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一人から二人へ
次の撮影へ_2
しおりを挟む「忙しいのかなぁ。……ダメダメ、あんまり気にしたら。そればっかりになっちゃうんだから頭の中。考えないようにして、もう眠っちゃおう。うん、そうしよう。明日も休みだし、また動画撮らなきゃいけないし。ね、ね!」
自分に言い聞かせるようにして、しえるは大きな声でそう言うと、ベッドに入って丸まった。
「……おやすみなさい」
癖のようにそう呟くと、あっという間に眠気に襲われ夢の中奥深くへと誘われていった。
――次の日――。
「……怠さが抜けない……」
疲れていたのか、一度も起きることなく迎えたのは、朝ではなく昼過ぎの十四時だった。明らかに寝すぎた身体は、よく眠れたを通り越して、頭が重く身体も痛い。
「あーもう。朝起きて、撮影の準備して……。今頃はとっくに撮り終えてるはずだったのに……!」
やってしまった、という思いを抱えながら、過ぎてしまった時間を取り戻すべく、急いで今日の撮影の準備を始めた。
「……さて。メイク、大丈夫かな……。クマとかできてないのは良かったけど……」
こんなに眠ってしまったのはいつ振りだろうか。昔過ぎてよく覚えていない。沢山寝ていた分、寝返りの量も多かったのか、髪の毛の寝癖が凄いことになっている。ウィッグを被るからセーフだが、思わぬ弊害が起こっていた。
――だが、撮影に支障はない。
「取り敢えず、なんとかなりますように……」
こんな寝起きでえっちな動画を撮る方がおかしいのかもしれない。だが、時間が無限にあるわけではないし、やはりある程度のスパンで動画をアップしたり、撮影できる間に撮り溜めておいて、撮影できない時のバックアップにしていきたいのも事実だ。そのためには、撮れる時に撮り、ネタを用意できる時に用意しておく。これに尽きる。
いつ何が起こるかわからない。不要になれば消せば良いだけのこと。巻き戻すことも、先取りすることもできない時間は、こうやって溜めておくことならできるのだから。過去の自分から、未来の自分へ。
「頑張りますよぉ。自分の満足のために!」
――目を閉じて、深呼吸をする。
カメラの位置は問題無し。アイロンがけした撮影用の制服は、パリッと糊付けが残っており、プリーツスカートのヒダも綺麗に出ている。前に使ってから時間も経っておらず、体型にもマッチしている。
専用のミストとブラシを使って、丁寧に丁寧に梳かしたウィッグは、艶やかで発色の良い色を放ち、可愛さを主張している。固定も上手くいっていて、痛くないし位置もおかしくない。
心配だったメイクも、ノリはいつも通りで安心した。マスクをして目元だけになっても、私は私だとわかる。
“さぁ、五本目の撮影。――始めましょう!”
気合を入れて目を開く。
「あー、あーあー」
喉の調子も悪くない。声はちゃんと出ている。
“私はしえる。――私は、しえる――”
自分であって、自分で無い時間が始まるのだ。油断はできないし、妥協もできない。
スマホのカメラを覗き込み、自分がどう映っているのか最終確認をすると、撮影開始のボタンを押した。
「……みなさん、こんにちは! しえるです! いつも、動画見てくれてありがと~。初めましての方も、そうでない方も、六回目の動画、見てくれて嬉しいです!」
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