19 / 44
19
しおりを挟む
夜の校舎はなんとなくひんやりしている。
スマホのライトで辺りを照らしながら教室に進む。1年の教室は2階にあり、三咲のクラスは更に奥のほうにある。なんとも奇妙なメンバーで学校の廊下を進む。委員長と結城先輩が前を歩き、俺と三咲が後ろをついていく構図だ。ちらっと三咲を見ると、辺りを怖々と見渡しながらも、結城先輩を意識しているのが丸わかりで、なんだか俺まで照れてしまいそうだ。せっかくだから話しかければいいのに、と思うが結城先輩は委員長と話しており、これでは三咲が話しかけることは出来ない。しょうがない、二人きりにしてやるか。友人の恋路を応援すべく、頭に浮かんだ作戦を実行する。作戦と言っても至極単純なものだが。
前を歩いている風紀委員長の服をちょいちょいと引っ張ると、すぐに振り向いてくれた。
「ん?どうした?」
『図書室に行きませんか?』
文字を打ち込んだ画面を向ける。それを読んだ先輩と目を合わせて、三咲と結城先輩の方を目線で示す。何が言いたいかわかってくれたようで、すぐに頷いてくれた。面白そうに口角が上がっている。
「夜の図書室ってのも面白そうだな。行くか。結城、俺たちは図書室に行ってくるから用事が済んだら入ってきた玄関集合で頼む」
「ああ。わかった」
「えっ、木南!?」
『じゃ、そういうことだから』
慌てる三咲に、にやっと笑ってみせると意図を理解したのだろう。真っ赤になった。結城先輩に話しかけられてあたふたしているのを尻目に二人と別れる。図書室は三咲の教室とは反対側で且つ3階にある。近くにあった階段を上がると、二人の声はすぐに聞こえなくなった。明かりも二人分減って、辺りは一気に暗闇に包まれる。
『すいません。こんなことに付き合ってもらっちゃって』
「いや、俺も楽しんでるし構わない。三咲は結城のことが好きなのか?」
『そうみたいです。焦れったいんで二人きりにしてみようと思って』
「ははっ、進展があればいいけどな」
『結城先輩の気持ちがわからないんでなんとも……』
「三咲は結城のタイプだと思うけどな。小動物系の可愛いやつ。確か料理も出来るんだろ?」
その言葉に隣を見上げると、委員長は本当だというふうに頷いて笑った。へぇ、結城先輩は三咲みたいな可愛くて料理が出来るタイプなのか。どんぴしゃじゃないか。後で三咲に教えてやろう。というか、
『委員長、三咲のことちゃんと可愛いって思ってたんですね』
「ふはっ、ちゃんとってなんだ。あいつはどう見ても小動物だろ。お前は反対に……美人な猫みたいだな」
ふいに委員長から褒められて心拍数が一気に上がる。必死に取り繕ってジト目で見上げると、柔らかく細められた委員長の視線に出会って余計に心拍数が上がった。いや、意味がわからない。なぜ上がる俺の心拍数が上がるんだ。またSub性が喜んでいるのか。だったら抑えないとまずい。
『猫って!先輩もネコ科の猛獣っぽいじゃないですか!クロヒョウみたいな』
「俺がクロヒョウ?ははっ、光栄だな」
どこまでも余裕な委員長にどうにかして焦らせてやりたいと思う。でもその会話の間になんとか心を落ち着かせることは出来たので、よしとする。それにちょうど図書室にも到着した。
ガラガラと扉を開けながら委員長が俺の方を向く。
「建前上何か借りて帰らないとだが、何か木南のおすすめはあるか?」
『あ、じゃあ持ってきます。委員長のおすすめもあれば読んでみたいです』
「ん。じゃあ俺も探してくる。また入り口集合で」
ライトの光が2つに別れる。委員長は迷いない足取りで棚の間に入っていった。俺も数列離れた通路に入る。静かな空間に、二人分の足音が響いている。俺が止まっても委員長の足音が聞こえる。言いようのないくすぐったさを感じて口元が緩んだ。
目当ての本を見つけて、入口の方へ戻る。手に取ったのは海外のファンタジー小説。ドイツのものだ。英語にしか翻訳されていないものだが、委員長なら読めるだろう。
扉の前には既に委員長が立っていた。待たせてしまったので、小走りに近づく。
「あったか?」
