【悲報】ダンジョン攻略JK配信者、配信を切り忘れて無双しすぎてしまいアホほどバズって伝説になる

夜桜カスミ

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第一部 第四章 盛大に楽しむ悪意

55話 Side 黒十字の主

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 龍博の美琴の配信親フラから、少し遡ること二日前。
 人と欲望、そして呪いの坩堝、新宿の一角。大きな黒い十字架のある黒いビルの中にある一室で、一人の男が豪奢でいくらするのか分からない机を殴り壊していた。

「雷電、美琴……!」

 怒りが滲み出ている声を出すのは、日本三大クランの一つであるブラッククロスのクランマスター、黒原仁一くろはらじんいちだ。
 彼の正面の空間投射ホログラム画面に映されているのは、トライアドちゃんねるの三人と美琴と一緒に、中層で戦い異常な成長性を見せている灯里がいる。

 魔法使いの妹であることは知っているが、魔法使いが既に存在している以上彼女が魔法使いにはなれないことを、仁一は知っている。
 どうせ身内の栄誉に縋っているだけの弱者だと思っていたのだが、配信が進めば進むだけ燈条灯里という小さな魔術師の異常性が浮き上がってくる。

 持っている杖が姉のおさがりであろう古代魔術遺産アーティファクトであり、シンプルな性能ではあるがそれ故に破格の性能を発揮している。
 もちろんその杖により補助と強化による火力だとも思ったが、その後に杖を使わずとも少しだけ規模の小さな魔術を使っていたため、本人のスペックの異常さがあらわになった。

 登録したての四等探索者の魔術師で、魔法使いの妹。もし彼女をクランに引き入れることができれば、自動的に理不尽代表ともいえる炎の魔法使い、燈条雅火とのパイプが繋がる。
 灯里の魔術師と探索者としての価値が跳ね上がったこと、十五歳と若く、そして幼さをかなり残しているが整った顔立ち。そして、世界で見ても希少な、魔法使いの血縁者。これから多くのクランや企業が彼女を勧誘するだろう。

 なんとしてでも彼女のことは手に入れたい。しかし、あのようなことがあってしまった以上、ブラッククロス関連のクランには近寄らないだろう。
 行くとしたら、同じ三大クランに数えられている、多くの未成年を抱えているレッドドラグーンかホワイトレイヴンズだろう。
 金の卵だと思わなかった子供が、しっかりと磨いたら金の卵どころか中までぎっしりと詰まっている純金の塊のような存在だった。
 手に入れていれば、その圧倒的な魔術の腕前と魔法使いとのコネクションで、より成長することができたかもしれない。そんな機会を永久に失ってしまったことに腹が立ち、思わず机を破壊してしまったのだ。

「あらあら、これは随分と派手にやったわね」

 強く歯ぎしりして、先日美琴の配信に映り込んだ挙句純金の塊である灯里を見捨てて逃げた連中に折檻しに行こうとすると、執務室の扉が開いて一人の妙齢の女性が入ってきて、壊れた机を見てくすりと笑う。

「……何をしに来た、マラブ」
「随分つれないことを言うじゃない。用事がなければ、ここに来ちゃいけないの?」
「お前とは所詮、ただのビジネスパートナーにすぎん。俺のクランが成長するための駒としか使わん。そこに信用も信頼もない」
「酷いことを言うのね。長いことあなたの手助けをしてあげて来たって言うのに」

 壊れた机に歩み寄り、木片を一つ摘まみ上げながら仁一に目を向ける。

「なら答えろ。あの小娘からどうやれば、燈条灯里を奪うことができる」
「今度は人さらい? 今のご時世そう簡単に成功するものじゃないわよ。……琴峰美琴、本名は雷電だっけ? がそばにいる状況でさらうなんてことは、まず不可能ね」

 んー、と指を顎に当てながら考え、それから思いついたことを口にする。
 すると仁一は鋭い目付きで睨み付けてくる。

「ちっ、役立たずが」
「話を最後まで聞きなさい。あの子がそばにいる時は無理って言っただけで、一人でいる時は可能よ。何よりの脅威は、雷神の力を使って守られること。なら、近くにいなければ、雷を使う間もなく連れ去ることはできるわね。あとはダンジョンの中で不意打ちでもして行動不能にすれば、本人を前にしても行けるんじゃない? ま、雷神なんだしできないでしょうけど」

