妄想女医・藍原香織の診察室

Piggy

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障害編

47話【off duty】新條 浩平:「させてあげる」(藍原編)②

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「どうすれば、この快楽の波を収めることができると思う……?」

 西園寺先生が意地悪く囁く。先生の、いうとおりだ。何度もイカされて、もう充分なはずなのに、裏腹に、体の中の、奥のほうで渦巻く熱いものが、なかなか取れない。ずっと、どうしてなのかわからなかった。最奥の、疼き。早く、解放されたい。終わることのないこの快楽の奔流と消えない疼きから、解放してほしい。
 奥へと繋がる入り口に、何かが触れた。先生の指じゃない、何か。指よりもっと太くて、硬くて、少しだけ、冷たい――

「ひゃあ!? や、あ、な、なにこれ――」

 その物体がぐっと中に侵入してきて、あたしは我に返る。あたしの中を押し広げる、初めての感覚。体を起こすと、先生が、あたしの中にバイブを差し込んでいた。

「痛くしないから安心して。ちゃんと、よくしてあげるから……」

 行き止まりまでぬるりと入り込んだそれが、突然振動とともに動き始めた。

「あああっ、やあんっ、ダメっ、あ、い、やめっ、あ、先生っ、お願い……ッ」

 一番奥を、ぐりぐりと円を描くようにゆっくりと舐られる。あたしは例えようもない気持ちよさとともに、恐怖を感じた。初めて味わう、正体不明の快楽。この、冷たくて硬い機械から繰り出される単調な刺激が、あたしを狂わせる。自分を制御できない恐怖。

 怖い、流されるのが怖い。誰か、助けて――

「……先生」

 どこかで、新條くんの声が聞こえた。あたしは必死で手を伸ばした。

「あ、はあっ、し、新條くん……っ」

 新條くん、助けて。

 前後もわからない意識の中で、新條くんの存在を探す。ギシ、とソファがきしんで、体のすぐ上に、熱と少しの重さを感じた。甘くてかぐわしい西園寺先生の匂いとは全然違う、むせ返るような濃い汗の匂い。涙で滲んだ目を開けると、仰向けになったあたしの目の前に、新條くんの顔があった。

「先生。感じてる先生、すごく綺麗でエロくて、俺もう、おかしくなりそう。ねえ、先生も一緒に、おかしくなってよ……」

 血走った目で、新條くんがそういった。いつの間にかバイブが新條くんの手に握られていて、それがくい、と奥を突いた。

「ああん!」

 頭まで突き抜けるような刺激に声をあげる。

「先生……そのまま、感じて? どれだけキモチいいのか、俺に教えてよ。俺、先生のすべてを知りたい」

 新條くんの湿り気を帯びた声があたしの耳にダイレクトに入り込んで、体中がゾクゾクと震え出すのがわかった。新條くんの唇が、舌が、あたしの首筋を丹念に愛撫して、新條くんの温かくて骨ばった手が、あたしの胸を優しく舐って、そして、新條くんの動かすバイブの先端が、あたしの疼く最奥をぐりぐりと擦り上げる。

「ああッ、新條くん……っ」

 必死で新條くんにしがみつく。不思議な感覚だった。さっきまで、ただ無機的に送り込まれるだけだった快楽の刺激が、にわかに柔らかく息づく。制御不能だったあたしの体が、新條くんの腕の中で、優しく転がされる。恐怖がすうっと引いていって、代わりに、下半身の疼きとは違う、別の温かいものが、体の中心から溢れてくる。一気に、体が熱くなった。

「あ、い、あっ、いいっ、奥がっ、奥が、ダメ、も、クる、また、やあっ、ああ、あああぁぁ!!」

 新條くんにしがみついたまま、また絶頂に達した。腕も脚も夢中で新條くんに絡めたまま、津波のような快感をやり過ごす。ゆっくりと引いていく波に揺られながら、恐る恐る体を離して新條くんの顔を見る。頬を紅潮させて、興奮したまなざしであたしをじっと見つめる新條くんがいた。

「新條くん……っ、ん、んんっ、ふ……ッ」

 無我夢中で、新條くんの唇に貪りついた。熱くみずみずしい新條くんの舌に、ひたすら自分の舌を絡ませる。新條くんはあたしに応えるように、深く唇を合わせて、何度も何度も口づけを交わしてくれた。アソコにバイブを咥え込んだまま、お腹に触れる熱いモノは、新條くんの熱くたぎった彼自身で、それがとろとろに濡れながらあたしにゆっくりと擦りつけられてると気づいた瞬間、あたしの奥のほうがまたうずうずと熱を取り戻してきた。長い長いキスをしながら、新條くんのモノを感じたくて腰を揺らす。どうしよう、もう止まらない。あたしってば、こんなに淫乱だったの。いやらしい自分の動きに戸惑っていたら、新條くんがまた、あたしの奥をぐり、とバイブで突いた。

「あん!」

 思わず声をあげてのけぞる。新條くんが、嬉しそうに笑った。

「ふふ、先生、まだ感じるの? これが、好きなんだね。もっと奥、ほしいんじゃないの?」

 いつも優しい新條くんが、ちょっとだけ意地悪になって、あたしを攻める。ぐりぐりと何度も擦られて、あたしの体はまた勝手に、魚のように跳ね上がる。

「ああんッ、あ、いいっ、ね、ちが、ああっ、ちがうの……ッ」

 ズキズキと疼く部分を刺激されて、絶え間ない快感に悶えながら、でもあたしの別の部分が、ずっとお腹に擦れる新條くんの熱い肉棒の動きを追っている。キモチいい。キモチよくて死にそう。なのになぜだかとても切なくなってきて、あたしは首を横に振った。

「違わないでしょ。先生のここ、もう、滴るほど濡れてるよ? もっと、ほしいんでしょ?」
「ち、ちが……ッ」

 キモチよくて切なくて、涙が出そうになる。違うの。今あたしをかき乱してるのは、冷たくて硬い無機質な塊。でも、あたしが本当に欲しいものは違う。もっとあったかくて、柔らかくて、気持ちの宿る、新條くんの――
 乱れる呼吸の中で、どうしても我慢できなくて、どうしても伝えたくて。その気持ちが、わずかに残った理性と羞恥に、少しの差で勝った。

「……新條くんのが、ほしいの……っ」

 絞り出すように、震える声で、いった。
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