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クリスマス編 ①
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投稿せずに残していたものです´ω`*
せっかく奨励賞を頂いたので、その記念として投稿します。
番外編という感じです!
*********
時雨と伊織は彼女と彼氏という関係へと変化した。
伊織の彼女になったことがまるで夢のようで、というかまだ実際夢なのではないかと思っている時雨に対し、理恵が呆れたような視線を向けていた。
「岸田。もうすぐ大切なイベントがある。もちろん、何かあげるんでしょ?」
「大切なイベント?」
「クリスマス! 恋人にとっては大切なイベントじゃないの?」
季節はとっくに冬へと変わっていた。
寒さが増し、マフラーと手袋が手放せない日々が続いている。
「クリスマスは店の方を手伝わないといけないし、それに槙野先輩は受験生だからさすがに遊びにはいけないよ。けど、先輩の家に行ってプレゼントを渡そうとは思ってる」
ほんのりと頬を赤くして言う時雨。
二人が付き合っていると知っているのは理恵や晴恵それなら祐希ぐらいだ。
お弁当のおかずを口に運びつつ、時雨は改めてクリスマスについて考える。
恋人と過ごすクリスマス。さぞ楽しいのかもしれないが、クリスマスは和菓子屋も和菓子屋なりに大変なのだ。洋菓子店には負けないとクリスマス風の和菓子を作る。基本、和菓子屋きしだはアルバイトは雇わないのでネコの手を借りたいぐらい忙しかったりするのだ。
「それで理恵ちゃん。男の人にあげるプレゼントって、何がいいと思う?」
「うーん。マフラーとか? 実用性あるし」
「なるほど。クリスマスまであと一週間。その間に冬休みにも入っちゃうし、よければ理恵ちゃんも一緒に買い物付き合ってくれないかな?」
「はいはい」
「ほんと!? ありがとう!」
無邪気な笑顔で言う時雨に理恵はある意味引っ張り回されてばかりだった。
二人は気づけばお昼も移動教室も何もかも一緒になっていた。
そして時たま出掛けたこともあった。
「理恵ちゃん。楽しみだね」
本来の目的を忘れてないか? と理恵は思いつつ、「全然」と答えた。
本当は楽しみにしているのは時雨には勿論秘密だ。
〇◇〇◇〇◇〇◇
冬休みに入り冬期講座が終わったあと、二人は直接デパートへとやって来た。
いろいろなお店を見て回ったが時雨にはどの商品もピンとこず結果的には何も買わずに買い物は終わってしまった。
デパートの屋上にある休憩スペースで時雨はベンチに腰を下ろす。
散々歩き回ったせいか足が痛い。
「で、どうするの? 先輩へのプレゼント」
「マフラーとか手袋とか無難でいいかなって思ってるけど……地味、かな?」
首を傾げ、不安そうな時雨。
初めて出来た好きな人。そして大切な恋人。
そんな伊織に喜んでもらいたくて必死にプレゼントを探した。
しかし、どんな物を上げたら喜んでくれるのか考えに考えた結果、何も買えずに終わってしまったのだ。
大きなため息を吐き、時雨は肩を落とす。
「正直、時雨があげるものなら何でも喜んでくれる気がするけどね」
「そうだといいんだけど……」
「取り敢えず、先輩の趣味に合うものとかは?」
「先輩の趣味……。あ、バレーかな?」
パッと思いつくのはそれくらいだった。
他には料理が趣味だとか、お菓子作りにハマっているだとか……次々に出てくる伊織の趣味。しかし上げていくうちに時雨はある問題に気がついた。
「理恵ちゃん。私、先輩よりも女子力が低いかもしれない……!」
伊織は炊事洗濯全てにおいて完璧にこなす。
これまでに何度も伊織から手作りのお菓子を貰ったことがあるがどれもお店に負けないくらい見た目も美しく美味しかった。
一方の時雨と言えば、実家が和菓子屋な事もあり和菓子以外は作らない。なので可愛らしい今どきのお菓子は全く作れなかったりする。
「私からしたら和菓子作れるのって凄いけどね」
理恵は苦笑を浮かべつつ言った。
そして何かいい案が思いついたのか笑みを浮かべる。
「じゃあさ、受験生である先輩のために時雨特性の和菓子を作ってプレゼントしたら? 疲れた脳には糖分は必須。どう?」
「凄くいいと思う! 理恵ちゃん、ありがとう」
満面の笑みを浮かべ感謝の言葉を述べる時雨に理恵がほんのり頬を赤くしそっぽを向く。「友達のためだからね……」と小さく呟かれた声は時雨の耳には届くことは無かった。
クリスマスまであと少し。
時雨は伊織へのクリスマスプレゼントとして時雨特性の和菓子を作る事にした。祖父母に作り方を習いながら一生懸命に作り上げた。さくらが「クリスマスプレゼントに和菓子!?」とドン引きしていたが、無視をしてやった。
和菓子を作る際、伊織の喜ぶ顔を想像したら思わず頬が緩むのが分かった。
せっかく奨励賞を頂いたので、その記念として投稿します。
番外編という感じです!
