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第13話 十七年越しの一途な恋/3
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しかしレネは失望を抱えながらも未練を捨てることが出来ず、王都で暮らしながら時折グレイの様子を見守った。自然に知り合いになって、恋仲になる――そんなシナリオを想像しては、か細い望みに縋り続けた。
自分から名乗り出て、親交を再開させる勇気はない。なぜなら成長したレネは、ますます自信をなくしていたからだ。
魔道具師としてはそこそこ成功していたが、華々しい業績があるわけでもない。しかも卑猥な魔道具を作るという裏の仕事を持っているため、何となく後ろめたい気持ちがあった。もちろんレネは法を犯すようなことは一切していないし、裏の魔道具作りは人々の需要を満たす、この世に必要な仕事だ。しかし表通りで誇らしげに宣言できるかといえば、とても無理な話だ。
後ろめたい気持ちとなる理由は、他にもある。
貴族相手に特殊な性的魔道具の受注を始めたレネは、求められれば魔道具の実践を客の目の前で披露した。もちろん、自分の体を使って。時には、そのままセックスを求められることもあり、それに応じることすらあった。
最初は性的なサービスを提供することに躊躇いがあったレネだったが、そのうちどうでもよくなってきた。グレイが手に入らないなら、自分の貞操などもう、守る意味もない。そんな風に自暴自棄になってきたレネは、愛のない人生を金で埋めるように、貴族相手に特別な魔道具を売り続けた。レネの魔道具を求める貴族たちは、自分の性癖が世に漏れないよう、いつもレネに多額の報酬を与えてくれた。
そうして仕事を続けるうちに、レネは裏でかなり有名となり、その腕前と口の堅さ、誠実な仕事ぶりは貴族の間で評判となっていた。
しかしレネの求めていた名声は、もちろんそんな類いのものではない。
彼は金ばかりが増えてゆく虚しい人生を送っていた。
そんなある日、転機が訪れた。
イアンが病に伏し、莫大な医療費が必要となったのである。
それを知ったレネは、このチャンスに飛びついた。
幸い、使う当てのない貯蓄は十分にある。
この時レネは生まれて初めて、魔道具師になって良かったと思った。
そしてすぐさま計画を立て、グレイに近づくことにした。
まずレネは自分の顧客の一人に相談を持ち掛けた。
その顧客とは、グレイとも面識のある、ジェフという老人である。
ジェフとは、レネの表の顔――普通の魔道具師としての仕事を介して、知り合った。彼は賢く温和な老人で、彼の配偶者もまた、人好きのする気持ちの良い人間だ。
ジェフは有名な学者で、庶民にしては立派な屋敷を構えている。その屋敷には広い庭があり、ジェフは数年前から、グレイに庭の手入れを任せていた。彼ほど仲介役にはぴったりな人物は他にいない。
もちろんレネは、契約結婚については一切ジェフに話していない。
レネは正直に、以前からグレイに片想いをしているから、さりげなく紹介してくれないかと、頼み込んだのだ。いささか盛ったものの、事実を混ぜた相談事はジェフとその配偶者の興味を惹き、二人はすぐに乗ってくれた。
そうして首尾よくグレイと知り合ったレネは、さっそく後日、契約を持ち掛けた。
その話にグレイが飛びつくのはわかっていた。
レネが提示した金があれば、イアンを救うことが出来るのだから。
そうして相対したグレイは、今なお一途に、イアンを想っている。
何度目だろうか、それを知るのは。
敵わぬ恋心を、突きつけられるのは。
レネの恋情は苦しみの中で彷徨い、出口を求めて喘いでいた。
――グレイの心が手に入らないなら、せめて体だけでも。
体の繋がりがあれば、少しはこの恋情を慰め、鎮めることができるだろう――たとえひとときの間、わずかな期間でも。
恋い焦がれ、決して満たされない餓えの中でもがき苦しむレネは、そうして、グレイに契約結婚を持ち掛けたのだ。
しかしレネは思い知ることになる。
グレイに抱かれて束の間の幸福感を味わえば、更に彼への恋情が深まるということを。
