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2章・チト
ヒミツのキモチ・8
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――モエくんと出会ったのは、運命かもしれない。
そんな言葉も書いた記憶がある。モエは花を踏んづけたことをちゃんと謝ってくれたし、放課後は一緒に園芸作業を手伝ってくれたうえに、楽しげにチトと会話してくれたのだ。チトはそんな彼に運命を感じてしまった。これまで出会った人とは絶対的に違うものを、彼に感じたのだ。
モエくんは……、僕の話を聞いてくれた。鬱陶しがるようなこともしなかった。これまで接してきた誰とも、モエくんは違ってた……。
しかし、そんな彼は重い過去を抱えていた。左アキレス腱断裂という大きなケガと挫折。特に、慕ってくれていた後輩に、軽い口調で噂されていたという話には、胸を貫かれたような感覚を持った。もう以前のように、思うようには動いてくれなくなった足。そして、周囲から向けられる憐みの目。モエは軽い口調で、明るく話してはいたが、きっとあれは強がりだったのだろう。
――コウモリなのに、飛べないなんてカッコ悪いよな……。
そう言ったモエの悲しそうな笑みと、震えた声。まるで、自分を嘲笑するような言葉。それを見て、聞いて、チトはもうたまらなくなった。胸の奥が苦しくて、どうにかして、今すぐに彼を喜ばせてあげたいと思った。だが、チトにできることなんて限られている。彼が喜ぶほどのことをしてあげられる、自信はない。それでも植物を植えて、花や美しい下草で地面を彩ることはできる。そう思い、彼に感情をぶつけるようにして、言ったのだ。
――僕……っ、え、園芸部員の名に懸けて、モエくんがこれから歩く道が楽しくなるように……、綺麗な花や美しい下草を、いっぱい植えておきますから!
あの後、チトはモエを抱きしめた。チトの言葉を「告白みたいでかっこいい」とも言ってくれた。ただ、あのときにはまだ、モエのハグにドキドキしたりはしなかった。――いや、驚いて心拍数は上がったが、本当にそれだけだった。けれど、今は違う。
あのときは、こんなふうに体が熱くなったりしなかったし、モエくんのこと、かっこいいって思っても、たぶん、本当にそれだけだった。でも、今は――……。
「チトくん、バーガー買いにいこ。もう決まってる?」
「あっ、ううん……、まだ……」
「俺も。迷っちゃうよなぁ。なんにする?」
モエがそう言って、チトをレジカウンターへ誘う。チトは笑みを浮かべながら、財布を持ち、あいかわらず鼓動が速くなる心臓を煩わしく思った。そばにいたら、この音が彼に伝わってしまうんじゃないか――と思うほど、強く高鳴っている。
もし、今、昨夜のように、もう一度モエに抱きしめられたら、チトはどうなってしまうだろう。それを想像すると、途端に体じゅうが火照ってくる。とてもじゃないが、冷静ではいられなくなってしまいそうだ。きっとまともに立っていることすら難しくなるだろう。
また、モエくんに抱きしめられたら……。僕は――……。
「なぁ、チトくん。今度さぁ、チトくんちに遊びに行っていい……?」
レジの列に並びながら、不意にモエが訊く。同時にちら、と視線を送られて、チトはびくんっと肩を震わせた。モエの横顔に見惚れ、再び抱きしめられる妄想をしていたチトにとって、彼の視線はレーザー砲のような威力があった。
「へっ……」
「だって俺、チトくんちの庭、見てみたいもん。それに、チトくんちのお母さんにもまた会いたいし」
「う、うちのお母さんはいいよぉ……」
「なんでよ。俺、好きだけど。おもしろい人じゃん」
「もう、モエくん他人事だからって……」
母、麗美が出てくれば、きっとチトは、モエとまともに会話なんかできなくなる。麗美がマシンガンのごとく、モエに話しかけるばかりになるのも、目に見えている。モエが家に遊びに来てくれるのは嬉しいが、それだけは避けたいところだ。
「お母さんは抜き……!」
チトは口を尖らせる。だが、モエはいたずらっぽい笑みを見せ、チトの頬を軽くちょんちょんと突いた。彼の笑顔に、チトの胸はまた、ドクン――と強く波打つ。