頷いて答えて、手に持っていた本を差し出す。豪華な装長に、美しい飾り文字。委員長の手に本が渡る。長い指がそっと表紙を撫でた。入れ替わりに委員長から本を受け取る。緑色の少し古びた表紙。
もと来た廊下を歩きながら本の内容について尋ねる。
『どんな本なんですか?』
「んー、ジャンルで言うとミステリーだな」
ふんふんと頷きながらページをパラパラ捲ってみていたが、細かい文章が目に入らないようにすぐにパタンと閉じる。ミステリーはネタバレ厳禁だ。
「これは?どんな本なんだ?」
『ファンタジー小説です。普段あんまり読まないんですけど、普通に面白い上に設定がとても珍しくて』
「設定?」
『はい。ダイナミクスがない世界っていう設定で』
「…へぇ」
委員長の指がまたすぅっと表紙を撫でた。
俺はこの小説を読んで、とても羨ましいと思った。何にも囚われない世界。委員長はどう思うのだろうか。それが気になってこの本を選んだ。ちらっと見上げると委員長は手に持った本を眺めていた。何を考えているのかわからない静かな表情になぜかざわつきを感じた。
スマホのライトで辺りを照らしながら教室に進む。1年の教室は2階にあり、三咲のクラスは更に奥のほうにある。なんとも奇妙なメンバーで学校の廊下を進む。委員長と結城先輩が前を歩き、俺と三咲が後ろをついていく構図だ。ちらっと三咲を見ると、辺りを怖々と見渡しながらも、結城先輩を意識しているのが丸わかりで、なんだか俺まで照れてしまいそうだ。せっかくだから話しかければいいのに、と思うが結城先輩は委員長と話しており、これでは三咲が話しかけることは出来ない。しょうがない、二人きりにしてやるか。友人の恋路を応援すべく、頭に浮かんだ作戦を実行する。作戦と言っても至極単純なものだが。
前を歩いている風紀委員長の服をちょいちょいと引っ張ると、すぐに振り向いてくれた。
「ん?どうした?」
『図書室に行きませんか?』
文字を打ち込んだ画面を向ける。それを読んだ先輩と目を合わせて、三咲と結城先輩の方を目線で示す。何が言いたいかわかってくれたようで、すぐに頷いてくれた。面白そうに口角が上がっている。
「夜の図書室ってのも面白そうだな。行くか。結城、俺たちは図書室に行ってくるから用事が済んだら入ってきた玄関集合で頼む」
「ああ。わかった」
「えっ、木南!?」
『じゃ、そういうことだから』
慌てる三咲に、にやっと笑ってみせると意図を理解したのだろう。真っ赤になった。結城先輩に話しかけられてあたふたしているのを尻目に二人と別れる。図書室は三咲の教室とは反対側で且つ3階にある。近くにあった階段を上がると、二人の声はすぐに聞こえなくなった。明かりも二人分減って、辺りは一気に暗闇に包まれる。
『すいません。こんなことに付き合ってもらっちゃって』
「いや、俺も楽しんでるし構わない。三咲は結城のことが好きなのか?」
『そうみたいです。焦れったいんで二人きりにしてみようと思って』
「ははっ、進展があればいいけどな」
『結城先輩の気持ちがわからないんでなんとも……』
「三咲は結城のタイプだと思うけどな。小動物系の可愛いやつ。確か料理も出来るんだろ?」
その言葉に隣を見上げると、委員長は本当だというふうに頷いて笑った。へぇ、結城先輩は三咲みたいな可愛くて料理が出来るタイプなのか。どんぴしゃじゃないか。後で三咲に教えてやろう。というか、
『委員長、三咲のことちゃんと可愛いって思ってたんですね』
「ふはっ、ちゃんとってなんだ。あいつはどう見ても小動物だろ。お前は反対に……美人な猫みたいだな」
ふいに委員長から褒められて心拍数が一気に上がる。必死に取り繕ってジト目で見上げると、柔らかく細められた委員長の視線に出会って余計に心拍数が上がった。いや、意味がわからない。なぜ上がる俺の心拍数が上がるんだ。またSub性が喜んでいるのか。だったら抑えないとまずい。
『猫って!先輩もネコ科の猛獣っぽいじゃないですか!クロヒョウみたいな』
「俺がクロヒョウ?ははっ、光栄だな」
どこまでも余裕な委員長にどうにかして焦らせてやりたいと思う。でもその会話の間になんとか心を落ち着かせることは出来たので、よしとする。それにちょうど図書室にも到着した。
ガラガラと扉を開けながら委員長が俺の方を向く。
