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向こう側の君
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僕が恋した君は今ではテレビの向こう側の存在に成っていた。
「先輩っ、何見ているんですか?」
外回りを一緒にしていた会社の後輩が尋ねてきた。
「あれだよあれ」
僕の指先にはとあるビルに設置されていた大型のモニターがあり、そこには巷で話題の女優明石すみれが出演する映画のプロモーションビデオが放映されていた。
「あぁー先輩もファンだったんですか!良いですよね明石すみれ、演技も上手だし何よりあのスタイル一度でいいから生で見てみたいものです」
「そうだな」
「今日もお前のファンだって奴見つけたよすみれ。良かったな夢叶えられて」
帰宅して自分以外誰もいないマンションの一室で僕は一人ビールを飲みながらここにいないはずの人間に語りかけた。
何か面白い番組はやってないかとテレビをつけた。ろくでもない番組ばかり放映しており特に見たい番組も無かったからニュース番組を観始めた。するとニュース番組で丁度キャスターが芸能ニュースについて読み始めるところだった。
「では次のニュースです。週刊報道の記事より女優の明石すみれさんの熱愛が報じられました。お相手は今度公開される予定の恋愛映画で共演される神楽坂享さんとのことです」
キャスターの横に座っていたコメンテイターに話が振られた。
「いやぁーーーお似合いのカップルだと思いますよ」
「週刊報道の記事だと初共演が三年前のテレビドラマでそれからも数度共演しており現在に至ったそうです」
そこから先の言葉は耳に入ってこなかった。そしてこの話をただ聞いていることしか出来なかった自分が嫌で嫌でやるせない気持ちで一杯になったがあの時何もしなかった自分の自業自得なのだと諦めるしかなかった。
ケータイを取り出し大事に保存してあったメールを開いた。その文面にはこう書かれていた。
「ケイ君と過ごせたこの一年は私の中でとても大切な思い出です。ケイ君には伝えていたけど明日私は上京し夢を叶えられるよう頑張って行きます。何年かかるか分かりませんけど…待っていてくれますか?」
これがすみれから届いた最後のメールだった。
しかし俺はそのメールに返信が出来ずついには見送りにも行かずもう彼女とは八年近く会っていない。
「いつまででも待っているから」
その文字を僕は宛先のない新規メールに打ち込んだがすぐに文字を削除しケータイを閉じた。
「先輩っ、何見ているんですか?」
外回りを一緒にしていた会社の後輩が尋ねてきた。
「あれだよあれ」
僕の指先にはとあるビルに設置されていた大型のモニターがあり、そこには巷で話題の女優明石すみれが出演する映画のプロモーションビデオが放映されていた。
「あぁー先輩もファンだったんですか!良いですよね明石すみれ、演技も上手だし何よりあのスタイル一度でいいから生で見てみたいものです」
「そうだな」
「今日もお前のファンだって奴見つけたよすみれ。良かったな夢叶えられて」
帰宅して自分以外誰もいないマンションの一室で僕は一人ビールを飲みながらここにいないはずの人間に語りかけた。
何か面白い番組はやってないかとテレビをつけた。ろくでもない番組ばかり放映しており特に見たい番組も無かったからニュース番組を観始めた。するとニュース番組で丁度キャスターが芸能ニュースについて読み始めるところだった。
「では次のニュースです。週刊報道の記事より女優の明石すみれさんの熱愛が報じられました。お相手は今度公開される予定の恋愛映画で共演される神楽坂享さんとのことです」
キャスターの横に座っていたコメンテイターに話が振られた。
「いやぁーーーお似合いのカップルだと思いますよ」
「週刊報道の記事だと初共演が三年前のテレビドラマでそれからも数度共演しており現在に至ったそうです」
そこから先の言葉は耳に入ってこなかった。そしてこの話をただ聞いていることしか出来なかった自分が嫌で嫌でやるせない気持ちで一杯になったがあの時何もしなかった自分の自業自得なのだと諦めるしかなかった。
ケータイを取り出し大事に保存してあったメールを開いた。その文面にはこう書かれていた。
「ケイ君と過ごせたこの一年は私の中でとても大切な思い出です。ケイ君には伝えていたけど明日私は上京し夢を叶えられるよう頑張って行きます。何年かかるか分かりませんけど…待っていてくれますか?」
これがすみれから届いた最後のメールだった。
しかし俺はそのメールに返信が出来ずついには見送りにも行かずもう彼女とは八年近く会っていない。
「いつまででも待っているから」
その文字を僕は宛先のない新規メールに打ち込んだがすぐに文字を削除しケータイを閉じた。
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