妄想女医・藍原香織の診察室

Piggy

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障害編

37話【daily work】西園寺 すみれ:「貸しふたつめ、返してもらうわよ?」(藍原編)

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「あら藍原さん、また何か悩み?」

 夕方、医局で呆けているところに、西園寺先生が話しかけてきた。

「元カレの件は解決したんでしょ? まだ何かあるの?」

 元カレ……神沢先輩のことか。すっかり忘れてた。今考えてたのは、林さんのこと。でも、西園寺先生にいわれて、もうひとつ、悩みがあったことを思い出す。

「院内セミナーのあとはあんなにすっきりした顔してたのに。週末、何かあったの?」
「えーと……あったというか、なかったというか」

 新條くんたちと過ごした4人の時間は、とっても楽しかった。また行きたいくらい。でも……あんなに楽しかったし、あんなに新條くんへの気持ちを再確認したのに……まだ、最後までは、できてない。ううん、前と比べれば、先っぽだけ入ったし、ずいぶん進んでる。でも、あのとき……本当はあのとき、混浴風呂で、今度こそ覚悟を決めて、新條くんとひとつになろうと思ったのに。土壇場で、あの先っぽの、熱くて柔らかくて硬くて、絶妙な太さのアレが、あたしのアソコを押し広げようとした瞬間――頭の中が真っ白に飛びそうになって、気がついたら、新條くんから離れてた。

 あんな――あんな先っぽだけで、あんなにゾクゾクして、あれが全部入っちゃったら、あたし絶対、おかしくなる。高校のときよりエロくて、日々の妄想でエロ偏差値ガバ上がりのあたしが、あんなものを咥えこんだら――高校のときより、神沢先輩のときより絶対、ドエロになる!

 わかってる、たぶん新條くんは、それでもあたしを受け入れてくれる。でも、どうしても、微妙に残るあたしの爪の垢程度の理性が、ものすごい勢いであたしを引き戻す。これはもう、どうしようもない。

「ふうん。ライバルが消えたというのに、まだ数学オタクと、満足にセックスできてないわけ?」
「えーと、まあ、はい……」

 だから先生、ここ医局なんですけど。他に誰もいないのを確かめつつ、返事をする。西園寺先生はなにやら顎に人差し指を当てながら、宙を見て考えるそぶりを見せた。それから指をパチンと鳴らして、笑顔であたしを見る。……あ、この笑顔。危険なやつだ!

「決めた。今夜、夕飯に付き合って」
「え、またですか!?」
「そうよ。残ってた貸しふたつめ、返してもらうわよ」
「あの、今度はどこですか」
「どこでもいいけど。こないだの小料理屋、気に入ったんならまたあそこにしようかしら?」

 あの小料理屋なら、安心だ。個室もなかったし、必ず人の目があるし。西園寺先生行きつけなだけあって、料理もお酒もおいしかった。……あそこなら、西園寺先生に根掘り葉掘り訊かれてからかわれるの前提でも、ちょっと、行きたいかも……。

「――わかりました。7時にタクシー乗り場ですか」

 西園寺先生は満足そうにうなずいた。
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