26 / 96
第一部 第二章 炎雷
第26話 繧「繝「繝ウとの対峙
しおりを挟む
「うーん、思っている以上にモンスターが少ないね」
「やっぱし最近何か変なことが起きてるんじゃないかって、噂されているもんな」
進んだりモンスターを倒したりすること一時間。小休止を挟みながら、次はどうするかという話し合いをすることにした。
今日は美琴一人で潜るよりは遭遇するが、トライアドちゃんねるの三人からすれば遭遇率が少ないようだ。
「モンスターの数が異常に減っているのもそうだけど、深域からしか出現しないはずの妖鎧武者やミノタウロス、キマイラとかが一か月くらい前から上域から中域にかけて出るようになっているし、それが原因なのかは分からないけど探索者が結構行方不明になっているからね」
その話を聞いて、やはりあの少女が頭をよぎる。
下層最深域のボス部屋でイノケンティウスという規格外な炎と熱を操る謎の怪物を、愛おし気な眼差しで見ていた謎の存在。
一鳴の状態の美琴が一瞬でトップスピードに到達した移動に、それ以上の速度で追い付いてきた、イノケンティウス以上の化け物。
もしかしなくても、彼女がここ一月の間にダンジョンの中で頻発している怪物災害や行方不明者が続出している理由なのではないだろうか。
「二週間前も、女性の一等探索者の霜月さんが行方不明になって、総出で捜索しても何も見つけられないって言ってたしな」
”え、マジ?”
”霜月ちゃんも行方不明なの!?”
”めっさ美人であの人の出る雑誌全部買うくらいには好きだったのに”
”めちゃつよ魔術師だよねあの人。そんな人が行方不明なんて信じられない”
”でも確かにこの二週間、あの人の話を聞かないな。美琴ちゃんの件を抜きにしても”
”ツウィーターが二週間前から止まってるからどうしたんだろうとは思ってたけど、行方不明になってたのか”
「あの霜月さんでさえ、逃げることができないイレギュラー、か」
『いずれ最上位である特等探索者になるのではと期待されていた霜月みなみ様ですね。ギルドの依頼板に、捜索依頼が張り出されておりました』
「ぶっちゃけあの人この町の探索者の中じゃ、美琴ちゃんを除けばぶっちぎりで強かっただろ。魔法使いなんじゃないかって噂が立つくらい、魔術に優れてたし」
流石の美琴も、その霜月みなみの名前は知っている。
探索者であって配信者ではないが、多くの人が彼女の名前を知っている。
美琴と同じようにソロでの活動をメインとしていた敏腕魔術師で、そのあまりの魔術の威力と規模、精細さに魔法使いだと勘違いされることがあった。
魔法使いは魔術を極めた末に到達する魔術の最終地点なので、魔法使いでないにしろそのうち魔法使いになるか、なれなくてもアイリの言う通り特等探索者になるのではと大きな期待を寄せられていた。
そんな霜月みなみが、二週間前から行方不明になっている。ギルドの最高戦力の一人でもある彼女の損失はかなり大きいようで、ギルドの捜索部隊が総出で彼女のことを探している。
一体何が起きているのだろうかと不安に感じていると、ふと足元からほんの微かに振動を感じる。
最初は気のせいかと思ったが、それは確実に大きくなってきている。
「先輩」
「えぇ、何か来るわね。二人とも、戦闘準備」
「言われなくても」
「休憩は十分だぜ」
真っ先に美琴が反応して雷薙を構え、続いて彩音、慎司、和弘も構える。
一体何が来るのかと鋭い視線を向けるが、すぐにこれはこの場にい続けたら危険だと直感が叫んだ。
「先輩、一旦広いところまで引きましょう!」
「え、ど、どうしたの?」
「怪物災害───スタンピードです!」
その単語を叫ぶと同時に、深域の方角から明らかに一つではないモンスターの声が重なって聞こえてくる。
直後に先に走り出した美琴を追うように、三人も全速力で走りだす。
”スタンピード!?”
”またかよ!?”
”これで今月二回目だぞ!?”
