絶対に好きにならないと決めたのに。

流雲青人

文字の大きさ
27 / 45

27

しおりを挟む

 家に帰宅した時雨は文化祭の準備があるからと部屋にこもり作業に没頭することになった。
 理恵から渡されたデザイン図を見て、時雨は頭を抱えた。今更ながら作れるかどうか不安になってきたのだ。
 しかし、もう後悔しても遅い。まずは試しに練習をしてみようと思い祖母からミシンを借り、そして布を貰う。可愛らしい水色のギンガムチェックの布だ。何故祖母が布を持っていたのかは謎だが取り敢えず今は練習である。

 「よし……!」

 時雨は裾を捲り、息を呑む。
 こうして時雨の洋服作りの練習が始まった。



 〇◇〇◇〇◇〇◇  

 

 それから三時間後のことだった。
 時雨は「はぁぁぁ」と大きなため息を吐き、ベッドへと倒れ込む。
 気づけば部屋はオレンジ色の光に満たされており、夕方になっていた。

  理恵に貰った型紙と、作り方の説明書(これには注意すべき点がびっしりと書き込まれていた)などのおかげで何とか完成した。
 とは言っても布の都合でサイズは小学校中学年ぐらいの大きさなので最中にあげようかと思う。

 時雨は疲れ果てた様子で部屋から出てリビングへと向かう。
 リビングにはさくら、最中、あんこがだらりとくつろいでいた。

 「しぐおねぇーちゃん!」

 そんな中、時雨がリビングにやって来たことに一番早く気づいたあんこがさくらの膝の上から飛び降り、時雨の元へと駆け寄ってきた。そしてそのまま飛びついた。

 「こーら。危ないでしょ」

 「だってしぐおねぇーちゃん、ずっとお部屋に居るんだもん! ねぇねぇ、何してたの?」

 「実は洋服作りの練習してて。最中、着てみてくれない?」

 時雨の言葉に最中は顔を上げ、時雨が手に持つワンピースを見つめる。けれど次の瞬間、虚ろな目へと変わってしまった。

 「……絶対に嫌。そんな女の子みたいな服」

 「女の子じゃない」

 「あんこが大きくなったら着せればいいじゃん!」

 「文化祭の衣装作りの練習なの。着てみた感想聞かせて欲しいんだけど……駄目?」

 「やだ!」

 最中はそう言うとそっぽを向いてしまった。
 嫌がる最中に無理矢理着せるのは可愛そうだし諦めよう。
 時雨がしょぼーんと落ち込み、項垂れる。
 そんな時雨を見てか最中は気の毒になってきた。
 最中にとって時雨は大好きな姉であり、唯一甘えられる相手だ。
 次女のさくらとは喧嘩ばかりし、あんこには必死でお姉ちゃん面をしているつもりだ。けれども時雨の前になるとどうも力が抜けて甘えてしまう。

 そんな大好きな姉が今現在落ち込んでいる。しかも、自分のせいで。
 けれども最中の中でスカートというのは強敵なのだ。
 活発で男の子にも負けない強気な性格の最中は小学校で「男女」などと呼ばれている。そんな性格は祖父譲りだと家族は言う。

 最中は葛藤の末、結果折れた。


 「……き、着るから……落ち込まないでよ。しぐねぇ」

 「も、最中ぁぁぁ!」

 時雨が瞳を潤ませて、最中へと飛びつけば満更でもない様子で最中は笑った。

 ワンピースへと着替えた最中は少し大きめのワンピースに少し戸惑いながらも鏡に映る自分見て驚きを隠しきれていない様子でいた。頬を少し赤らめる最中。恐らくワンピース姿の自分が見慣れず恥ずかしいのだろう。

 そんな最中にあんこが言う。

 「もなかおねぇーちゃん凄く可愛いね! しぐおねぇーちゃん。あんこのも作って!」

 「え!? う、うん。頑張っては見るけどまだ先になるかも。我慢出来る?」

 「出来るよ! あんこ、良い子だから」

 そう言って天使のような笑みを浮かべるあんこに時雨はよしよしと頭を撫でた。
 そんな様子を羨ましそうに最中が見つめている事に時雨は気づき、最中の頭をよしよしと撫でて見せれば嬉しそうに最中が笑った。


 ───あぁ、可愛いな~


 疲れ切っていた時雨だったが可愛い妹二人のおかげで癒された。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

私を見下していた婚約者が破滅する未来が見えましたので、静かに離縁いたします

ほーみ
恋愛
 その日、私は十六歳の誕生日を迎えた。  そして目を覚ました瞬間――未来の記憶を手に入れていた。  冷たい床に倒れ込んでいる私の姿。  誰にも手を差し伸べられることなく、泥水をすするように生きる未来。  それだけなら、まだ耐えられたかもしれない。  だが、彼の言葉は、決定的だった。 「――君のような役立たずが、僕の婚約者だったことが恥ずかしい」

マジメにやってよ!王子様

猫枕
恋愛
伯爵令嬢ローズ・ターナー(12)はエリック第一王子(12)主宰のお茶会に参加する。 エリックのイタズラで危うく命を落としそうになったローズ。 生死をさまよったローズが意識を取り戻すと、エリックが責任を取る形で両家の間に婚約が成立していた。 その後のエリックとの日々は馬鹿らしくも楽しい毎日ではあったが、お年頃になったローズは周りのご令嬢達のようにステキな恋がしたい。 ふざけてばかりのエリックに不満をもつローズだったが。 「私は王子のサンドバッグ」 のエリックとローズの別世界バージョン。 登場人物の立ち位置は少しずつ違っています。

処理中です...