絶対に好きにならないと決めたのに。

流雲青人

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クリスマス編 ②

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 そして遂にクリスマス当日となった。
 クリスマスも冬課外があり、午前中はそれに参加した。
 課外が終わったのはお昼すぎで、時雨は理恵に見送られながらいつもの公園へと向かった。
 その足取りはとても軽く、弾んでいる。

 公園へと着くなり、見慣れた後ろ姿を見つけ思わず時雨は声を上げた。

 「槙野先輩!」

 そう名前を呼べば、伊織は振り返り微笑んだ。

 「はーい。時雨ちゃんの大好きな槙野先輩だよー」

 と冗談交じりの言葉で迎えられ、時雨は少し恥ずかしくなった。

 「クリスマス、デートとか行けなくてごめんね」

 「全然大丈夫ですよ。受験は大切ですから」

 「ほんと、時雨ちゃんは優しいね。もう少し我儘とかも言っていいんだからね」

 伊織はそう言うと、優しく微笑んだ。
 その笑顔だけで時雨の心は一気に癒された。

 「あ、先輩。これ、クリスマスプレゼントです!」

 時雨は鞄の中からクリスマスのデザインがされた紙袋を取り出すなり伊織へと差し出す。伊織はそれを嬉しそうに受け取った。

 「じゃあ俺からも時雨ちゃんにプレゼント」

 伊織も時雨へと紙袋を差し出す。
 あまり見慣れない可愛らしいデザインの紙袋に困惑しつつ、時雨も受け取る。

 開けていいのか迷っていると「どうぞ」と伊織が言う。
 なので時雨は恐る恐る紙袋を開け、中身を取り出す。

 中に入っていたのは可愛らしいピン留めだった。

 「可愛い……あ、ありがとうございます!」

 「喜んでくれた?」

 「勿論です! と言うか、先輩に貰えるものなら何でも嬉しいに決まってるじゃないですか」

 無邪気に笑う時雨。
 幸せそうにピンを見つめる時雨を見て、伊織の方まで心が癒された。

 「先輩もどうぞ開けてください!」

 「そう? じゃあ開けまーす」

 伊織が時雨から受け取った紙袋を開ける。
 そして中身を見るなり、一瞬「え?」と戸惑いの言葉を呟いた。

 「もしかして、サンタの和菓子……?」

 「はい。試行錯誤を繰り返したやっと完成した物です!」

 ドヤ顔の時雨に思わず伊織が吹き出した。

 「まさかクリスマスプレゼントに和菓子を貰うとは思ってなかったよ。でも、時雨ちゃんらしいプレゼントで凄く嬉しい」

 「……実は、それはオマケです」

 時雨はそう静かに言うと、鞄の中から再び紙袋を取り出す。
 
 「こっちが……本当のプレゼントです」

 そう言って紙袋を差し出せば、伊織はそれを受け取った。

 「私がいいなと思った物を買ってみました……」

 「開けてみてもいい?」

 「は、はい」

 紙袋を開ければ中には白い箱が入っていた。
 そしてその箱を取り出し、開けみると中にはスノードームが入っていた。

 二匹の兎が背中を合わせ、木の下に座っているスノードーム。
 それはとても可愛らしい物だった。

 「時雨ちゃんってセンスいいね。凄く綺麗だよ」

 「ぜひ部屋に飾ってみて下さい」

 「うん。そうする。じゃあさ、時雨ちゃんは俺があげたピン留め着けて見て欲しい」

 そうお願いされてしまい、時雨は恥ずかしさを感じつつも伊織からのプレゼントであるピン留めを身に着けた。

 「女の子にプレゼントを渡すのって初めてだから凄く迷ったんだ。けど、ピン留めにしてて良かったよ。凄く似合ってる」

 穏やかで、そしてとても優しい笑顔を向けられ時雨の頬は赤く染まる。

 初めて出来た好きな人。
 そんな人と付き合えたことが今も夢のように感じる。

 けど……


 「時雨ちゃん」

 優しい声で名前を呼ばれ、思わず時雨は微笑む。
 その笑みは幸福に満ちていた。

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