妄想のメシア

柊 潤一

文字の大きさ
31 / 39
魔王と対決

いざ!魔王へ

しおりを挟む
 次の日の朝、センタたちはいつもと同じようにエルフの村に入った。

 待っていた村長は三人がやってくるとすぐ、箱にもうひとつの物をはめ込んだ。

 空に龍が現れゲートが開き、センタたちが入るとそこは次の村の入口の前だった。

 そして近くには魔物がうようよいた。

 それも今までの雑魚とは比べ物にならないほど大きく、今まで倒してきたボス程の奴だった。

 しかしセンタたちは既に強くなりすぎていた。

 あつしは見えている魔物達の空の方に向かって矢を放った。

 放たれた矢は空中で何本にも増えていき地上に落ちる頃には無数の矢となって魔物達を射抜いた。

 巨大化したセンタは刀を目に見えぬ早さで横に払い、切り裂かれた空気は波動となって魔物を襲い、波動が届く範囲の魔物は真っ二つに切り裂かれていった。

 村から見える範囲の魔物は一瞬のうちに倒された。

 雑魚たちより何倍も巨大で強いフィールドボスやボスもセンタたちの前ではあっけなかった。

 そしてその日は午前中のうちに四つの村の魔物とボスを退治し、最初から数えて七つめの村にやってきた。

 センタたちは村の入口から中に入った。

 そこには村長がただ一人で立っていた。

 村人もいないし家もまばらで殺風景な村だった。

 センタたちが不審な顔をしていると村長が口を開いた。

「救世主さま、ようここまでおいで下されました。ずっとお持ちしておりました。それからこの村にはもう魔物はおりませぬ」

「この世界の皆に代わり、また魔王に代わりお礼を申し上げます」

『ん?魔王に代わり?どういうことだ?』

「今私が申し上げたことをご不審に思われるでしょうが、それは次の場所へ行けばわかって頂けます」

 村長はそう言って三人を一軒の家の前に連れていった。

「この家の中へ入っていただければ魔王のいる場所への道があります。どうされますかな?すぐに行かれますか?」

 魔王との対決に劇的な場面を想像していた三人は、拍子抜けしながら顔を見合わせた。

「どうする?」

 みんなすぐにでも魔王と対決したい気持ちはあったが、既に昼になっていたので戻らなければならなかった。

「明日にします。朝の十時に来ますので」

 あつしが皆を代表して言った。

「わかりました。それでは明日の朝十時にお待ちしております」

 村長はそう言ったあと、フッとかき消すように消えた。

 あとに残された三人はキツネにつままれたような気持ちでその場所に立っていた。

「ともかく、適当な家に入って休まへん?」

 センタがそう言って近くの家の扉を開けて中を覗いた。

「入っても大丈夫みたいやで。誰もおらへん」

 そして中に入ったセンタに続いてあとの二人も入っていった。

「なぁ、これどういうことなんやろな」

 センタが言うと今までずっと黙っていたあつしが口を開いた。

「最初に僕が《これはただのお遊びか、なにか目的があるのか》と言ったことを覚えてるかい?」

 センタと凪沙はうんうんと頷いた。

「ずっと考えていたんだがこれは僕達を魔王の元へ連れてくるのが目的だと思うんだ。そして問題は魔王がぼくたちをどうしたいかなんだが……どうだい?今まで戦ってきて悪意は感じたかい?」

「ん?どゆこと?」

「ああいう魔物との戦いはもっとおぞましいものなんじゃないか?」

「そう言うたら最初はエグい攻撃もあったけどドロドロしたもんやなかったわな」

「そうだよ。途中からは強くなった僕達より強い魔物は出なくなった。ということは僕達を害する目的で作られたものではないと思うんだ」

「ふむふむ」

「そうだとしたら魔王と会うことは危険なものじゃないことになる」

「なるほど」

「ともかくここまで来たからには魔王と会わないと意味が無い。まぁ、現実の世界でそれなりに成長できたから意味がなくもないがね。そうだろ?センタ」

「うん。それはまぁそやな。剣道で親父より強くなったからな」

「ほぉ……親父さんはそんなに強かったのかい?」

「そらもぅ、ゲキ強やわ。なんせ大会で日本一になっとるからな」

「ふーん。その親父さんより強いって大したもんじゃないか。凪沙さんはどう?」

「うん。あたしも自分のことが色々分かったわよ」

「とにかく明日次の場所に行ってみよう。それじゃ俺は帰るよ」

 あつしはそう言って帰っていった。

 そのあとセンタと凪沙は二人だけの時間を過ごしていた。

「ねぇ、とうとうここまで来ちゃったね」

「うん。なんかあっけなかった気がするけどな」

「それはさぁ、センタくんとあつし君が強くなり過ぎたからじゃない」

「それはそうやねんけど。でも凪沙さんかって結構ヤバい魔法使ってたやんか」

「うふふ……」

「あ、笑って誤魔化しとる。それはそうと魔王を倒したらって約束もやねんけど、魔王関係なしに俺と付き合ってくれへん?」

「いいけどさ、私みたいに年上でもいいの?」

「うん!全然オッケーやで。って言うかさ、凪沙さん年上の気がせぇへんねんけど。可愛いしさ」

「あー、いちおうこれでも年上だよ?」

「ほんまは俺とタメなんちゃうん?証明書見してみ?」

「持ってない」

「ほら。年上って嘘やろ?正直に言うてみ?」

「そんなことなぁい!もう!」

 センタは凪沙がそう言って自分の胸を叩いてくるのを、そのまま受け止め抱きしめた。

 そして胸の中でモゴモゴ言っている凪沙の耳元で言った。

「好きやで。凪沙さん」

 その途端に凪沙の動きが止まり、顔を上げてセンタを見つめた。

「なぎさって呼んでいいよ」

「じゃ、好きやで。なぎさ」

「あたしも……」

 二人は長いキスをした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...