紫音の少女

柊 潤一

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別れ、そして新しい出発

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 それは、突然の出来事だった。

 ある朝、紫音はゼルダに向かって言った。

「あなた・・・お父様を呼んでかまわない?」

「いったいどうしたんだ。突然に。」

「お父様だけじゃなくて、シュリ婆もエリカさんも、全部の人を呼びたいの」

「お前・・・まさか・・・」

「ええ、そろそろ・・・。私の役目も終わったみたい」

 ゼルダはソファーに崩れ落ちるように座った。

 そして、手で顔を覆った。

 沈黙の時が流れた。

 再び顔を上げたゼルダには、悲痛な覚悟が浮かんでい
 た。

「そうか・・・・わかった」

「いつかは来るとわかっていた事だ」

 それからゼルダは、部下に紫音と交流のあった人々を呼びに行かせ、集まるまでのあいだ紫音と寄り添い、今までのことを語り合った。

 紫音は涙を流し、ゼルダは優しく慰めていた。

 やがて呼ばれた人が集まってきた。

 みな紫音を引きとめたが、無駄だとわかると、泣きながら別れを惜しんでいた。

「紫音や」

 声をかけたのはシュリ婆だった。

「わしゃ、楽しかったぞえ。紫音に会ったあの日からがわしの本当の人生だった気がする」

「お婆さん」

「ゼルダの話し相手になってあげてね」

 紫音はベッドに横になった。

「あなた・・・指輪を貸して」

 紫音はゼルダから指輪を受け取ると、彼女の力と共に願いも込めた。

 それは、再び会えるようにという強い願いだった。

「これで又いつか。きっとあなたと会えます」

「紫音・・・」

「ゼルダ・・・ありがとう。私は幸せでした。ありがとう」

 紫音は目を閉じ、やがて溶けるように消えていった。

 ゼルダとハシバ以外は、みなその場に泣き崩れていた

 ハシバとゼルダはソファーに座った。

「ゼルダ・・・」

 ハシバが声をかけた。

「父上、何も言いますまい。初めから分かっていた事です。今まで一緒に暮らせただけでも、幸せだったと思わねば」

「そうか。そうだな。」

 それから親子は無言でいた。

 みな、紫音との思い出を胸に紫音を思い出していた。

 そして、何故か去り難い雰囲気の中で時間が流れた。

 突然誰かが声を上げた。

「あ、あれ・・・あれ・・・ベットに」

 みんな慌ててベッドに駆け寄った。

 ベッドの上に人影が現れ、それは段々と濃くなっていった。

 紫音だった。

 紫音は元の姿で現れた。

 閉じていた目を開け、周りを見回しゼルダを見つけると、その目が潤んでいった。

「あなた・・・」

「紫音・・・紫音、帰ってきたのか?」

 みんな紫音を見守っていた

「あなた、私・・・」

 ゼルダは紫音の手を握っていた。

 そして初めて泣いた。

 紫音も泣いていた。

「お帰り、紫音・・・お帰り・・・」

「あなた・・・あなた・・・」

 居合わせたみんなも泣いていた。

 紫音の体内には新しい命が宿っていた。


 ー完ー   
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