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赤、緑、茶色、紫
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この世界は持ちつ持たれつ、一人じゃないよ、皆がいるさ。
緑と、茶色と、赤が雑談中だ。
『あらやだ、お祝いでしょ?じゃあ、やっぱり、色は赤にしなきゃ!』
魅惑の赤は胸の谷間がよく見えるイブニングドレス。
『ナンセンス!世界の創設1万3千年の記念日に、何で魅了の赤をあえて使うんだよ?ここは、安寧の緑だろ?』
信頼の緑は鼻で笑う。
『まぁまぁお二人共、落ち着いて、落ち着いて。』
熟考の茶色は困り顔で二人を宥めた。
『あらやだ、1万年記念日には緑だったじゃない?それ程間隔が無くって、創設者様に手を抜いたなんて思われたら、私悔しくって貴方に何かしちゃいそうよ!』
『マジかよ?変な事言ってくれるなよ!いつにも増して攻撃的なの止めてくれないか?ただでさえ予定日まで時間が無いのに、変な事でイライラさせないでくれ!』
『まぁまぁ‼‼』
...…そんなこんなで、一万三千年記念日、開催です‼
なんとめでたい事でしょう!
この色の世界のお祭りです。
あちらこちらで、『一万三千年記念日おでとう』というかけ声が聞こえます。
祭りのモチーフは紫色!
数ある色の中から、今回は紫色が選ばれたのでございます。
『何で紫「何で紫なんだよ!」なのよ!』
『はて、何ででしたかね。』
しれっと答えた紫色は、流れる紫色の髪を風になびかせ、流し目でチラリと茶色を見やる。
二人の間で、様々なやり取りがなされたのは、説明されなくても分かった。
当日を迎えても、再び起こりそうだった応酬を止めるべく、紫色はきつい口調ではっきりと言い放つ。
『この日くらいは喧嘩などせず、多いに歌って、飲んで、踊って、楽しんでください!』
キラリと光る知的な目は、小言など許すべくも無い。
項垂れる赤と緑を尻目に、紫色は青色がいないかと周囲をぐるりと見回した。
その青はというと、たまたま偶然登った木の上から、これまた偶々この木の元で出会いを喜び合う深淵と無色透明の仲のいい様子に、場の空気を壊しちゃまずいと、中々降りられなくなっていた。
各々の様子を近づくに連れ次第に理解したこの状況に、紫色はため息をつく。
『やあ、紫色。調子はどうだい?久しぶりだね。余りに近くに住んでいるからら、逆に中々会わないね。』
深淵が目尻を下げて、遠くの方からやって来た紫色に声をかけた。
『えぇ、旧知の仲にもなんとやら、でしょうか………寧ろ、何故かあなた方の事は手に取るように分かるので、確認などせずとも良いかも知れませんが……』
話を簡単に切り上げると、「所で」と話を変えた。
『お二人共、気づいて無いかもしれませんが、木の上に"間抜け者"がおりますよ。』
みんな揃って目線を上げると、そこにはごまかし笑いで、手を軽く振る青がいた。
『わぁ‼』
『なんともまぁ、見られていたか。』
無色透明は恥じらいの声を、深淵は感嘆の声を上げた。
『この深淵が気づかないとは、やはり、我等は近しい一族だなぁ』
と、見当違いな事をの賜う。
ただ、一方で、深淵の言うことも事実。
色の持つ気配は、その色に近い程、気が付かない。
たまたま偶然見つけたこの森は、先日桃色が大作だと言って、シャボンの広告で皆に宣伝して回っていた。
「なんかねぇ、もう、私のしたい事全て出し尽くした感じの作品!」
とか、何とか……
確かに素晴らしい森である。この日ばかりは創設者も大目に見てくれるだろう。
感謝し、感謝され、何者からも受け入れられる日なのだから。
『紫色の私としては、あなた達の幸せ、こそが一番です。それでこの色の世界が無に帰るのなら、それもまた、創造主の意思。あなた達が悩む心配のないものです。私達は長年の調べで、創造主があなた達を作った事を知っています。』
透明も深淵も、どちらも驚いたようだった。
『どうしてそれを?』
動揺して透明が震える声でそう言った。
『やはりそうでしたか。少し鎌をかけましたよ。証拠らしい証拠はなく、全ての状況を踏まえた憶測でしたから。』
透明が息を呑む。
『私が気づき、調べ、皆にも憶測を伝えてあります。皆、この意見に賛成です。そうでしょう?皆さん?』
皆がいつの間にか集まっていた。
『驚いたでしょう?紫の特徴は気高さだけではありませんよ。"縁"が私の存在意義。誰にも話したことはありませんでしたが、はぁ、スッキリした。さぁ、お祝いを続けましょう!』
誰もが特徴、特技を持っているのは素敵なことで、それがあれば、誰かが誰かの助けになる、そんな素晴らしい事がいつの間にか出来てしまう。
宴は続くよ、夜が開けるまで。まだ見ぬ未来との縁を繋げて。
緑と、茶色と、赤が雑談中だ。
『あらやだ、お祝いでしょ?じゃあ、やっぱり、色は赤にしなきゃ!』
魅惑の赤は胸の谷間がよく見えるイブニングドレス。
『ナンセンス!世界の創設1万3千年の記念日に、何で魅了の赤をあえて使うんだよ?ここは、安寧の緑だろ?』
信頼の緑は鼻で笑う。
『まぁまぁお二人共、落ち着いて、落ち着いて。』
熟考の茶色は困り顔で二人を宥めた。
『あらやだ、1万年記念日には緑だったじゃない?それ程間隔が無くって、創設者様に手を抜いたなんて思われたら、私悔しくって貴方に何かしちゃいそうよ!』
『マジかよ?変な事言ってくれるなよ!いつにも増して攻撃的なの止めてくれないか?ただでさえ予定日まで時間が無いのに、変な事でイライラさせないでくれ!』
『まぁまぁ‼‼』
...…そんなこんなで、一万三千年記念日、開催です‼
なんとめでたい事でしょう!