”美琴ちゃんよく気付いたね”
”なんかやばそうな雰囲気。ギルドに応援要請出しといたほうがいいんじゃ”
”美琴ちゃんがいるから平気じゃね”
”ソロ殲滅実績持ちは心強い”
複数のモンスターの声が聞こえてきて確定したことで、コメント欄が騒然とし始める。
二週間前にトライアドちゃんねるが危機にさらされ、そして美琴が助けることで美琴が大勢に知られるきっかけとなったダンジョン一有名で多くの死者と負傷者を出す怪物災害、スタンピード。
こんな短期間で二度も遭遇するとは思っていなかったのか、トライアドちゃんねるの三人はうんざりしたような表情をしている。
「まっじかよ!?」
「おれらはどうしてこう、ツイてないんだ!」
「言ってないで早く撤退するよ! 広いところに行けばいいのね!?」
「はい! ここだと狭すぎて、三人を巻き込んでしまいますから!」
すぐに殲滅開始できるように二鳴を開放して、雷を二つの一つ巴紋に蓄積させていく。
「過去にあれを単独殲滅した実績がある美琴ちゃんがいると、頼もしい限りね! でも今回はあなたにだけに任せっきりにはしないから!」
「二度も年下の女の子に助けられるのは、いくら強いとはいえ示しがつかないからな!」
「分かりました、無理はなさらず!」
蓄積を優先しているため、溜まっていく速度は速い。これなら広い場所に出るころには、二鳴の最大火力を開幕に叩きこんで数を大幅に減らせるだろう。
とにかく全力で走り、道中でモンスターが顔を覗かせても稲魂で声を上げる前に瞬殺する。数を増やさないことで、二鳴の最大火力を叩きこんだ時あとの戦いで三人の負担も減らせる。
全力で走ることおよそ五分。かなり開けた場所に出たので奥の方に移動し、そこで待ち構える。
モンスターの軍団の大量の足音が徐々に近付いてくる。
彩音はやや体が強張って力が無駄に入っているようで、構えている刀の鋒が少しぶれている。
和弘もダガーが少し震えているし、慎司も握った拳が震えている。
スタンピードはダンジョンで最も怪我人と死者を出している怪物災害。
興奮状態になったモンスターが突然移動し、それに釣られて他のモンスターも興奮状態になって一斉に走り出す、あるいは自分よりも強大で恐ろしい存在から逃げる時に起こる。
本来はこんな短期間で何度も発生するものではないのだが、ここ一月の間に何か異変が起きているのか、これを含めた怪物災害が頻発している。
それも今美琴達がいるダンジョンだけでなく、日本に留まらず世界各地のダンジョンでも頻発しているそうだ。
一体何が起きているのだと一瞬思考すると、美琴達が来た道からモンスターが姿を現す。
「諸願七雷・二紋───」
姿を見せると同時に最大火力で数を大幅に減らそうと構えるが、ゾッと背筋が震えて二鳴から四鳴に切り替えて全ての雷を一気に蓄積させる。
「───陰打ち・抜刀ッッッ! 御雷一閃ッッッ!」
雷薙をしまい、瞬時に蓄積させた雷を開放しつつ陰打ちを抜き、上段に構えた刀をまっすぐに振り下ろす。
それとほぼ同時に、ダンジョンの壁を一瞬で溶岩に変えながら真紅の炎が高波や津波のようにスタンピードを飲み込みながら現れる。
猛烈な速度で迫ってきたが、美琴の御雷一閃で炎の濁流は消滅して四人には届かなかった。
『お嬢様』
「えぇ、あの時の女の子がいるわね」
バチバチと雷をまとわせている刀を正眼に構えて強く警戒していると、ゆっくりとした拍手がこつこつという足音と共に聞こえてくる。
「流石流石。繝舌い繝ォ繧シ繝悶Νならこの程度の挨拶を返せないとね。炎越しに私ごと狙ってくるのは、ちょーっぴり予想外だったけど」
拍手しながら姿を見せたのは、赤色の軍服のような恰好をした真紅の髪の少女だった。
初めて下層最深域であった時よりも髪の色はより鮮明に赤くなっていて、燃えているようにも見える。
「それにしても参ったよ。ここはダンジョンだから当たり前だけど、雑魚が多すぎる。見ててとても不愉快極まりないよ。そうは思わない、繝舌い繝ォ繧シ繝悶Ν?」
