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沈丁花禄郎でございます!
沈丁花禄郎でございます!
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episode 1 「人との出会いはとてつもなく大きい」
町内会の催し物イベントが町内の文化会館で行われていた。
穏やかで暖かい春の一日だった。
森絵梨奈と武田真美は、なんとなく暇だったので、二人で文化会館を訪れていた。
二人は名門大学に通うお嬢様で、20歳の大学2年生だった。
開始一時間が過ぎていた。一組目は男子中学生による「この町の歴史と文化」というタイトルで、ざっくり言うと研究発表みたいなものだった。
二組目は、男子大学生二人による、「地球温暖化の問題点と対策」という題名のトーク
ディスカッションだった。
会場は盛大な拍手で包まれ、子供からお年寄りまでみな感心した様子で、楽しそうだった。
そして、司会の男性が「次は、町内会有志の町保存会による演劇で『北関東殺人連鎖 ~巧妙なトリックを操る美女~』です! 大きな拍手でお迎えください!」と紹介した。
会場は大きな拍手に包まれた。
すると、緊張した面持ちで、屋台のラーメン屋を営んでいる・沈丁花禄郎、スナックを切り盛りしている・ライママ、謎の中年男性・竜次、バントマンを生業にするミュージシャン・掟カローラ、法律事務所でパラリーガルとして働きながら司法試験合格を夢見る・坂本ちゃんの五人が舞台に登場した。
すると、いきなり演劇が始まった。沈丁花扮する刑事が「こ、こ、これは
殺しですね。し、しかも、えー、えー、こ、こ、巧妙な手口ですよ」とセリフを言った。その顔には尋常じゃないアブラ汗がしたたり、顔面も蒼白になっていて、手足も震えていた。
極度の緊張からくるものだった。
武田真美は、ただならぬ雰囲気を察して、となりでぐーすか居眠りをしていた森絵梨奈に「ごめん、ちょっと起きて!早く!」と絵梨奈を起こした。「ねえねえ、なんか変な人たちが出てきたよ!見てみて!」と絵梨奈に舞台を見るよう促した。
なぜだか、舞台上の五人全員極度の緊張に見舞われていた。
絵梨奈はその光景を見て、ふと「じゃあ、なんで人前で演劇なんてやろうとしたんだろう…」と不思議そうな顔で見つめていた。
いよいよクライマックス。沈丁花扮するベストジーニスト刑事が殺人事件の犯人を暴くシーンだった。
「わ、私は騙されない。犯人は佐藤さん。あなたですね?」と、キメたつもりだった。続けてトリックを暴くシーン。
「あ、あなたは、鈴木さんを殺した後、各駅停車ではなく通勤快速を使った!なのでアリバイは成立しない!」と棒読みでキメた。キメたタイミングで沈丁花は客席に顔を向けた。
会場は静寂に包まれたまま特に変化はなかった。
五人全員、終始棒読みだった。
真美と絵梨奈は舞台から目が離せない状態になり、何故だか一ミリも動けなくなっていた。
絵梨奈は無表情で呟いた。「北関東ってどこに出てくるんだろう…。殺人連鎖って、一人しか死んでないし…」
真美も「トリックも巧妙とかなんだとか言う前に意味不明だし、最後まで美女も出てこなかったね…。」と不思議そうな表情で小さく呟いた。
舞台を見つめるふたりの背中を小学生が後ろのほうから見ていた。その小学生の頭の中に哀しい音楽が流れたのだった。
演劇が終わり、町保存会のメンバーは全員で横一列になり、手を組んでバンザイをした後、客席に向かって深々とお辞儀をした。演劇の本場ニューヨークの儀式を模したものだった。
みなやりきった表情で清々しい表情をしていた。
文化会館のロビーには、「祝・町保存会のみなさん江」という文字が踊った小さなお花がそっと飾られていた。
