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僻地の旅編
第19話 絶対貫通と絶対防御
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「絶対貫通(ペネトレーション)!」
繰り返されるティアマトの攻撃魔法に、サラは魔法で防御壁を展開した……が、魔力量が違い過ぎた。ゼノビアの盾と同じく、軽く防御壁は貫通されてしまいサラも決して軽くはないダメージを受けた。
その後もティアマトの攻撃は止まらない。唯一動けるローランに向かって、連続して攻撃魔法が放たれる。ローランは上下左右に動いてそれをかわす。防御する方法が無いのだから避けるしかない。単発で発動間隔が空くのであれば、避けることもある程度は可能だろう。しかしティアマトの攻撃魔法の発動間隔はどんどん短くなって行く。遂にはローランの脚に命中して、彼の動きは止まってしまった。
一拍置いてティアマトの放った攻撃魔法がローランに命中すると思ったその瞬間…気が付けばクニオがローランの前に立っていた。すべての防具を貫通すると思われたその攻撃魔法は、クニオの構えた盾を貫通することは無かった。クニオの盾は光輝き、その大きさ以上の広範囲に結界を展開している。
「なんだその盾は?!」
ティアマトは動揺している。彼女は今までこの魔法を盾で防がれたことは無かった。
アマリアの盾はクニオとは相性が良かった。魔力をほとんど持たないクニオでも、この盾は周辺の魔素を取り込んで、クニオのプランニングのスキルと組み合わせて結界を強化したり拡張することもできた。結界は普通の防御魔法や、物理的な盾とでは仕組みが全く違う。結界を使って防御するアマリアの盾が、伝説扱いになるのも無理はない。
「我々も攻撃対象というならば放ってはおけませんな」
グレゴリーはそう言いながら、数歩前に出た。首を横に二三度曲げて右腕を肩からぐるぐるとまわした後、急に速度をあげてティアマトに駆け寄る。振りかぶった彼の右こぶしは金色に光輝き、ティアマトに殴り掛かった。
「絶対防御(アイソレーション)!!」
ティアマトの前には先ほどと同じく防御用魔法陣が展開された。魔力で輝くグレゴリーのこぶしはこの防御魔法で防げるはずだった。しかし彼女の想像と違って、こぶしは魔法陣を貫いてティアマトの腹部にヒットした。たまらず彼女は地面にうずくまる。打撃の威力で息もできない。
「魔力を込めた打撃だと思われたでしょうな。攻撃には一切関係ないところで金色に輝かせてみただけです。今のは単なる拙僧のパンチですぞ」
そう言ってグレゴリーはにやりと笑う。
「絶対防御(アイソレーション)は単体では物理攻撃か魔法攻撃のどちらかにしか対応できないからね。対魔法の防御では、普通のパンチは防げない。息もできないその状態じゃ防御魔法は使えないよね」
そう言ってコウは両手を広げ空気を呼び込む。彼女の周辺には円形のゆがんだ空間がいくつも現れる。いつぞやのワームの時とは違って小ぶりだが、あの切れ味であれば魔族と言えども肉片に変わってしまう事は確実だろう。コウの手の動きに呼応して、空気の円盤はティアマトに四方八方から襲い掛かった。
…しかし次の瞬間ティアマトのまわりには半球状の結界が現れた。円盤は結界にぶつかってティアマトへと届くことは無かった。
「なんで邪魔するのさ?!」
コウはクニオに文句を言う。結界を作ったのはティアマトの傍らにいるクニオだった。ティアマトから漏れ出た、周辺の濃い魔素を利用してアマリアの盾の防御結界を、半球状に拡張したのだ。
「もういいでしょうティアマトさんも。確か魔族は自分より力の強いものには従うんですよね」
そういってクニオはティアマトに向かって微笑みかけた。
「いや、強いのはクニオじゃないだろう」
コウは小声で突っ込んだ。
夜は宿屋の食堂で日本酒で乾杯した。コルビーだけは得体のしれない飲み物だった。米の発酵飲料らしい。
「ペドロが死んでなくて良かったよ。回復魔法も蘇生魔法も使えるから、アイテムを無駄使いせずに済んだ」
コウがそういうと
「今日の酒代ぐらいは軽く浮きますな」
と、グレゴリーはいつものようにガハハと笑った。
「ティアマトはケチらないでアイテムで蘇生するつもりだったんだからね。流石にペドロには頼めないし」
コウはそう言ってティアマトとコルビーの方を見た。コルビーは笑っている。
今日の飲み会はにぎやかだ、『キュリオシティーズ』に『三本槍』、それに将来の魔王と七大魔将軍という豪華な顔ぶれだ。しかし『三本槍』のメンバーは日中の戦いの余韻からか口数が少ない。
ティアマトも似たようなものだった。
「しかしコルビー君とは久しぶりだよね。何百年かぶりだ。未だに魔王として転生し続けているんだろう?大変だよなー」
そういうコウにティアマトは
「人前ではコルとティアーでお願いします」とやっと口を開いた。
「悪い悪い」
コウは言葉だけで、反省している様には見えない。
「しかし本当にこの日本酒ってやつはおいしいね。」
どうやらコウに日本酒は気に入ってもらえたようだ。
「この酒は温度を変えてもいけるというお話でしたな」
グレゴリーはジョッキでがぶ飲みしている。
「日本酒は一気に飲まないで、ちびちびやるのがいいんですよ。温めて寒いときに鍋物と一緒に飲むと最高です」
クニオの説明にはコウとグレゴリーだけでなく、ティアマトも食いついた。
「それは興味深い。ワインを温めて飲もうとは思わないが、この日本酒というものは確かに温めてもいいような気がする。熱いつまみに熱い酒…それは是非試してみなければ」
