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お店の裏側
【夜】知らなかったこと@疑問
しおりを挟む「……知らねぇ闇に、触れることになるぞ?」
「あ……」
アヤは少し目を細めると、唇をキュッと嚙んだ。店長の目は笑っていない。恐らく、これは本当の話だ。
“……ボク達だって、闇、だよね……?”
店長の優しさかもしれない。そう思いながらも、アヤはウミへの心配と、未知の世界への好奇心に勝てなかった。
「お、教えてください……」
「……分かったよ。……ちょっと、こっちに来い。今日はキャストも黒服も多い。俺達が多少抜けても問題ねぇ。お前はキープだしな」
「は、はい!」
アヤは店長に連れられて、ロッカーへと向かった。そして、戻ってきたドアから一番遠い椅子へと二人で座る。
「……さっきの続きだがな。そっちはな、全然キャストの扱いが違うんだわ」
「扱い、が? ですか?」
「あぁ。……次の質問だ。【調教部屋】は知ってるな?」
「あ……はい。トラブルを起こしたり、問題がある子が入る部屋だって……」
「強ち間違ってねぇ。さて、ここで問題です。……その、調教部屋に入れられた子は、どうなるでしょうか?」
「え……えっと、その……何か、罰を受けるんじゃ……」
「半分正解ってとこだな」
「……違うんですか?」
「一つは、こっちの店、子猫のキャストが入ることはまずない。お前らには言い方が悪いかもしれないが、トラブルを起こさないように躾けてるつもりだからな」
「……」
アヤは思わず手のひらを握った。店長の言う通り、店に出る上での指導は厳しく受けているし、お客様の前に立てば相手がどんな人でも粗相のないように過ごしているつもりだ。商品だからなのか、殴られることはほぼないし、傷をつけられることもない。
短い新人期間が終われば、何人もの黒服を相手にシミュレーションを何度も行い、様々な状況に対応できるようにまるで調教にも似た教育を受けている……と言っても確かに過言ではないだろう。
「確かに、あの部屋に入ったやつは罰を受ける。そこは正解だ。残りの半分は……普通解けんわなぁ……」
はぁ、と溜息を吐いて、店長はアヤの頭をクシャクシャと撫でた。
「……罰を受けた上で、その系列店にぶち込まれるんだ」
「……え?」
店長はグッと低く重たい声でアヤに言い放った。
「元々は全くの素人だろうし、そんな耐性もないだろうけどな。ま、地獄だろうよ」
「……そう、なんですか」
「なんせ、調教部屋出身だからな。扱いなんてたかが知れてる。ルールなんざ、『壊さなきゃオーケー』ぐらいなもんよ」
「壊す……って……」
「長いこと店に出せないのは困る。あっちは昼も夜も客は変わらねぇ。相手してつまらねぇのも困る。こっちのあぶねぇ欲望は受け止めて欲しい。反抗的すぎるのも嫌だが、従順なのも面白みがねぇ。……なんて、注文が多いんだよ」
「……なんて言ったらいいか……」
「なんのオブラートもなくぶちまけちまえば、『死んでなくて欠損もなければ、酷く扱っても良いし、精神攻撃を与えても良い』なんだよな。その中なら、プレイの制限もない。こっちじゃ禁止されている、『調教、ハードSM、スカトロ、拡張、リョナ』なんてぶっ壊れ一直線なのも問題なしってこと」
知らない世界に、背筋がゾクリとした。
「で、でも店長……なんで、なんでそれがトリカイ? さんと関係あるんですか……」
「……じゃあ、ここでもう一つ問題だ。あの調教部屋には、どんな人が入るでしょうか?」
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