妄想女医・藍原香織の診察室

Piggy

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迷走編

20話【off duty】大橋 潤也:成敗(大橋編)

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 ダッシュで〇×カラオケに行ったら、楓さんが受付にいた。

「楓さーん。どうしたんだよ、急に――」
「来たっ! 遅いわよ、大橋くん! 行くよっ、1007号室!」
「へ?」

 いい終わる前に、楓さんが俺の手を引っ張ってエレベーターに乗り込む。

「ねえ、急に呼び出して何なんだよ、藍原先生と先輩がどうかしたの?」
「だから、藍原先生がヤバいかもしれないの!」
「ヤバいって何? 小山内さんと? いいじゃんそんなの、気が合うんならほっとけば――」

 俺を無視して、なぜだか切羽詰まった顔の楓さんがダッシュで1007号室のドアを勢いよく開けた。

「藍原先生、いる!? ……ちょっとあんたっ、何してんの!?」

 え、なになに? 遅れて楓さんのうしろから顔を覗かせた俺は、ぶったまげた。

「あれっ、先輩? え、先生、なんで寝てんの……って、え? ええ!?」

 藍原先生がソファの上に仰向けになってて、その上に小山内先輩がまたがってる。先輩はすげぇ顔で俺たちを見てて、で、先輩の……先輩の、股間が!? え、あれ、マジモンですか!? マジで勃起した、先輩のチンコですか!? ええっ、何やってんのこんなとこで、てか、なにあのデカさ!?

「おっ、おまえらっ、何でマジで来てんだよ!?」

 先輩の声がひっくり返ってる。先輩は飛び起きて先生から離れたけど、先生は寝たまんま全然動かない。え、おかしいでしょ、この状況。先生、何で動かないの? ……え、これ、ひょっとして――

「大橋くん! 成敗ッ!!」

 楓さんがビシッと先輩を指さした。ハイッ……って、え、俺? 成敗って、いや、俺小山内さんの後輩だし、だいたい体格的に、絶対勝ち目ないような……。

「や、ちょっと、楓さん、ここは穏便に、話し合いで、さ……っ」
「大橋!? ふざけんなよ!?」
「ぎゃあっ!! お、大橋、行きまーすッ!」

 ヤバい、先輩より、キレた楓さんのほうが怖い。とりあえず先輩に向かって、えっと、キック?

「先輩っ、失礼しますっ……って、うごっ」

 バキッ。

 キックどころか、足が上がる前に、先輩のキレのいい右ストレートが俺の顎に命中。俺はあえなく床に転がった。

「ご、ごめん楓さん、やっぱムリ……」
「でかした、大橋ッ!」
「え?」

 楓さんがスマホを先輩に向かって掲げた。

「小山内! あんたの暴行、バッチリ録画したわよっ! 丸出しのチンコと爆睡してる先生も映ってるからね! 警察に、訴えてやるんだからッ!!」

 小山内先輩が慌ててズボンのチャックを上げた。

「ま、待てよっ、まだ挿れてねーから、警察とか行くんじゃねー……うぎゃあっ!?」

 慌てすぎてチンコがチャックに挟まって、激しく股間を押さえながら、先輩は逃げるようにして部屋から出ていった。

「てめえ絶対許さないからなッ!!」

 楓さんは肩でふーふーと息をしながらその後ろ姿に叫んだ。俺はもう、いまだに何が起こったのかよくわかってなくて、とりあえず楓さんがすごく勇ましくて惚れ直したのと、小山内先輩がマジでヤバいことをしようとしてたなってくらいで。楓さんが藍原先生に駆け寄って一生懸命話しかけてるのを見て、俺もふらふらと立ち上がった。

「楓さん、藍原先生、どうした……ウッ!」

 楓さんの肩越しに先生を見て、俺は思わず呻いた。ヤバい! これはヤバい。藍原先生の、デカいおっぱい……モロ出しじゃん!? ええっ、俺、見ていいの!? すげぇでけぇ。ちょーキレイ。なんだ、このおっぱい、本物か!? そ、それに……! ま、股が!! 股が、開いてるよ!? ねえ、いいの、ソレ!? ちょっと屈んだら、見えちゃうよ!? ねえ、早く閉じないと、俺、屈んじゃうよ!?