*********
時雨と伊織は彼女と彼氏という関係へと変化した。
伊織の彼女になったことがまるで夢のようで、というかまだ実際夢なのではないかと思っている時雨に対し、理恵が呆れたような視線を向けていた。
「岸田。もうすぐ大切なイベントがある。もちろん、何かあげるんでしょ?」
「大切なイベント?」
「クリスマス! 恋人にとっては大切なイベントじゃないの?」
季節はとっくに冬へと変わっていた。
寒さが増し、マフラーと手袋が手放せない日々が続いている。
「クリスマスは店の方を手伝わないといけないし、それに槙野先輩は受験生だからさすがに遊びにはいけないよ。けど、先輩の家に行ってプレゼントを渡そうとは思ってる」
ほんのりと頬を赤くして言う時雨。
二人が付き合っていると知っているのは理恵や晴恵それなら祐希ぐらいだ。
お弁当のおかずを口に運びつつ、時雨は改めてクリスマスについて考える。
恋人と過ごすクリスマス。さぞ楽しいのかもしれないが、クリスマスは和菓子屋も和菓子屋なりに大変なのだ。洋菓子店には負けないとクリスマス風の和菓子を作る。基本、和菓子屋きしだはアルバイトは雇わないのでネコの手を借りたいぐらい忙しかったりするのだ。
「それで理恵ちゃん。男の人にあげるプレゼントって、何がいいと思う?」
「うーん。マフラーとか? 実用性あるし」
「なるほど。クリスマスまであと一週間。その間に冬休みにも入っちゃうし、よければ理恵ちゃんも一緒に買い物付き合ってくれないかな?」
「はいはい」
「ほんと!? ありがとう!」
無邪気な笑顔で言う時雨に理恵はある意味引っ張り回されてばかりだった。
二人は気づけばお昼も移動教室も何もかも一緒になっていた。
そして時たま出掛けたこともあった。
「理恵ちゃん。楽しみだね」
本来の目的を忘れてないか? と理恵は思いつつ、「全然」と答えた。
本当は楽しみにしているのは時雨には勿論秘密だ。
〇◇〇◇〇◇〇◇
冬休みに入り冬期講座が終わったあと、二人は直接デパートへとやって来た。
いろいろなお店を見て回ったが時雨にはどの商品もピンとこず結果的には何も買わずに買い物は終わってしまった。
デパートの屋上にある休憩スペースで時雨はベンチに腰を下ろす。
散々歩き回ったせいか足が痛い。
「で、どうするの? 先輩へのプレゼント」
「マフラーとか手袋とか無難でいいかなって思ってるけど……地味、かな?」
首を傾げ、不安そうな時雨。
初めて出来た好きな人。そして大切な恋人。
そんな伊織に喜んでもらいたくて必死にプレゼントを探した。
しかし、どんな物を上げたら喜んでくれるのか考えに考えた結果、何も買えずに終わってしまったのだ。
大きなため息を吐き、時雨は肩を落とす。
「正直、時雨があげるものなら何でも喜んでくれる気がするけどね」
「そうだといいんだけど……」
「取り敢えず、先輩の趣味に合うものとかは?」
「先輩の趣味……。あ、バレーかな?」
パッと思いつくのはそれくらいだった。
他には料理が趣味だとか、お菓子作りにハマっているだとか……次々に出てくる伊織の趣味。しかし上げていくうちに時雨はある問題に気がついた。
「理恵ちゃん。私、先輩よりも女子力が低いかもしれない……!」
伊織は炊事洗濯全てにおいて完璧にこなす。
これまでに何度も伊織から手作りのお菓子を貰ったことがあるがどれもお店に負けないくらい見た目も美しく美味しかった。
一方の時雨と言えば、実家が和菓子屋な事もあり和菓子以外は作らない。なので可愛らしい今どきのお菓子は全く作れなかったりする。
「私からしたら和菓子作れるのって凄いけどね」
理恵は苦笑を浮かべつつ言った。
そして何かいい案が思いついたのか笑みを浮かべる。
「じゃあさ、受験生である先輩のために時雨特性の和菓子を作ってプレゼントしたら? 疲れた脳には糖分は必須。どう?」
「凄くいいと思う! 理恵ちゃん、ありがとう」
満面の笑みを浮かべ感謝の言葉を述べる時雨に理恵がほんのり頬を赤くしそっぽを向く。「友達のためだからね……」と小さく呟かれた声は時雨の耳には届くことは無かった。
クリスマスまであと少し。
時雨は伊織へのクリスマスプレゼントとして時雨特性の和菓子を作る事にした。祖父母に作り方を習いながら一生懸命に作り上げた。さくらが「クリスマスプレゼントに和菓子!?」とドン引きしていたが、無視をしてやった。
和菓子を作る際、伊織の喜ぶ顔を想像したら思わず頬が緩むのが分かった。
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