恋し、挑みし、闘へ乙女

米原湖子

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第十三章 そして……

1.

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 陽だまりの中で乙女はうーんと伸びをした。

「それにしても、疑問がまだいろいろ残っているのですが」

 あの日から一週間が経つ。綾鷹たち国家親衛隊は黒棘先たちの悪事をまとめ上げ、世に知らしめた。それと共に、月華の君は「十八歳での見合い云々の改正案を現在検討中だ」と発表した。随分前から『子どもを増やすため』と思える見合い制度を改めようといろいろ画策していたらしい。

「疑問とは?」

 ようやく休みの取れた綾鷹は、乙女の隣でフワァと欠伸をする。

「なぜ私の居場所が分かったのですか?」

 フムと綾鷹が悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「やはりマダム・メープルの作品は逸品だね」
「マダム・メープル?」

 この流れでなぜその名が出るのだろうと乙女は隣に座る綾鷹をジッと見つめる。

「彼女が洋服以外にアクセサリーなどの装飾品を作るのは知っているよね?」

 コクンと乙女が頷くと綾鷹は話を続ける。

「彼女が作る品々を我々は利用させてもらっている」

 綾鷹の目が乙女の胸元に向けられた。視線の先には、先日贈られたペンダントが日の光を浴びて美しく輝いている。

「まさか!」
「そのまさかだよ。これには追跡機能と音声録音装置が仕込んである」
「嘘っ!」

 乙女はペンダントをマジマジと見つめる。

「マダム・メープルに協力してもらい、これを作ってもらった」
「何ですって!」

 乙女の顔が見る間に赤鬼のように真っ赤になる。

「ということは、純粋なプレゼントじゃなかったということですか?」
「プレゼントに純粋も不純もないよ。君を守るために不可欠なアイテムだった」

 屁理屈もいいところだ! 乙女は更なる怒りを覚え、「それでも……」と込み上げる涙を飲み訴える。

「女性は殿方からアクセサリーを貰ったら純粋に嬉しくて……なのに……綾鷹様って最低! そんな仕掛けがあったなんて……」

 堪えきれなくなった涙が乙女の瞳からポロポロ零れる。

「何だか裏切られた気分です!」
「えっ! あっ、ごめん」

 綾鷹がオロオロと乙女に言い訳をする。

「君を傷付けるつもりはなかった。ちょっと待ってくれ。私は君の涙に弱いんだ。お願いだから泣き止んで。お詫びにこれをあげるから」

 グスグスと泣き続ける乙女の左手を取り、綾鷹はその薬指にダイヤが煌めくプラチナの指環を嵌める。

「これにもまた何か仕掛けがあるんでしょう!」

 すっかり疑心暗鬼の乙女に綾鷹は苦笑いを浮かべ、「違うよ」と優しく微笑み、涙に濡れた頬にソッとキスをする。

「乙女、結婚しよう。これは婚約指環だ」

 目を見開いた乙女の瞳からまた新たな涙が溢れ出すが、今度は怒りや悔しさの涙ではない。

「あっ、でも、ほらやっぱり」

 胸を抑えながら乙女は濡れた瞳で小さく綾鷹を睨む。

「貴方は嘘つきだわ。こんなに私をドキドキさせるなんて……」
「ふーん、ドキドキするんだ」
「絶対に何か装置が取り付けてあるんだわ」

 ニヤリと笑った綾鷹が両手を前に突き出し広げた。

「乙女、おいで。その装置は僕じゃなきゃ静まらない」
「本当に策士な人ですね」

 そう言いながらも乙女は満面の笑みを浮かべ綾鷹の胸に飛び込んだ。そして、「私を幸せにする装置を付けたの?」と言いながら彼の頬にチュッとキスをする。



 THE END
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