「……あなたがどう思っていようと関係ないわ。ただ分かるのは、あなたが人殺しであることよ」
「人殺し? 嫌だなあ。私はただその辺をうろちょろしているごみと害獣を処分しているだけだよ」
あの少女が来ている服、見覚えがある。
赤い軍服のような服は、霜月みなみが普段から好んで着ているものだ。
それを今、真紅の少女が来ているということはつまり、彼女はすでにこの少女に殺されているということだ。
「人の命を、なんだとっ……!」
人間のことをごみや害虫と言ったことに憤り、柄を強く握る。
「所詮人間なんて、私達鬲皮・に支配され淘汰される弱者に過ぎない。百年ぽっちしか生きられないし、あっという間に、簡単に死んじゃう。なのに無駄に数を増やし続ける。そんなの、虫と変わらないでしょ」
「無駄なんかじゃないし、人は虫じゃない。人の命はその人だけのたった一つの宝物。何にも替えることができない唯一のもの。それを徒に奪うことは、許してはいけない大罪よ」
「大罪、大罪ねえ。地獄に落ちてきた罪人を処刑する炎を司る私が大罪人とでも?」
呆れたように肩を竦めながら言う少女。何を言っても、彼女には人間の考えや常識が通用しないらしい。
ちらりと後ろを見る。彩音達は恐怖しているのか、顔を真っ青にしてがたがたと震えている。
彼女達をどうにかして、あの少女の前から逃がさないといけないなと考え、どうやってあの少女を足止めするか策を巡らせる。
「繝舌い繝ォ繧シ繝悶Ν、その後ろにいる雑魚を捨てて私と一緒に来て。そして一緒に、永遠に戦い続けましょう」
「……お断りさせていただくわ。私は戦いが好きでここにきているわけじゃないの。そもそも、人殺しについていくわけないでしょう」
「……そっか。ま、そういうとは思ってたよ。どうやら、繝舌い繝ォ繧シ繝悶Νでも悪性じゃなくて善性側が強く出ているみたいだし。……仕方ない、じゃあ───殺すね」
小さく言った少女の右手に巨大な斧槍が出現すると同時に、自分の首が胴体から切り落とされるのを幻視する。
大量の虫が背中を這いずり回るような悪寒がして、五鳴を開放して防御態勢を取らずに先手必勝で攻撃を仕掛ける。
しかし、一瞬で最高速度に達した美琴の攻撃と同じタイミングで少女が接近し、斧槍と陰打ちがぶつかって強烈な衝撃波を生み出し、ダンジョンの地面と壁に亀裂を生じさせる。
「へえ、まだ上があるんだ。面白いね。じゃあ、どこまで力が上がるのか見せてよ、繝舌い繝ォ繧シ繝悶Ν!」
武器同士が接触している状態から少女は美琴を押し飛ばし、斧槍に真紅の炎をまとわせる。
対抗するように美琴は高電圧高電流の雷を刀身にまとわせて、少女が放ってきた炎の壁にぶつけるように電撃を放つ。
この瞬間、壊滅的な炎と雷の使い手の衝突が始まった。
「やっぱし最近何か変なことが起きてるんじゃないかって、噂されているもんな」
進んだりモンスターを倒したりすること一時間。小休止を挟みながら、次はどうするかという話し合いをすることにした。
今日は美琴一人で潜るよりは遭遇するが、トライアドちゃんねるの三人からすれば遭遇率が少ないようだ。
「モンスターの数が異常に減っているのもそうだけど、深域からしか出現しないはずの妖鎧武者やミノタウロス、キマイラとかが一か月くらい前から上域から中域にかけて出るようになっているし、それが原因なのかは分からないけど探索者が結構行方不明になっているからね」
その話を聞いて、やはりあの少女が頭をよぎる。
下層最深域のボス部屋でイノケンティウスという規格外な炎と熱を操る謎の怪物を、愛おし気な眼差しで見ていた謎の存在。
一鳴の状態の美琴が一瞬でトップスピードに到達した移動に、それ以上の速度で追い付いてきた、イノケンティウス以上の化け物。
もしかしなくても、彼女がここ一月の間にダンジョンの中で頻発している怪物災害や行方不明者が続出している理由なのではないだろうか。
「二週間前も、女性の一等探索者の霜月さんが行方不明になって、総出で捜索しても何も見つけられないって言ってたしな」
”え、マジ?”
”霜月ちゃんも行方不明なの!?”
