貴方の理想の女の子を演じるのは、もう疲れました

流雲青人

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 ディウスから婚約破棄を伝えられた翌日。
 正式に二人の間に交わされていた婚約は解消される運びとなった。

 家族からは、これからはグーミリアの好きに過ごしなさい、と言われた。これまで我慢してきたぶん、存分に楽しみなさい、と。

 ……そう考えると、今までディウスの理想の女の子を演じるために必要な努力を磨くことしかしていなかったことに気づいた。

「……私って、空っぽだな」

 マーガレットに好きな洋服を仕立てたらいい、と言われた時もそうだ。幼い時からディウスの趣味を押し付けられ、それを享受するだけだった為、好みというものが確立していない気がする。
 否、可愛いもの……はもう飽きたのでそれ以外を味わいたい。というのはある。

 ベッドに横になり天井を見つめる。
 これからどう過ごそうか。


 そう考えているうちに、仕立て屋が到着したことを侍女から伝えられた。



「えー? これからどう過ごすか?」

「うん。姉さん、なんかいい案ない?」


 グーミリアが幼い時からお世話になっている仕立て屋で、いつもは【可愛いもので】と頼んでいた。
 しかし、今回はそれではいけない。
 今日はグーミリアの好みの洋服を仕立てる必要があるのだ。しかし、考えに考えても何も浮かばず、結果としてマーガレットを頼ることになった。

 そしてマーガレットと言えば、大切で愛おしい妹のグーミリアの為に自分に出来ることをやろう、と思い全力を尽くそうと考えていた。
 だが、予想以上にグーミリアの返答が曖昧で困り果てていた。


「グーミリアはしたいこと無いの?」

「分からない。全てをディウスのために尽くしてきたから」

「そうね。貴方はとても頑張ってた」


 そう言ってマーガレットはグーミリアの頭を優しく撫でた。
 マーガレットはいつもグーミリアの努力を認めてくれた。それが嬉しくて、もっと努力しようと思えたのだ。


「気分転換に出掛けるのもいいんじゃないかしら?」

「確かに。休日は家にこもりがちだったかも」

「天気もいいもの。お出かけしてみたら?」

「姉さんは?」

「一緒に行きたいけど、これからアレンの所にいかないと」

 アレンとはマーガレットの婚約者である。
 二人はとても仲睦まじく、お互いを尊重し合える関係性だ。グーミリアとディウスとは真反対の関係性と言えるだろう。

 そう比較していることがマーガレットには分かったのだろう。どこか申し訳なさそうな表情を浮かべる彼女に、グーミリアはキッパリと告げる。


「そんな顔しないでよ、姉さん。別に私は気にしてないよ。戯言並べられた時は腹立たしかったけど」

「……本当に貴方は強い子ね」


 そう言ってまた頭を撫でられる。
 五つ歳が離れているとはいえ、子ども扱いしすぎでは? と思うが、マーガレット曰く。グーミリアは本心を隠して無理するまで頑張る性質だから心配なのだという。


 結局どんな洋服を仕立てるか考えきれず、お任せする運びとなったが。


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