 そもそも不意打ちなんて、多くのクランや企業が灯里のことを狙っていることを美琴が知らないはずないので、当面は強く警戒を続けているから無理なことくらいわかる。
 なら比較的現実的な手段は、美琴がいないところで灯里を連れ去り、脅しをかけて無理やり入団させることだろう。だがこれももちろんリスクが高すぎる。
 もし連れ去ることを失敗する、あるいは連れ去ったことを美琴か灯里の姉に知られれば、その瞬間どう転んでも消し炭は確定だ。
 やはり自分のクランメンバーとパーティーを組んでいる時に、あれこれ理由を付けて入団させておけばよかったと後悔する。

「珍しいわね。何があなたをそこまで苛立たせているの?」
「お前の言う、雷神だ」
「あぁ、中学生の女の子をダンジョンに放置して逃げた挙句、その様子がばっちり配信に映り込んだ上に女の子からの告白、更にはそこから内部告発の連続で大炎上していることね」
「っ、あぁ、そうだ! その通りだ! マラブ、これはどういうことだ! 契約の時にお前は言っただろう! 俺のクランを確実に日本、いや、世界最強のクランにしてみせると! だがこれはなんだ!? 連続して俺のクランが失墜しかねないことばかりが連続しているじゃないか!」

 大股でマラブに近付き、胸元を掴み上げて怒鳴り付ける。

「そんなに近くで大声出さないでよ、うるさいじゃない」

 胸元を掴み上げている腕を払いのけ、乱れた服装を直す。

「確かにあなたのクランを大きくすると約束したわ。実際日本三大クランにまで数えられるくらいには大きくなった。でも私、言ったわよね? アドバイスはちゃんと聞きなさいって。しかしあなたは私のアドバイスの一部を聞き入れて、あとは自分のやり方でやった。全部言うことを聞かないことはいいことだけど、かといってやりすぎもダメだって忠告もしたわ。それを聞かなかったのはあなたじゃない」
「俺はお前のことを最初から信じちゃいない。お前が何を企んでいるのか、分かったものじゃないからな。だから、お前の使えそうな意見だけを取り入れた。それの何が悪い。そのやり方で俺のクランはここまで来たんだ。だがここにきて、どうして俺のクランがこうも叩かれなければいけない!?」
「自業自得じゃない。世間ではあまりよろしくないような手段を何度も使ってきたんだし、あなた以外にも成員も色んな不正に手を出しているし、何よりあなたの息子だってもうこれ以上酷いことをすれば擁護できなくなるような場所まで来てしまっている。大人しく私の言うことを聞いていれば、小さな火種一つでここまで大きく燃え広がることもなかったでしょうね」

 マラブの言い分はもっともだ。
 確かに仁一は、業績が伸び悩み始めた時からかなり汚い手段を使ってきた。同じ時期に雇い入れたマラブの意見も聞き、不必要だと判断したものは排除して必要なものだけを取り入れてきた。
 それもあってか一時期伸び悩んでいたのが嘘だったかのようにめきめきと業績を伸ばし、今の地位までのし上がることができた。

 未成年が多く平均年齢が低く、成人組には精鋭が揃っているとはいえ数の暴力に弱いレッドドラグーンに、非常に厳しい条件を達成した探索者のみが所属を許されるエリートクランのホワイトレイヴンズ。これら二つと引けを取らないどころか上回るほどの戦力を有し、たびたび日本最強クランに名前が上がるほどとなった。
 自分のやってきたことは間違いない。自分のやり方に間違いなどない。綺麗なだけでは頂点に上り詰めることなんてできないことなど、平安時代から生きる日本最強の呪術師である朱鳥霊華の伝説を見れば明らかだ。

 綺麗なだけでは最強にはなれない。だからこそ汚い手段に手を伸ばした。自ら汚れを被ることで、ここまで大きく成長できた。
 苦労して手に入れた、最強格の称号。それが今、たった一人の少女が投げ入れた火種で大きく燃え、揺れている。
 このままでは、せっかく築いてきた最高の地位がなくなってしまう。どうにかしてこの騒動を収束さえなければいけない。

「……くそっ!」

 しかし考えれば考えるほど、虎の尾を踏むどころか龍の逆鱗に触れる可能性が高いものに行きつき、苛立ちが最大値まで達する。
 とにかく今は時間と考えが欲しい。そう思い、正面に立っているマラブを強引に押しのけて、そのまま執務室から出て行った。
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