”めっさ美人であの人の出る雑誌全部買うくらいには好きだったのに”
”めちゃつよ魔術師だよねあの人。そんな人が行方不明なんて信じられない”
”でも確かにこの二週間、あの人の話を聞かないな。美琴ちゃんの件を抜きにしても”
”ツウィーターが二週間前から止まってるからどうしたんだろうとは思ってたけど、行方不明になってたのか”
「あの霜月さんでさえ、逃げることができないイレギュラー、か」
『いずれ最上位である特等探索者になるのではと期待されていた霜月みなみ様ですね。ギルドの依頼板に、捜索依頼が張り出されておりました』
「ぶっちゃけあの人この町の探索者の中じゃ、美琴ちゃんを除けばぶっちぎりで強かっただろ。魔法使いなんじゃないかって噂が立つくらい、魔術に優れてたし」
流石の美琴も、その霜月みなみの名前は知っている。
探索者であって配信者ではないが、多くの人が彼女の名前を知っている。
美琴と同じようにソロでの活動をメインとしていた敏腕魔術師で、そのあまりの魔術の威力と規模、精細さに魔法使いだと勘違いされることがあった。
魔法使いは魔術を極めた末に到達する魔術の最終地点なので、魔法使いでないにしろそのうち魔法使いになるか、なれなくてもアイリの言う通り特等探索者になるのではと大きな期待を寄せられていた。
そんな霜月みなみが、二週間前から行方不明になっている。ギルドの最高戦力の一人でもある彼女の損失はかなり大きいようで、ギルドの捜索部隊が総出で彼女のことを探している。
一体何が起きているのだろうかと不安に感じていると、ふと足元からほんの微かに振動を感じる。
最初は気のせいかと思ったが、それは確実に大きくなってきている。
「先輩」
「えぇ、何か来るわね。二人とも、戦闘準備」
「言われなくても」
「休憩は十分だぜ」
真っ先に美琴が反応して雷薙を構え、続いて彩音、慎司、和弘も構える。
一体何が来るのかと鋭い視線を向けるが、すぐにこれはこの場にい続けたら危険だと直感が叫んだ。
「先輩、一旦広いところまで引きましょう!」
「え、ど、どうしたの?」
「怪物災害───スタンピードです!」
その単語を叫ぶと同時に、深域の方角から明らかに一つではないモンスターの声が重なって聞こえてくる。
直後に先に走り出した美琴を追うように、三人も全速力で走りだす。
”スタンピード!?”
”またかよ!?”
”これで今月二回目だぞ!?”
”美琴ちゃんよく気付いたね”
”なんかやばそうな雰囲気。ギルドに応援要請出しといたほうがいいんじゃ”
”美琴ちゃんがいるから平気じゃね”
”ソロ殲滅実績持ちは心強い”
複数のモンスターの声が聞こえてきて確定したことで、コメント欄が騒然とし始める。
二週間前にトライアドちゃんねるが危機にさらされ、そして美琴が助けることで美琴が大勢に知られるきっかけとなったダンジョン一有名で多くの死者と負傷者を出す怪物災害、スタンピード。
こんな短期間で二度も遭遇するとは思っていなかったのか、トライアドちゃんねるの三人はうんざりしたような表情をしている。
「まっじかよ!?」
「おれらはどうしてこう、ツイてないんだ!」
「言ってないで早く撤退するよ! 広いところに行けばいいのね!?」
「はい! ここだと狭すぎて、三人を巻き込んでしまいますから!」
すぐに殲滅開始できるように二鳴を開放して、雷を二つの一つ巴紋に蓄積させていく。
「過去にあれを単独殲滅した実績がある美琴ちゃんがいると、頼もしい限りね! でも今回はあなたにだけに任せっきりにはしないから!」
「二度も年下の女の子に助けられるのは、いくら強いとはいえ示しがつかないからな!」
「分かりました、無理はなさらず!」
蓄積を優先しているため、溜まっていく速度は速い。これなら広い場所に出るころには、二鳴の最大火力を開幕に叩きこんで数を大幅に減らせるだろう。
とにかく全力で走り、道中でモンスターが顔を覗かせても稲魂で声を上げる前に瞬殺する。数を増やさないことで、二鳴の最大火力を叩きこんだ時あとの戦いで三人の負担も減らせる。
全力で走ることおよそ五分。かなり開けた場所に出たので奥の方に移動し、そこで待ち構える。
モンスターの軍団の大量の足音が徐々に近付いてくる。
彩音はやや体が強張って力が無駄に入っているようで、構えている刀の鋒が少しぶれている。
和弘もダガーが少し震えているし、慎司も握った拳が震えている。
スタンピードはダンジョンで最も怪我人と死者を出している怪物災害。
興奮状態になったモンスターが突然移動し、それに釣られて他のモンスターも興奮状態になって一斉に走り出す、あるいは自分よりも強大で恐ろしい存在から逃げる時に起こる。