 生唾を飲んで、吸い寄せられるように藍原先生の股間に――

 ドスッ!

「いてぇ!」

 か、楓さん、今の腹パンチ、さっきの顎ストレートより効いたかも……。

「エロ大橋! 見てんじゃないわよ!」
「いや、そういわれても、見えちゃったものはしょうがないよ、自分から見たわけじゃないし」

 立ち直ったときには、もう楓さんが藍原先生のブラウスとカーディガンを留めたあとだった。足も揃えて、めくれたスカートが下ろされてる。……ちょっと残念。

「ねえ、先生、大丈夫? しゃべれる?」

 楓さんが話しかけたら、藍原先生はちょっとだけ呻いた。

「ん……か、えで……ちゃん……」

 ダメだ、全然呂律が回ってない。ただ寝てるだけにしてはおかしいぞ。酔っ払い過ぎたのかな? それで、寝込みを先輩に襲われたのか。

「ねえ、先生、飲み過ぎじゃない? 襲われても動けないって、ちょっと――ぐはっ」

 今度はグーパンチが頬に入った。楓さん、容赦なさすぎ。

「あんたバカじゃないの!? 絶対薬盛られたんだよ、これ! ほら、何か入れ物持ってない? ペットボトルとか。証拠品、持って帰るよ!」
「え、そんなの持ってないよ、ダッシュで来いって楓さんいったから、何にも……あ」

 手ぶらで来たつもりだったけど、ひとつだけ、出かける前にポケットにねじ込んだものがあったのを思い出す。

「飲み物、持って帰るんだよね? ……これ、使えるかな?」

 ちょっと恥ずかしいけど、仕方ない。ポケットから出したのは……。

「……あんた、どんだけエロいの?」

 楓さんの、ちょー冷たい声が心に刺さる。でも、我ながらいい案だと思うけど。……コンドーム。

「大丈夫だよ、穴は開いてないと思うし。これに入れて、縛ればいいでしょ?」

 本当は、楓さんとデキるのかなと思って、持ってきた。だってほら、楓さんからのお呼び出しなんて滅多にないし、チャンスは逃しちゃもったいないだろ。
 楓さんはひったくるようにゴムを取って、そこにサワーを入れた。

「……あんた、ホントにバカがつくほどエロいよね。……まあ、今回はそれが役に立ったけど」

 うわ、楓さんに初めて褒められた気がする。ちょーうれしい。

「さて、とりあえず先生を連れて帰らなきゃ」
「え、警察に行くんじゃないの?」
「あんた、デリカシーのかけらもないわね。警察に行くかどうかは、こんな目にあった藍原先生が決めることでしょ。でも今は薬盛られて動けないし、とりあえず先生の意識がはっきりするまでは、下手に動けないよ」

 そんなもんなのか? ああでも、確かに、聞いたことあるな。日本の女性は、レイプされても警察に行かない人が多いって。周りに知られたらイヤだとか、自分に隙があったからだろとか中傷されて、裁判でもいろいろ聞かれて、辛い思いをするらしいな。……藍原先生、そんな目にあったのか。可哀想だな。

「大橋くん。藍原先生をおんぶして。とりあえずタクシーで帰るよ」
「り、了解」

 動けない先生をおんぶして、上からコートをかけてあげて、何とかエレベーターに乗る。怪しまれないようにしないとな……。……あれ、でも……何だか、妙だな……。これ……。

「……ねえ、楓さん」
「何よ?」
「……藍原先生、……パンツ、履いてないっぽい」
「え!?」

 楓さんがぎょっとして振り返る。この感触は、間違いないと思う。先生、パンツ履いてないよ。それでもって、これは口が裂けてもいえないけど……すげえ、濡れてる。ああ、ヤバいなあ、さすがにこの状況は、俺でもチンコ勃っちゃうよ。ああ、どうか楓さんにバレませんように……。

「そっか、小山内の野郎が脱がしたのね。……でも仕方ない、ここまで来ちゃったら、もう取りに戻れないよ。大橋くん、とりあえずそのままタクシー乗るよ! 間違っても、触ったり晒したりするんじゃないわよ!?」
「うう、了解……」

 ああ、腰のあたりがしっとりしてる……。今はそれどころじゃないってわかってるけど……楓さん。俺、シたくなってきた……。
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