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悪役令嬢は荒野を駆け巡りたい
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力強く地を蹴った足音が心地よく耳に響く。決して離さないように握った手網から汗が滴るがそれすら風に攫われて気分が良かった。ザラザラしたたてがみの感触に頬を緩めながら次々に変わっていく景色を堪能する。乗馬はなんて素晴らしいんだろう!!
この馬となら何処までも人の手の届かない処へ駆けていける.......という夢を見た。
「お嬢様、首を痛められたんですか?」
「寝違えたんです」
サラの問に顔を逸らしながら答える。恥ずかしいから言わせないで欲しい。私は今朝方ベッドから落ちたのだ。
普段寝相がいいから一瞬自分の身に何が起こったのか分からなかった。前世ではほとんどベッドの上で過ごしていた分こんな事も無かったのに、いつの間にかベッドは私の定位置じゃ無くなったらしい。喜ぶべきなのかな? にしても首が痛い。
「その様子じゃ本日の乗馬は控えた方が宜しいですね」
「.......」
「ふて寝しようとするのはお待ちください!」
せっかく楽しみにしてたのにな~。
季節は春を迎え、アルフレッド・ベーカーから約束通り子馬が贈られてきた。毛の色が私と似た真っ黒で、でもつぶらな瞳の愛らしい馬。
まだ夢で体験したように荒野を走ることは出来ないが日々世話をしながら少しずつ練習中だ。
「真田丸、元気かな」
「前から思っていましたがお嬢様のネーミングセンス独特ですよね」
「しっ、言っちゃダメですよルイ」
何を言う。前世の名前真田栞から取った素晴らしい名前だろう!
「自分そう考えたらルイで良かったなと安堵します」
ルイは無表情のままそんな事を言うので、私はつい第二候補だったサスケにしてやれば良かったと意地の悪い考えをしてしまう。勿論由来は真田幸村の従者という意味で付けるつもりだった。ルイは忍者みたいなところあるしね。
「今日は大人しくしてましょうね」
その台詞は前世のトラウマを引き出す。当時は今日、で済まなかった分本当にやさぐれていた。
「はぁ.......図書室にでも忍び込むか」
「大人しくする気ゼロじゃないですか。自分もついて行きます」
「ため息つきたくなるのは私の方です! あとお嬢様図書室から持ってきた小難しい本をベッドの下に隠すのはやめてください、あれお嬢様にはまだ早いでしょう? 読めないのにどうして持ってくるんですか」
読めるからだと言ってしまいたい。
サラが言っているのは私がくすねてきた「ベーカー家の歴代当主」「ベーカー領農業改革の標」「当主とはかくあるべきか」「簡単! 子供にもできる完全犯罪~」等だろう。
前半はベーカー家の内情を洗い出したいが為のチョイスで最後の奴だけは実用目的だ。
以前耳にした「ベーカー家は呪われた家系」の言葉が私の中で引っかかっている。アルフレッドは教えてくれなさそうだし、アイザックは知らない様子だった。サラは何か察しているみたいだがアルフレッドから口止めされている。呪いなんてものを信じる性分ではないけれど、転生した今更不思議現象がどうのなんて言ってられない。知りたいことがあるなら自分で調べるしかないのだ、これといった手がかりは見つかってないけどね。
図書室の鍵は基本アルフレッドの書斎にある。利用するのが彼の他にいないからだ。流石にそこからくすねるのは難しいので、使用人たちが掃除する為作られた合鍵を拝借している。
「もう手慣れてますよね」
ルイが呆れた口調で言ってくるが気にしない。人を泥棒の常習犯みたいに言わないでくれ。
「アルフレッド様に直接頼めば普通に出入りできるのでは?」
「読みたい本の中に閲覧禁止図書があったらどうするんです。年齢制限とか絶対引っかかりますよ」
そもそも私はまだ子供だ、あまり変な本を読んでいたら怪しまれる。サラならまだしもアルフレッドは勘が鋭いので気をつけているのだ。
図書室の中でも古めかしい南京錠がかけられた棚がある。私は懐からその鍵を取り出して難なく解錠してみせた。
「.......いつの間にその鍵を持ってたんですか」
「持ってたのではなく作ったんですよ」
街への出入りが許可されるようになってからこの棚を見つけて、南京錠を壊し街で買った新しい南京錠に付け替えたのだ。だから鍵は私が持っている、一応アルフレッドの書斎にも元の鍵と同じように合鍵を置いてきたのでバレることはないと思う、多分。
鍵のかかった棚に保管されている書物は主にベーカー家の内情資料になる。我が家の見取り図や家系図。ここからお目当ての本を拝借してベッドの下に隠すのだ。
今日はベーカー家家系図でも見ようかな。アルフレッドで13代目になるベーカー家の歴史は長い。公爵の爵位を頂いてから数百年、この地に根強く栄えてきたらしい。
家系図は毎年一部を新しく書き換えられるので結構最近の情報まで乗っている。ふいに目を通した名前を見て驚いた。
「アルフレッドって兄弟いたんですね」
「お嬢様、流石に呼び捨てはまずいです」
しまった。つい心の声が漏れた。
アルフレッドには兄と弟、妹がいたらしいが皆幼い時に亡くなっている。それも事故ではなく病死だ。不可解に思えてよくよく見ればアルフレッドの兄弟だけでなくベーカー家は圧倒的に病死が多い、それも幼い時に発症するものが。
「何だ、これ.......」
ベーカー家に親戚の存在が確認できないのがずっと気になっていたんだがそれもそのはずだ。ベーカー家は当主以外の兄弟がほとんど亡くなっていたのだから。
深く読めば読み込む程違和感が形になっていく、私は思わず息を飲み込んだ。
この馬となら何処までも人の手の届かない処へ駆けていける.......という夢を見た。
「お嬢様、首を痛められたんですか?」
「寝違えたんです」
サラの問に顔を逸らしながら答える。恥ずかしいから言わせないで欲しい。私は今朝方ベッドから落ちたのだ。
普段寝相がいいから一瞬自分の身に何が起こったのか分からなかった。前世ではほとんどベッドの上で過ごしていた分こんな事も無かったのに、いつの間にかベッドは私の定位置じゃ無くなったらしい。喜ぶべきなのかな? にしても首が痛い。
「その様子じゃ本日の乗馬は控えた方が宜しいですね」
「.......」
「ふて寝しようとするのはお待ちください!」
せっかく楽しみにしてたのにな~。
季節は春を迎え、アルフレッド・ベーカーから約束通り子馬が贈られてきた。毛の色が私と似た真っ黒で、でもつぶらな瞳の愛らしい馬。
まだ夢で体験したように荒野を走ることは出来ないが日々世話をしながら少しずつ練習中だ。
「真田丸、元気かな」
「前から思っていましたがお嬢様のネーミングセンス独特ですよね」
「しっ、言っちゃダメですよルイ」
何を言う。前世の名前真田栞から取った素晴らしい名前だろう!