「建前上何か借りて帰らないとだが、何か木南のおすすめはあるか?」
『あ、じゃあ持ってきます。委員長のおすすめもあれば読んでみたいです』
「ん。じゃあ俺も探してくる。また入り口集合で」
ライトの光が2つに別れる。委員長は迷いない足取りで棚の間に入っていった。俺も数列離れた通路に入る。静かな空間に、二人分の足音が響いている。俺が止まっても委員長の足音が聞こえる。言いようのないくすぐったさを感じて口元が緩んだ。
目当ての本を見つけて、入口の方へ戻る。手に取ったのは海外のファンタジー小説。ドイツのものだ。英語にしか翻訳されていないものだが、委員長なら読めるだろう。
扉の前には既に委員長が立っていた。待たせてしまったので、小走りに近づく。
「あったか?」
頷いて答えて、手に持っていた本を差し出す。豪華な装長に、美しい飾り文字。委員長の手に本が渡る。長い指がそっと表紙を撫でた。入れ替わりに委員長から本を受け取る。緑色の少し古びた表紙。
もと来た廊下を歩きながら本の内容について尋ねる。
『どんな本なんですか?』
「んー、ジャンルで言うとミステリーだな」
ふんふんと頷きながらページをパラパラ捲ってみていたが、細かい文章が目に入らないようにすぐにパタンと閉じる。ミステリーはネタバレ厳禁だ。
「これは?どんな本なんだ?」
『ファンタジー小説です。普段あんまり読まないんですけど、普通に面白い上に設定がとても珍しくて』
「設定?」
『はい。ダイナミクスがない世界っていう設定で』
「…へぇ」
委員長の指がまたすぅっと表紙を撫でた。
俺はこの小説を読んで、とても羨ましいと思った。何にも囚われない世界。委員長はどう思うのだろうか。それが気になってこの本を選んだ。ちらっと見上げると委員長は手に持った本を眺めていた。何を考えているのかわからない静かな表情になぜかざわつきを感じた。
23
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
待てって言われたから…
ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【完結】君の声しか聴こえない
二久アカミ
BL
伊山理央(24)はネット配信などを主にしている音楽配信コンポーザー。
引きこもりがちな理央だが、ある日、頼まれたライブにギタリストとして出演した後、トラブルに巻き込まれ、気づけばラブホテルで男と二人で眠っていた。
一緒にいた男は人気バンドAVのボーカル安達朋也。二人はとあることからその後も交流を持ち、お互いの音楽性と人間性、そしてDom/subという第二の性で惹かれ合い、次第に距離を詰めていく……。
引きこもりコンプレックス持ちで人に接するのが苦手な天才が、自分とは全く別の光のような存在とともに自分を認めていくBLです。
※2022年6月 Kindleに移行しました。
愛されSubは尽くしたい
リミル
BL
【Dom/Subユニバース】
玩具メーカーの取締役開発部長Dom(37)×元子役の大学生Sub(20)
かつて天才子役として名を馳せていた天使 汐は、収録中にSub drop(サブドロップ)に陥り、生死の境をさまよう。
不安定になっていた汐を救ったのは、スーツ姿の男だった。
素性や名前も知らない。でも、優しく撫でて「いい子」だと言ってくれた記憶は残っている。
父親の紹介で、自身の欲求を満たしてくれるDomを頼るものの、誰も彼も汐をひたすらに甘やかしてくる。こんなにも尽くしたい気持ちがあるのに。
ある夜、通っているサロンで不正にCommand(コマンド)を使われ、心身ともにダメージを負った汐を助けたのは、年上の男だ。
それは偶然にも15年前、瀕死の汐を救った相手──深見 誠吾だった。
運命的な出会いに、「恋人にもパートナーにもなって欲しい」と求めるも、深見にきっぱりと断られてしまい──!?
一筋縄ではいかない17才差の、再会から始まるラブ!
Illust » 41x様
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる