やさぐれ令嬢は高らかに笑う

どてら

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小悪魔様? いいえお子様でした

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 「ボクのことお嫌いですか?」
プロポーズ? らしきものを秒で断った私にカイスが目をうるうるさせながら呟いた。この子目大きいな、こぼれ落ちそう.......。
「好みの問題ではなく私には既に婚約者がいますので」
ブラウンとかいう残念ツンデレくん。
「ではボクのこと好きですか?」
この子話聞いてないのかな?
「えぇまぁ(トイレのスリッパ)よりは好きですよ」
あと、アルフレッドよりもだ。私の含みある言い方に一瞬固まりながらも微笑みながらカイスは続ける。
「その婚約者様よりも?」
「黙秘で」
あれで結構ブラウンのこと気に入っていると口にするのは少し恥ずかしかったりする。
「じゃあ~」
まだ続けるのか。
「アイザック様よりも?」
「それは無いですね」
絶対ない、天変地異が起きて太陽が西から昇ってもありえない。断言したらカイスはワナワナと肩を震わせ始めた。どうしたんだ? 寒いのかな?
「.......でなん」
「はい?」
具合悪いのかな? ルイから借りたジャケットを貸してやろうか悩んでいたらいきなりカイスが顔を上げて距離を詰めてきた。その目には大粒の涙が浮かんでいる。




「なんでボクが一番じゃないん!!!!」
「えっ!? ちょっカイスさ」
「ボクの方が可愛くてカッコええやろ!? なんでボクのこと一番好きやゆうてくれへんの! 誰やねん婚約者って、そんなんより絶対ボクの方がモテるわ。ボクより可愛い子今日おったか? ボクより天使な子なんかおらんかったやん.......ボクが一番やのに、ボクが一番がんばってんのにっ!! またアイザックかいな!? なんでいっつもあいつの名前が出てくんねん、あいつのどこが天使や? 顔か顔なんか? ボクも顔めっちゃええで? 何が足りんの? おとんもおかんもファンの子もアイリーンもみんなみんなアイザックアイザックうるさいわボケっ!!」


えぇぇぇ!!??


 なんで関西弁なん? 駄目だ私まで移った。
 こんな設定聞いてないんだが。世界観ヨーロッパの時代背景のくせにどうして方言が関西弁なんだよ。やはりゲームの中だと痛感しながらも内心混乱を隠せない。


さっきまで満面の笑み振りまいてた子供何処に行ったんだよ、小悪魔キャラっていうかお子様.......。

「アイリーン聞いとん!?」
呼び捨てか。

「あの、一旦落ち着かれては」

「だいたいアイリーンがボクになびかんのが悪いねんで? ボクがここまで可愛らしく誘ってんねんから普通やったら「カイス様素敵! 抱っこさせて!」ってなるやろ!!」
最終目標私に抱っこされることかい。被っていた猫が剥がれ落ちたというべきか、方言と暴言と妄言が口から飛び出しているカイスは駄々っ子のようにその場で地団駄を踏みながら怒りを顕にしている。

「ボクのこと可愛ええってゆうて!! ボクのこと甘やかして!! 好きってゆってくれな泣くからな!?」
もう泣いてますよお坊ちゃん。流石に見ていて可哀想になってきたので泣きじゃくる彼の背中をさすりながら話に相槌を打ってやる。
「おとんもおかんもみんなボクのこと昔っから可愛い天使ってゆうてきたくせに最近みんなアイザックの方が素敵とか言い出してん」
そりゃ事実アイザックの方が何倍も.......。口にしかけてカイスに睨まれたので慌てて口を閉ざした。

「おとんはボクがどんだけがんばっても「将来の当主として」しか褒めてくれんし、おかんはすっかりアイザックファンやし.......ボクそんな魅力ないんかいな」
「そんな事は.......」
ないですよ、そう言いかけて思考が止まる。

「もしかしてカイスファンクラブ作ったのって貴方自身なんですか?」
カイスはバツ悪そうに顔を逸らした。図星だったらしい。
「やって羨ましかったんやもん.......ボクかてみんなにちやほやされたい」
ファンクラブのご法度で自分で自分のファンクラブを作ってはいけないといった決まりがある。勿論カイスは知らなかったようだが決まりの悪さは痛いほど身に染みているらしい。
「アイザックが妹溺愛してるって話聞いて、もしアイリーンがボクのこと一番好きやゆうたらボクでもアイザックに勝ったことになる思ってんけど」
あかんかったわ.......なんてまた泣きそうな声で呟くカイス。
「ぶっちゃけると今私の中で貴方の株上がってますよ」
「え? なんで?」
馬鹿な子ほど可愛いってやつだよ、全く。



「素は方言なんですね、そっちの方が一部の女性にウケると思いますが」
「田舎もんとか言われるん嫌やし、おとんも人前やったら普通やろ?」
という事はカースの方も普段は関西弁なのか。あれだけ想像して気に病んでいたワイアット家の全貌が大阪の賑やか家族へと変わっていく。私の悩んでいた時間返して欲しい。



「カイス様、あまり人と比べてもいい事ありませんよ。上には上がいるのものですから」
アイザックの上はいないけどな。
「でも」
「貴方には貴方の魅力があります、勿論同じだけ皆には欠点があるんです。お兄様は素敵で最高の天使ですが優しすぎるという欠点があるように、他者を羨むという気持ち自体は原動力になりますが行き過ぎると嫉妬や憎悪なんて面倒なものに変わってしまうものです。何事も程々が丁度いいですよ」
「アイリーンにも欠点あるん?」
「ありますよ、私には人にあまり好かれないという大きな欠点がね」

そしてどれだけ画策してもいつも思い通りにいかないという運の悪さ。
「アイリーン、それは」
違うとでも言いたげな表情のカイス。どうせ私が聞く耳を持たないと察したのだろう、途中で言うのをやめてしまった。

小さな頭で必死に誰かを思いやったり思われようとしたり、振り回されるその姿がほんの少しだけ愛らしく思えて頭を撫でてやった。


「子供なんですから変に考えないで素直になるのが一番だと思います」
「それアンタにだけは言われた無いわ」

無邪気に返した彼の泣き腫らした顔には自然と笑顔があった。




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