本来はこんな短期間で何度も発生するものではないのだが、ここ一月の間に何か異変が起きているのか、これを含めた怪物災害が頻発している。
それも今美琴達がいるダンジョンだけでなく、日本に留まらず世界各地のダンジョンでも頻発しているそうだ。
一体何が起きているのだと一瞬思考すると、美琴達が来た道からモンスターが姿を現す。
「諸願七雷・二紋───」
姿を見せると同時に最大火力で数を大幅に減らそうと構えるが、ゾッと背筋が震えて二鳴から四鳴に切り替えて全ての雷を一気に蓄積させる。
「───陰打ち・抜刀ッッッ! 御雷一閃ッッッ!」
雷薙をしまい、瞬時に蓄積させた雷を開放しつつ陰打ちを抜き、上段に構えた刀をまっすぐに振り下ろす。
それとほぼ同時に、ダンジョンの壁を一瞬で溶岩に変えながら真紅の炎が高波や津波のようにスタンピードを飲み込みながら現れる。
猛烈な速度で迫ってきたが、美琴の御雷一閃で炎の濁流は消滅して四人には届かなかった。
『お嬢様』
「えぇ、あの時の女の子がいるわね」
バチバチと雷をまとわせている刀を正眼に構えて強く警戒していると、ゆっくりとした拍手がこつこつという足音と共に聞こえてくる。
「流石流石。繝舌い繝ォ繧シ繝悶Νならこの程度の挨拶を返せないとね。炎越しに私ごと狙ってくるのは、ちょーっぴり予想外だったけど」
拍手しながら姿を見せたのは、赤色の軍服のような恰好をした真紅の髪の少女だった。
初めて下層最深域であった時よりも髪の色はより鮮明に赤くなっていて、燃えているようにも見える。
「それにしても参ったよ。ここはダンジョンだから当たり前だけど、雑魚が多すぎる。見ててとても不愉快極まりないよ。そうは思わない、繝舌い繝ォ繧シ繝悶Ν?」
「……あなたがどう思っていようと関係ないわ。ただ分かるのは、あなたが人殺しであることよ」
「人殺し? 嫌だなあ。私はただその辺をうろちょろしているごみと害獣を処分しているだけだよ」
あの少女が来ている服、見覚えがある。
赤い軍服のような服は、霜月みなみが普段から好んで着ているものだ。
それを今、真紅の少女が来ているということはつまり、彼女はすでにこの少女に殺されているということだ。
「人の命を、なんだとっ……!」
人間のことをごみや害虫と言ったことに憤り、柄を強く握る。
「所詮人間なんて、私達鬲皮・に支配され淘汰される弱者に過ぎない。百年ぽっちしか生きられないし、あっという間に、簡単に死んじゃう。なのに無駄に数を増やし続ける。そんなの、虫と変わらないでしょ」
「無駄なんかじゃないし、人は虫じゃない。人の命はその人だけのたった一つの宝物。何にも替えることができない唯一のもの。それを徒に奪うことは、許してはいけない大罪よ」
「大罪、大罪ねえ。地獄に落ちてきた罪人を処刑する炎を司る私が大罪人とでも?」
呆れたように肩を竦めながら言う少女。何を言っても、彼女には人間の考えや常識が通用しないらしい。
ちらりと後ろを見る。彩音達は恐怖しているのか、顔を真っ青にしてがたがたと震えている。
彼女達をどうにかして、あの少女の前から逃がさないといけないなと考え、どうやってあの少女を足止めするか策を巡らせる。
「繝舌い繝ォ繧シ繝悶Ν、その後ろにいる雑魚を捨てて私と一緒に来て。そして一緒に、永遠に戦い続けましょう」
「……お断りさせていただくわ。私は戦いが好きでここにきているわけじゃないの。そもそも、人殺しについていくわけないでしょう」
「……そっか。ま、そういうとは思ってたよ。どうやら、繝舌い繝ォ繧シ繝悶Νでも悪性じゃなくて善性側が強く出ているみたいだし。……仕方ない、じゃあ───殺すね」
小さく言った少女の右手に巨大な斧槍が出現すると同時に、自分の首が胴体から切り落とされるのを幻視する。
大量の虫が背中を這いずり回るような悪寒がして、五鳴を開放して防御態勢を取らずに先手必勝で攻撃を仕掛ける。
しかし、一瞬で最高速度に達した美琴の攻撃と同じタイミングで少女が接近し、斧槍と陰打ちがぶつかって強烈な衝撃波を生み出し、ダンジョンの地面と壁に亀裂を生じさせる。
「へえ、まだ上があるんだ。面白いね。じゃあ、どこまで力が上がるのか見せてよ、繝舌い繝ォ繧シ繝悶Ν!」
武器同士が接触している状態から少女は美琴を押し飛ばし、斧槍に真紅の炎をまとわせる。
対抗するように美琴は高電圧高電流の雷を刀身にまとわせて、少女が放ってきた炎の壁にぶつけるように電撃を放つ。
この瞬間、壊滅的な炎と雷の使い手の衝突が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる