やさぐれ令嬢は高らかに笑う

どてら

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小悪魔キャラとは

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「アイザック様を中々招待できなかったのはその、恥ずかしくて.......ボクお兄ちゃんとかいないので上手く話せないかもしれませんし」
「そうだったんだね! あまり気負わなくて大丈夫だよ、カイスくんって呼んでもいいかい?」
「はい!! アイザック様」
「様はいらないよ」
「ならアイザックさん? アイザックお兄さん?」
「アイザックお兄さんいいね!! 何ならお兄ちゃんでも」
「落ち着いてください、お兄様」
うちのお兄様の兄貴心に火がついたらしい。普段こんなにはしゃいだりしない彼がこれだよ。カイス、こやつ中々やりよる。


 カイス・ワイアットはゲーム内でもアイザックと並ぶ人気キャラだ。アイザックにひたすら癒されたい派、カイスの少し面倒な性格で振り回されたい派、それぞれが対立していたらしい。そんな状況がファンクラブでも起こっているのだから面倒な事この上ない。

そもそも小悪魔キャラって何だ? 漫画やアニメに詳しくない私からすれば単に性格悪そうなキャラって認識なんだけど.......これ郁に実際言ったら怒られたんだよな。


どう交流しようか迷う私にカイスは上目遣いで両手を合わせ、可愛らしい仕草をしたかと思えば私に話しかけてきた。
「アイリーン様のことは何とお呼びすればいいでしょうか?」
呼ばなくていいよ、なんて無下には出来ない。個人的にはベーカーさん、アイリーン嬢が無難か。でもアイザックがお兄さんなら.......。
「アイリーンの呼び捨てでいいですよ」
「あれアイリーンお姉さんじゃないんだね」
アイザックが不思議そうに首を傾げている。生憎私はカイスの姉になる気はない。

もっと言うならアイザックを兄呼ばわりしていいのは私だけだ、子供っぽいから絶対口にしないけど!!

「そうですか.......ならアイリーンさんって呼びますね。年上の方は敬いなさいってお父様が言ってましたので」
好きにしてくれ。素っ気なく返す私の態度に思うところがあるのか引きつった笑顔を浮かべるカイス。残念ながら私は君に警戒心MAXだからね。
「それでは私はこれで。まだ挨拶しなければいけない方々がいますので、また後程」
「僕も一緒に行こうかい?」
「せっかくですからお兄様はカイス様とお話なさっていて下さい、ずっと話してみたいって言ってましたしね」
本当ならアイザックをカイスと二人きりにしたくないんだけどどうやらカイスはアイザックが苦手みたいなので対抗策にはもってこいなのかもしれない。似非天使の天敵は本物の天使ってわけだ。

まだ何か言いたげなカイスから逃げるようにその場を立ち去る、周囲を見渡せばさっきのやり取りを凝視していたらしい子達が一斉に目を逸らした。やっぱりこの二人並んだらめちゃくちゃ目立つな。これがアイドルならユニットでも組ませて.......何の話だ。

「あれっ、アイリーン?」
声のする方を向けば皿に目一杯スイーツを乗せて頬張っているレベッカが居た。
「アイリーンも来てたのね、このチョコレートブラウニー美味しいわよ」
「どうしてレベッカがここに?」
招待されていたとは驚きだ。ワイアット家はダミアン家とも交流を持ちたいのだろうか?
「勿論敵情視察よ!! ほらあっちにいる子達が最近アイザック様ファンクラブに喧嘩売ってる面子。うちの子達も何人か嫌がらせされたって泣きついてきたんだから」
「あれが.......何かデジャブが」
レベッカもつい最近まであんな感じだった気が。アイザックに近づく輩を片っ端から威嚇していた姿を思い出した。
「わ、ワタシはもうあんな真似してないからね!?」
慌てて弁解するレベッカに意地の悪い笑みを向けてみた、彼女は少し拗ねた様子で口をとがらせる。
「アイリーンのおかげで気づいたのよ。あんな風に意地悪したってアイザック様は喜ばない.......むしろアイザック様を思うなら一致団結して彼の力になれればいいなって」
「レベッカ.......」
ゲーム内の彼女はアイザックに近づきたくてもアイリーンが邪魔して近づけない、かといって真っ向からアイリーンに歯向かうこともせず取り巻きとして一緒になって悪事を働いていた。

それが今、アイリーンと一緒にいるのは同じでも立場は同等。そして何より彼女自身が何が正しいか見極めようとしている。彼女なりにゲームとは違う成長を遂げていて嬉しく思えた。
「そういえばクロードは?」
「お兄様なら今日は来てないわ、こういう場苦手なのよね~でもアイザック様とアイリーンが来るって知ってたら絶対来たのに」
後で自慢するんだと微笑んだ少女は、取り巻きにしておくには勿体なさすぎるぐらい輝いていた。


 そんな彼女の背にこっそり近づく人影が見えた。先程レベッカが言っていたカイスの取り巻き連中の一人だ。手に持った葡萄ジュースの入ったグラスが目につきそれが傾いた瞬間、私は一歩、レベッカと彼女の間に立ち塞がるよう割って入った。



 バシャッ。


派手な効果音と共に着ていたドレスから滴り落ちる水滴。

肩から被ったジュースの染みが広がっていく。
「えっ、あ、あの」
「アイリーン!!」
張り上げたレベッカの声で周囲の視線をかっさらってしまった。濡れた衣服が気持ち悪い。
「ご、ごめんなさいっ!!」
顔面蒼白で頭を下げる少女。彼女はレベッカを狙ったんだろう、まさか私が割り込むとは思わなかったに違いない。
「いいのです、このくらい」
優しげな言葉を少女に投げかけてやり涙目になった顔を上げた彼女へ一言だけ囁く。








「名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


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