この色の世界のお祭りです。
あちらこちらで、『一万三千年記念日おでとう』というかけ声が聞こえます。
祭りのモチーフは紫色!
数ある色の中から、今回は紫色が選ばれたのでございます。
『何で紫「何で紫なんだよ!」なのよ!』
『はて、何ででしたかね。』
しれっと答えた紫色は、流れる紫色の髪を風になびかせ、流し目でチラリと茶色を見やる。
二人の間で、様々なやり取りがなされたのは、説明されなくても分かった。
当日を迎えても、再び起こりそうだった応酬を止めるべく、紫色はきつい口調ではっきりと言い放つ。
『この日くらいは喧嘩などせず、多いに歌って、飲んで、踊って、楽しんでください!』
キラリと光る知的な目は、小言など許すべくも無い。
項垂れる赤と緑を尻目に、紫色は青色がいないかと周囲をぐるりと見回した。
その青はというと、たまたま偶然登った木の上から、これまた偶々この木の元で出会いを喜び合う深淵と無色透明の仲のいい様子に、場の空気を壊しちゃまずいと、中々降りられなくなっていた。
各々の様子を近づくに連れ次第に理解したこの状況に、紫色はため息をつく。
『やあ、紫色。調子はどうだい?久しぶりだね。余りに近くに住んでいるからら、逆に中々会わないね。』
深淵が目尻を下げて、遠くの方からやって来た紫色に声をかけた。
『えぇ、旧知の仲にもなんとやら、でしょうか………寧ろ、何故かあなた方の事は手に取るように分かるので、確認などせずとも良いかも知れませんが……』
話を簡単に切り上げると、「所で」と話を変えた。
『お二人共、気づいて無いかもしれませんが、木の上に"間抜け者"がおりますよ。』
みんな揃って目線を上げると、そこにはごまかし笑いで、手を軽く振る青がいた。
『わぁ‼』
『なんともまぁ、見られていたか。』
無色透明は恥じらいの声を、深淵は感嘆の声を上げた。
『この深淵が気づかないとは、やはり、我等は近しい一族だなぁ』
と、見当違いな事をの賜う。
ただ、一方で、深淵の言うことも事実。
色の持つ気配は、その色に近い程、気が付かない。
たまたま偶然見つけたこの森は、先日桃色が大作だと言って、シャボンの広告で皆に宣伝して回っていた。
「なんかねぇ、もう、私のしたい事全て出し尽くした感じの作品!」
とか、何とか……
確かに素晴らしい森である。この日ばかりは創設者も大目に見てくれるだろう。
感謝し、感謝され、何者からも受け入れられる日なのだから。
『紫色の私としては、あなた達の幸せ、こそが一番です。それでこの色の世界が無に帰るのなら、それもまた、創造主の意思。あなた達が悩む心配のないものです。私達は長年の調べで、創造主があなた達を作った事を知っています。』
透明も深淵も、どちらも驚いたようだった。
『どうしてそれを?』
動揺して透明が震える声でそう言った。
『やはりそうでしたか。少し鎌をかけましたよ。証拠らしい証拠はなく、全ての状況を踏まえた憶測でしたから。』
透明が息を呑む。
『私が気づき、調べ、皆にも憶測を伝えてあります。皆、この意見に賛成です。そうでしょう?皆さん?』
皆がいつの間にか集まっていた。
『驚いたでしょう?紫の特徴は気高さだけではありませんよ。"縁"が私の存在意義。誰にも話したことはありませんでしたが、はぁ、スッキリした。さぁ、お祝いを続けましょう!』
誰もが特徴、特技を持っているのは素敵なことで、それがあれば、誰かが誰かの助けになる、そんな素晴らしい事がいつの間にか出来てしまう。
宴は続くよ、夜が開けるまで。まだ見ぬ未来との縁を繋げて。
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