あぁ、どうしよう。やっぱり僕、モエくんが好きだ……。大好きだ……。
そんな言葉も書いた記憶がある。モエは花を踏んづけたことをちゃんと謝ってくれたし、放課後は一緒に園芸作業を手伝ってくれたうえに、楽しげにチトと会話してくれたのだ。チトはそんな彼に運命を感じてしまった。これまで出会った人とは絶対的に違うものを、彼に感じたのだ。
モエくんは……、僕の話を聞いてくれた。鬱陶しがるようなこともしなかった。これまで接してきた誰とも、モエくんは違ってた……。
しかし、そんな彼は重い過去を抱えていた。左アキレス腱断裂という大きなケガと挫折。特に、慕ってくれていた後輩に、軽い口調で噂されていたという話には、胸を貫かれたような感覚を持った。もう以前のように、思うようには動いてくれなくなった足。そして、周囲から向けられる憐みの目。モエは軽い口調で、明るく話してはいたが、きっとあれは強がりだったのだろう。
――コウモリなのに、飛べないなんてカッコ悪いよな……。
そう言ったモエの悲しそうな笑みと、震えた声。まるで、自分を嘲笑するような言葉。それを見て、聞いて、チトはもうたまらなくなった。胸の奥が苦しくて、どうにかして、今すぐに彼を喜ばせてあげたいと思った。だが、チトにできることなんて限られている。彼が喜ぶほどのことをしてあげられる、自信はない。それでも植物を植えて、花や美しい下草で地面を彩ることはできる。そう思い、彼に感情をぶつけるようにして、言ったのだ。
――僕……っ、え、園芸部員の名に懸けて、モエくんがこれから歩く道が楽しくなるように……、綺麗な花や美しい下草を、いっぱい植えておきますから!
あの後、チトはモエを抱きしめた。チトの言葉を「告白みたいでかっこいい」とも言ってくれた。ただ、あのときにはまだ、モエのハグにドキドキしたりはしなかった。――いや、驚いて心拍数は上がったが、本当にそれだけだった。けれど、今は違う。
あのときは、こんなふうに体が熱くなったりしなかったし、モエくんのこと、かっこいいって思っても、たぶん、本当にそれだけだった。でも、今は――……。
「チトくん、バーガー買いにいこ。もう決まってる?」
「あっ、ううん……、まだ……」
「俺も。迷っちゃうよなぁ。なんにする?」
モエがそう言って、チトをレジカウンターへ誘う。チトは笑みを浮かべながら、財布を持ち、あいかわらず鼓動が速くなる心臓を煩わしく思った。そばにいたら、この音が彼に伝わってしまうんじゃないか――と思うほど、強く高鳴っている。
もし、今、昨夜のように、もう一度モエに抱きしめられたら、チトはどうなってしまうだろう。それを想像すると、途端に体じゅうが火照ってくる。とてもじゃないが、冷静ではいられなくなってしまいそうだ。きっとまともに立っていることすら難しくなるだろう。
また、モエくんに抱きしめられたら……。僕は――……。
「なぁ、チトくん。今度さぁ、チトくんちに遊びに行っていい……?」
レジの列に並びながら、不意にモエが訊く。同時にちら、と視線を送られて、チトはびくんっと肩を震わせた。モエの横顔に見惚れ、再び抱きしめられる妄想をしていたチトにとって、彼の視線はレーザー砲のような威力があった。
「へっ……」
「だって俺、チトくんちの庭、見てみたいもん。それに、チトくんちのお母さんにもまた会いたいし」
「う、うちのお母さんはいいよぉ……」
「なんでよ。俺、好きだけど。おもしろい人じゃん」
「もう、モエくん他人事だからって……」
母、麗美が出てくれば、きっとチトは、モエとまともに会話なんかできなくなる。麗美がマシンガンのごとく、モエに話しかけるばかりになるのも、目に見えている。モエが家に遊びに来てくれるのは嬉しいが、それだけは避けたいところだ。
「お母さんは抜き……!」
チトは口を尖らせる。だが、モエはいたずらっぽい笑みを見せ、チトの頬を軽くちょんちょんと突いた。彼の笑顔に、チトの胸はまた、ドクン――と強く波打つ。
あぁ、どうしよう。やっぱり僕、モエくんが好きだ……。大好きだ……。
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