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しおりを挟む家に帰宅した時雨は文化祭の準備があるからと部屋にこもり作業に没頭することになった。
理恵から渡されたデザイン図を見て、時雨は頭を抱えた。今更ながら作れるかどうか不安になってきたのだ。
しかし、もう後悔しても遅い。まずは試しに練習をしてみようと思い祖母からミシンを借り、そして布を貰う。可愛らしい水色のギンガムチェックの布だ。何故祖母が布を持っていたのかは謎だが取り敢えず今は練習である。
「よし……!」
時雨は裾を捲り、息を呑む。
こうして時雨の洋服作りの練習が始まった。
〇◇〇◇〇◇〇◇
それから三時間後のことだった。
時雨は「はぁぁぁ」と大きなため息を吐き、ベッドへと倒れ込む。
気づけば部屋はオレンジ色の光に満たされており、夕方になっていた。
理恵に貰った型紙と、作り方の説明書(これには注意すべき点がびっしりと書き込まれていた)などのおかげで何とか完成した。
とは言っても布の都合でサイズは小学校中学年ぐらいの大きさなので最中にあげようかと思う。
時雨は疲れ果てた様子で部屋から出てリビングへと向かう。
リビングにはさくら、最中、あんこがだらりとくつろいでいた。
「しぐおねぇーちゃん!」
そんな中、時雨がリビングにやって来たことに一番早く気づいたあんこがさくらの膝の上から飛び降り、時雨の元へと駆け寄ってきた。そしてそのまま飛びついた。
「こーら。危ないでしょ」
「だってしぐおねぇーちゃん、ずっとお部屋に居るんだもん! ねぇねぇ、何してたの?」
「実は洋服作りの練習してて。最中、着てみてくれない?」
時雨の言葉に最中は顔を上げ、時雨が手に持つワンピースを見つめる。けれど次の瞬間、虚ろな目へと変わってしまった。
「……絶対に嫌。そんな女の子みたいな服」
「女の子じゃない」
「あんこが大きくなったら着せればいいじゃん!」
「文化祭の衣装作りの練習なの。着てみた感想聞かせて欲しいんだけど……駄目?」
「やだ!」
最中はそう言うとそっぽを向いてしまった。
嫌がる最中に無理矢理着せるのは可愛そうだし諦めよう。
時雨がしょぼーんと落ち込み、項垂れる。
そんな時雨を見てか最中は気の毒になってきた。
最中にとって時雨は大好きな姉であり、唯一甘えられる相手だ。
次女のさくらとは喧嘩ばかりし、あんこには必死でお姉ちゃん面をしているつもりだ。けれども時雨の前になるとどうも力が抜けて甘えてしまう。
そんな大好きな姉が今現在落ち込んでいる。しかも、自分のせいで。
けれども最中の中でスカートというのは強敵なのだ。
活発で男の子にも負けない強気な性格の最中は小学校で「男女」などと呼ばれている。そんな性格は祖父譲りだと家族は言う。
最中は葛藤の末、結果折れた。
「……き、着るから……落ち込まないでよ。しぐねぇ」
「も、最中ぁぁぁ!」
時雨が瞳を潤ませて、最中へと飛びつけば満更でもない様子で最中は笑った。
ワンピースへと着替えた最中は少し大きめのワンピースに少し戸惑いながらも鏡に映る自分見て驚きを隠しきれていない様子でいた。頬を少し赤らめる最中。恐らくワンピース姿の自分が見慣れず恥ずかしいのだろう。
そんな最中にあんこが言う。
「もなかおねぇーちゃん凄く可愛いね! しぐおねぇーちゃん。あんこのも作って!」
「え!? う、うん。頑張っては見るけどまだ先になるかも。我慢出来る?」
「出来るよ! あんこ、良い子だから」
そう言って天使のような笑みを浮かべるあんこに時雨はよしよしと頭を撫でた。
そんな様子を羨ましそうに最中が見つめている事に時雨は気づき、最中の頭をよしよしと撫でて見せれば嬉しそうに最中が笑った。
───あぁ、可愛いな~
疲れ切っていた時雨だったが可愛い妹二人のおかげで癒された。
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