トキネさんは修行しすぎて無敵になりました<連続活劇編>

十三岡繁

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茂木琢磨編

イチョウ並木

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 あの事件の後、あっという間に市川学院では残りの夏休みも終わって二学期に突入した。図書委員会の窓口当番は学期ごとにローテーションが変わるのだが、自分と田村さんは偶然にも二学期は同じ曜日の担当になった。今日が当番最初の日だ。先に席についていた自分の前に田村さんは現れた。先日の夏休み中彼女が現れなかったことが少しだけトラウマになっていたのでホッとした。

 軽く会釈をかわして彼女も席につくと自分の方から話しかけた。
「久しぶり……てこともないね。SNSでは昨日も話したし」
 そう、あの事件の後田村さんとはSNSのIDを無事交換することができた。但しチャット以外では当面しーちゃん、たくちゃんの呼び方は封印しようという事になっている。

「そういえば結局草壁さんは田村さんには何の用があったの?」
 自分の事はおいておいて、田村さんの話をまだ聞いていなかった。チャットで聞くような話でもないと思って控えていた。
「なんでも文部科学省で、新しい大学授業料免除の制度を作るのでやってみないかって話です」
「それはいい話だよね。もちろん挑戦するんでしょう?」
 自分がそう言うと
「現在検討中です。条件として大学卒業後に地方勤務が必要なんです。というか文科省としてはそこに移り住んでほしいみたいですね。まぁ随分と先の話ですが…」
 田村さんはそう言ってからチラッと自分の方を見た。

 こういう時にどう言うべきなのか今の自分にはまだ分からなかった。大学卒業は随分と先の話だが、あと数年のうちにその先の進路までも決めろというのは、高校生にはちょっと難しいような気がする。

「でも二学期は田村さんと当番が一緒になって、ちょっとうれしいな」
 自分は話題を逸らした。
「ちょっとなんですか?」
 田村さんは自分の発言に不満顔だ。

「ところで先輩、図書委員会の当番て誰が決めてるか知ってます?」
 唐突に彼女が聞いてくる。
「ん? 委員長じゃなくて司書の先生が決めてるんでしょう? それが何か?」
 自分の問いに田村さんは答える。
「委員会メンバーに仮番ふって、エクセルのランダム関数で決めてるみたいです」
「へぇ、そうなんだ。よく知ってるね」
 自分は他意なくそう返す。

「この学校はデーターベースのセキュリティが甘すぎますね」
 田村さんはそう言ってからニッコリと微笑んだ。自分はそれ以上の事を聞くのはやめておいた。

 彼女のその笑顔をずっと眺めていたかったが、照れくさいので自分は視線を逸らした。彼女の向こう側にある大きな窓からは相変わらずイチョウ並木が見えている。今日は風が強いのか枝が大きく揺れている。今は風に耐えているあのイチョウの葉も、じきに色づいてやがて地面に落ちていくだろう。でも冬が過ぎてまた春になれば新緑の季節がやってくる。それは確約された未来だった。
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