差出人の名前はなかった。
それを目にした絵梨奈と真美の頭の中に哀しい音楽が流れた。
つづく
町内会の催し物イベントが町内の文化会館で行われていた。
穏やかで暖かい春の一日だった。
森絵梨奈と武田真美は、なんとなく暇だったので、二人で文化会館を訪れていた。
二人は名門大学に通うお嬢様で、20歳の大学2年生だった。
開始一時間が過ぎていた。一組目は男子中学生による「この町の歴史と文化」というタイトルで、ざっくり言うと研究発表みたいなものだった。
二組目は、男子大学生二人による、「地球温暖化の問題点と対策」という題名のトーク
ディスカッションだった。
会場は盛大な拍手で包まれ、子供からお年寄りまでみな感心した様子で、楽しそうだった。
そして、司会の男性が「次は、町内会有志の町保存会による演劇で『北関東殺人連鎖 ~巧妙なトリックを操る美女~』です! 大きな拍手でお迎えください!」と紹介した。
会場は大きな拍手に包まれた。
すると、緊張した面持ちで、屋台のラーメン屋を営んでいる・沈丁花禄郎、スナックを切り盛りしている・ライママ、謎の中年男性・竜次、バントマンを生業にするミュージシャン・掟カローラ、法律事務所でパラリーガルとして働きながら司法試験合格を夢見る・坂本ちゃんの五人が舞台に登場した。
すると、いきなり演劇が始まった。沈丁花扮する刑事が「こ、こ、これは
殺しですね。し、しかも、えー、えー、こ、こ、巧妙な手口ですよ」とセリフを言った。その顔には尋常じゃないアブラ汗がしたたり、顔面も蒼白になっていて、手足も震えていた。
極度の緊張からくるものだった。
武田真美は、ただならぬ雰囲気を察して、となりでぐーすか居眠りをしていた森絵梨奈に「ごめん、ちょっと起きて!早く!」と絵梨奈を起こした。「ねえねえ、なんか変な人たちが出てきたよ!見てみて!」と絵梨奈に舞台を見るよう促した。
なぜだか、舞台上の五人全員極度の緊張に見舞われていた。
絵梨奈はその光景を見て、ふと「じゃあ、なんで人前で演劇なんてやろうとしたんだろう…」と不思議そうな顔で見つめていた。
いよいよクライマックス。沈丁花扮するベストジーニスト刑事が殺人事件の犯人を暴くシーンだった。
「わ、私は騙されない。犯人は佐藤さん。あなたですね?」と、キメたつもりだった。続けてトリックを暴くシーン。
「あ、あなたは、鈴木さんを殺した後、各駅停車ではなく通勤快速を使った!なのでアリバイは成立しない!」と棒読みでキメた。キメたタイミングで沈丁花は客席に顔を向けた。
会場は静寂に包まれたまま特に変化はなかった。
五人全員、終始棒読みだった。
真美と絵梨奈は舞台から目が離せない状態になり、何故だか一ミリも動けなくなっていた。
絵梨奈は無表情で呟いた。「北関東ってどこに出てくるんだろう…。殺人連鎖って、一人しか死んでないし…」
真美も「トリックも巧妙とかなんだとか言う前に意味不明だし、最後まで美女も出てこなかったね…。」と不思議そうな表情で小さく呟いた。
舞台を見つめるふたりの背中を小学生が後ろのほうから見ていた。その小学生の頭の中に哀しい音楽が流れたのだった。
演劇が終わり、町保存会のメンバーは全員で横一列になり、手を組んでバンザイをした後、客席に向かって深々とお辞儀をした。演劇の本場ニューヨークの儀式を模したものだった。
みなやりきった表情で清々しい表情をしていた。
文化会館のロビーには、「祝・町保存会のみなさん江」という文字が踊った小さなお花がそっと飾られていた。
差出人の名前はなかった。
それを目にした絵梨奈と真美の頭の中に哀しい音楽が流れた。
つづく
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