それにより、満たされない心の餓えに一層苦しむことを。
やっと手に入れた想い人との結婚生活は、歓喜と苦悩の狭間で揺れるレネを、苛んでいった。
自分から名乗り出て、親交を再開させる勇気はない。なぜなら成長したレネは、ますます自信をなくしていたからだ。
魔道具師としてはそこそこ成功していたが、華々しい業績があるわけでもない。しかも卑猥な魔道具を作るという裏の仕事を持っているため、何となく後ろめたい気持ちがあった。もちろんレネは法を犯すようなことは一切していないし、裏の魔道具作りは人々の需要を満たす、この世に必要な仕事だ。しかし表通りで誇らしげに宣言できるかといえば、とても無理な話だ。
後ろめたい気持ちとなる理由は、他にもある。
貴族相手に特殊な性的魔道具の受注を始めたレネは、求められれば魔道具の実践を客の目の前で披露した。もちろん、自分の体を使って。時には、そのままセックスを求められることもあり、それに応じることすらあった。
最初は性的なサービスを提供することに躊躇いがあったレネだったが、そのうちどうでもよくなってきた。グレイが手に入らないなら、自分の貞操などもう、守る意味もない。そんな風に自暴自棄になってきたレネは、愛のない人生を金で埋めるように、貴族相手に特別な魔道具を売り続けた。レネの魔道具を求める貴族たちは、自分の性癖が世に漏れないよう、いつもレネに多額の報酬を与えてくれた。
そうして仕事を続けるうちに、レネは裏でかなり有名となり、その腕前と口の堅さ、誠実な仕事ぶりは貴族の間で評判となっていた。
しかしレネの求めていた名声は、もちろんそんな類いのものではない。
彼は金ばかりが増えてゆく虚しい人生を送っていた。
そんなある日、転機が訪れた。
イアンが病に伏し、莫大な医療費が必要となったのである。
それを知ったレネは、このチャンスに飛びついた。
幸い、使う当てのない貯蓄は十分にある。
この時レネは生まれて初めて、魔道具師になって良かったと思った。
そしてすぐさま計画を立て、グレイに近づくことにした。
まずレネは自分の顧客の一人に相談を持ち掛けた。
その顧客とは、グレイとも面識のある、ジェフという老人である。
ジェフとは、レネの表の顔――普通の魔道具師としての仕事を介して、知り合った。彼は賢く温和な老人で、彼の配偶者もまた、人好きのする気持ちの良い人間だ。
ジェフは有名な学者で、庶民にしては立派な屋敷を構えている。その屋敷には広い庭があり、ジェフは数年前から、グレイに庭の手入れを任せていた。彼ほど仲介役にはぴったりな人物は他にいない。
もちろんレネは、契約結婚については一切ジェフに話していない。
レネは正直に、以前からグレイに片想いをしているから、さりげなく紹介してくれないかと、頼み込んだのだ。いささか盛ったものの、事実を混ぜた相談事はジェフとその配偶者の興味を惹き、二人はすぐに乗ってくれた。
そうして首尾よくグレイと知り合ったレネは、さっそく後日、契約を持ち掛けた。
その話にグレイが飛びつくのはわかっていた。
レネが提示した金があれば、イアンを救うことが出来るのだから。
そうして相対したグレイは、今なお一途に、イアンを想っている。
何度目だろうか、それを知るのは。
敵わぬ恋心を、突きつけられるのは。
レネの恋情は苦しみの中で彷徨い、出口を求めて喘いでいた。
――グレイの心が手に入らないなら、せめて体だけでも。
体の繋がりがあれば、少しはこの恋情を慰め、鎮めることができるだろう――たとえひとときの間、わずかな期間でも。
恋い焦がれ、決して満たされない餓えの中でもがき苦しむレネは、そうして、グレイに契約結婚を持ち掛けたのだ。
しかしレネは思い知ることになる。
グレイに抱かれて束の間の幸福感を味わえば、更に彼への恋情が深まるということを。
それにより、満たされない心の餓えに一層苦しむことを。
やっと手に入れた想い人との結婚生活は、歓喜と苦悩の狭間で揺れるレネを、苛んでいった。
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