「自分そう考えたらルイで良かったなと安堵します」
ルイは無表情のままそんな事を言うので、私はつい第二候補だったサスケにしてやれば良かったと意地の悪い考えをしてしまう。勿論由来は真田幸村の従者という意味で付けるつもりだった。ルイは忍者みたいなところあるしね。
「今日は大人しくしてましょうね」
その台詞は前世のトラウマを引き出す。当時は今日、で済まなかった分本当にやさぐれていた。
「はぁ.......図書室にでも忍び込むか」
「大人しくする気ゼロじゃないですか。自分もついて行きます」
「ため息つきたくなるのは私の方です! あとお嬢様図書室から持ってきた小難しい本をベッドの下に隠すのはやめてください、あれお嬢様にはまだ早いでしょう? 読めないのにどうして持ってくるんですか」
読めるからだと言ってしまいたい。
サラが言っているのは私がくすねてきた「ベーカー家の歴代当主」「ベーカー領農業改革の標」「当主とはかくあるべきか」「簡単! 子供にもできる完全犯罪~」等だろう。
前半はベーカー家の内情を洗い出したいが為のチョイスで最後の奴だけは実用目的だ。
以前耳にした「ベーカー家は呪われた家系」の言葉が私の中で引っかかっている。アルフレッドは教えてくれなさそうだし、アイザックは知らない様子だった。サラは何か察しているみたいだがアルフレッドから口止めされている。呪いなんてものを信じる性分ではないけれど、転生した今更不思議現象がどうのなんて言ってられない。知りたいことがあるなら自分で調べるしかないのだ、これといった手がかりは見つかってないけどね。
図書室の鍵は基本アルフレッドの書斎にある。利用するのが彼の他にいないからだ。流石にそこからくすねるのは難しいので、使用人たちが掃除する為作られた合鍵を拝借している。
「もう手慣れてますよね」
ルイが呆れた口調で言ってくるが気にしない。人を泥棒の常習犯みたいに言わないでくれ。
「アルフレッド様に直接頼めば普通に出入りできるのでは?」
「読みたい本の中に閲覧禁止図書があったらどうするんです。年齢制限とか絶対引っかかりますよ」
そもそも私はまだ子供だ、あまり変な本を読んでいたら怪しまれる。サラならまだしもアルフレッドは勘が鋭いので気をつけているのだ。
図書室の中でも古めかしい南京錠がかけられた棚がある。私は懐からその鍵を取り出して難なく解錠してみせた。
「.......いつの間にその鍵を持ってたんですか」
「持ってたのではなく作ったんですよ」
街への出入りが許可されるようになってからこの棚を見つけて、南京錠を壊し街で買った新しい南京錠に付け替えたのだ。だから鍵は私が持っている、一応アルフレッドの書斎にも元の鍵と同じように合鍵を置いてきたのでバレることはないと思う、多分。
鍵のかかった棚に保管されている書物は主にベーカー家の内情資料になる。我が家の見取り図や家系図。ここからお目当ての本を拝借してベッドの下に隠すのだ。
今日はベーカー家家系図でも見ようかな。アルフレッドで13代目になるベーカー家の歴史は長い。公爵の爵位を頂いてから数百年、この地に根強く栄えてきたらしい。
家系図は毎年一部を新しく書き換えられるので結構最近の情報まで乗っている。ふいに目を通した名前を見て驚いた。
「アルフレッドって兄弟いたんですね」
「お嬢様、流石に呼び捨てはまずいです」
しまった。つい心の声が漏れた。
アルフレッドには兄と弟、妹がいたらしいが皆幼い時に亡くなっている。それも事故ではなく病死だ。不可解に思えてよくよく見ればアルフレッドの兄弟だけでなくベーカー家は圧倒的に病死が多い、それも幼い時に発症するものが。
「何だ、これ.......」
ベーカー家に親戚の存在が確認できないのがずっと気になっていたんだがそれもそのはずだ。ベーカー家は当主以外の兄弟がほとんど亡くなっていたのだから。
深く読めば読み込む程違和感が形になっていく、私は思わず息を飲み込んだ。
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