やはり彼女はなかなかの酒好きと見た。
繰り返されるティアマトの攻撃魔法に、サラは魔法で防御壁を展開した……が、魔力量が違い過ぎた。ゼノビアの盾と同じく、軽く防御壁は貫通されてしまいサラも決して軽くはないダメージを受けた。
その後もティアマトの攻撃は止まらない。唯一動けるローランに向かって、連続して攻撃魔法が放たれる。ローランは上下左右に動いてそれをかわす。防御する方法が無いのだから避けるしかない。単発で発動間隔が空くのであれば、避けることもある程度は可能だろう。しかしティアマトの攻撃魔法の発動間隔はどんどん短くなって行く。遂にはローランの脚に命中して、彼の動きは止まってしまった。
一拍置いてティアマトの放った攻撃魔法がローランに命中すると思ったその瞬間…気が付けばクニオがローランの前に立っていた。すべての防具を貫通すると思われたその攻撃魔法は、クニオの構えた盾を貫通することは無かった。クニオの盾は光輝き、その大きさ以上の広範囲に結界を展開している。
「なんだその盾は?!」
ティアマトは動揺している。彼女は今までこの魔法を盾で防がれたことは無かった。
アマリアの盾はクニオとは相性が良かった。魔力をほとんど持たないクニオでも、この盾は周辺の魔素を取り込んで、クニオのプランニングのスキルと組み合わせて結界を強化したり拡張することもできた。結界は普通の防御魔法や、物理的な盾とでは仕組みが全く違う。結界を使って防御するアマリアの盾が、伝説扱いになるのも無理はない。
「我々も攻撃対象というならば放ってはおけませんな」
グレゴリーはそう言いながら、数歩前に出た。首を横に二三度曲げて右腕を肩からぐるぐるとまわした後、急に速度をあげてティアマトに駆け寄る。振りかぶった彼の右こぶしは金色に光輝き、ティアマトに殴り掛かった。
「絶対防御(アイソレーション)!!」
ティアマトの前には先ほどと同じく防御用魔法陣が展開された。魔力で輝くグレゴリーのこぶしはこの防御魔法で防げるはずだった。しかし彼女の想像と違って、こぶしは魔法陣を貫いてティアマトの腹部にヒットした。たまらず彼女は地面にうずくまる。打撃の威力で息もできない。
「魔力を込めた打撃だと思われたでしょうな。攻撃には一切関係ないところで金色に輝かせてみただけです。今のは単なる拙僧のパンチですぞ」
そう言ってグレゴリーはにやりと笑う。
「絶対防御(アイソレーション)は単体では物理攻撃か魔法攻撃のどちらかにしか対応できないからね。対魔法の防御では、普通のパンチは防げない。息もできないその状態じゃ防御魔法は使えないよね」
そう言ってコウは両手を広げ空気を呼び込む。彼女の周辺には円形のゆがんだ空間がいくつも現れる。いつぞやのワームの時とは違って小ぶりだが、あの切れ味であれば魔族と言えども肉片に変わってしまう事は確実だろう。コウの手の動きに呼応して、空気の円盤はティアマトに四方八方から襲い掛かった。
…しかし次の瞬間ティアマトのまわりには半球状の結界が現れた。円盤は結界にぶつかってティアマトへと届くことは無かった。
「なんで邪魔するのさ?!」
コウはクニオに文句を言う。結界を作ったのはティアマトの傍らにいるクニオだった。ティアマトから漏れ出た、周辺の濃い魔素を利用してアマリアの盾の防御結界を、半球状に拡張したのだ。
「もういいでしょうティアマトさんも。確か魔族は自分より力の強いものには従うんですよね」
そういってクニオはティアマトに向かって微笑みかけた。
「いや、強いのはクニオじゃないだろう」
コウは小声で突っ込んだ。
夜は宿屋の食堂で日本酒で乾杯した。コルビーだけは得体のしれない飲み物だった。米の発酵飲料らしい。
「ペドロが死んでなくて良かったよ。回復魔法も蘇生魔法も使えるから、アイテムを無駄使いせずに済んだ」
コウがそういうと
「今日の酒代ぐらいは軽く浮きますな」
と、グレゴリーはいつものようにガハハと笑った。
「ティアマトはケチらないでアイテムで蘇生するつもりだったんだからね。流石にペドロには頼めないし」
コウはそう言ってティアマトとコルビーの方を見た。コルビーは笑っている。
今日の飲み会はにぎやかだ、『キュリオシティーズ』に『三本槍』、それに将来の魔王と七大魔将軍という豪華な顔ぶれだ。しかし『三本槍』のメンバーは日中の戦いの余韻からか口数が少ない。
ティアマトも似たようなものだった。
「しかしコルビー君とは久しぶりだよね。何百年かぶりだ。未だに魔王として転生し続けているんだろう?大変だよなー」
そういうコウにティアマトは
「人前ではコルとティアーでお願いします」とやっと口を開いた。
「悪い悪い」
コウは言葉だけで、反省している様には見えない。
「しかし本当にこの日本酒ってやつはおいしいね。」
どうやらコウに日本酒は気に入ってもらえたようだ。
「この酒は温度を変えてもいけるというお話でしたな」
グレゴリーはジョッキでがぶ飲みしている。
「日本酒は一気に飲まないで、ちびちびやるのがいいんですよ。温めて寒いときに鍋物と一緒に飲むと最高です」
クニオの説明にはコウとグレゴリーだけでなく、ティアマトも食いついた。
「それは興味深い。ワインを温めて飲もうとは思わないが、この日本酒というものは確かに温めてもいいような気がする。熱いつまみに熱い酒…それは是非試してみなければ」
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