同じように奴隷として売り飛ばされた人が居るんだと思うと少しだけホッとした。

 ガシャンと今度は檻が閉まるような音がした。
 コツコツと遠くなっていく足音。
 最終的には扉が閉まる音がし、私は小さく息を吐き捨て、力を抜いた。

 だけどドキドキと高鳴る心臓は中々落ち着いてはくれない。

 怖い。
 今はそれしか考えられなかった。


 「あの……もしかしてフェリーヌ・ディグラード?」

 「な、なんでその名前……」

 「えっと、私だよ? 貴方の姉のエデン」


 エデン

 私は耳を疑った。

 なんでお姉ちゃんが??
 だってお姉ちゃんは居なくなって……それで……それで……。


 「フェリーヌを助けに来たの! 今から助けるね」

 辞めて

 「ちょっと待っててね」

 ……辞めてよ

 耳を塞ぎたい。
 なのに手が動かない。
 お姉ちゃんの声なんてもう聞きたくない。

 「わ、私は助けてなんて言ってない! 何で来たの、? 私をわざわざ助けに? あんただって知ってるでしょ! 私があんたの悪口散々言ってるの! 馬鹿なの? 本当に有り得ない」

 違う

 違うの。
 本当はこんな事言いたくない。

 「あんたの事なんか大っ嫌い!」

 大っ嫌いなんて嘘。
 本当は大好きなの。
 父と母に従って私はお姉ちゃんを嫌いな振りを続けた。
 ディグラード公爵家の跡継ぎとして恥じないようにしてきたつもりだったのに……。

 どうしてこんな事になっちゃったんだろう??


 「フェリーヌ。フェリーヌ!!」

 「うるさい! 黙ってよ!」

 「…………分かった」

 そうポツリと呟かれたお姉ちゃんの言葉に私はグッと唇を噛み締める。

 これでいいんだ。
 今まで通り私はお姉ちゃんに嫌われていればいいんだ。

 私はお姉ちゃんを散々傷つけた。
 だから私は奴隷としてこれから生きよう。
 これが私の精一杯出来る償いだから。


 認めたくなかったけど、もう認めるしかない。
 私は奴隷として売られるんだ。
 もう一生お姉ちゃんとは会えない。
 だからこうしてまた会えた事、正直本当に嬉しかった。


 「……フェリーヌ!!」

 「え……?」


 次の瞬間突然名前を呼ばれたかと思えば、メキメキっと妙な音がした。
 そして今度はバキバキっとまた妙な音がした。

 一体何が起こってるの??

 戸惑う私。
 でも、もうお姉ちゃんの声は一切聞こえない。

 
 お姉ちゃん
 そう呼ぼうとした時だった。


 バキーン!!

 何かが壊されるような甲高い音が響いた。

 本当に何が起こってるの!?

 そう思った次の瞬間ふわりと甘い香りがし、視界が一気に明るくなった。

 私は何度も瞬きを繰り返す。
 ぼやける視界の中映るのは私にとって世界でたった1人の姉の姿。
 だけどその姿はまるで精霊みたいで、私は思わずお姉ちゃんを凝視した。

 「助けに来たよ、フェリーヌ」

 ニコリと微笑むお姉ちゃん。

 私の瞳から大量の涙が溢れ出した。

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