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21 かわいがってあげる
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翌朝目覚めはすこぶる悪かった。
ここのところの寝不足もあったが、昨夜も寝付けずに何度も寝返りを打ってみたり寝苦しさに布団を蹴脱いでみたり色々しながらようやく寝付いたと思ったら目覚ましのアラームに起こされた。
あぁ……今日はもう早起きする必要はなかったのにタイマーの時間を変更し忘れていた……。
ベッドに腰を下ろしたまま寝ぼけた頭でそんなことを思うがまた寝直したら今度は起きられないだろう。
かといってもう起きて準備を始めようとするには気怠い体が動くのを拒んでいるようで何をする気にもなれない。
結局ギリギリまでその姿勢で何するともなくぼんやりしていたようだ。
ハッと思って時計を見たらもうギリギリと言う時間になっていた。
教室に入ると自然と羽深さんの席の方に目が向いてしまったが彼女は見当たらなかった。
そのことになんとなくホッとして自分の席に着く。
基本的に元々彼女との接点などなかった僕だ。
とりあえず顔を合わせなければ気まずい思いをしなくて済む。
そしてその日も次の日も羽深さんは学校に来ることがなかった。
今日も今の所姿を見せていない。
チクチクと胸が痛むが、僕にはどうすることもできないことだし、じくじく痛む古傷みたいなものを抱え込んで相変わらず悶々として過ごすだけだった。
「楠木ー、生きてっかぁー」
メグが能天気に声をかけてきた。
「見て分かんねーか?」
「おぉ、おぉー。目が死んでるなぁ、完全に。ガハハ」
「うるさいわ」
「青柳高校のこの前のバンドだけど」
「THE TIMEな」
「おー、それそれ。ライブの助っ人依頼きたけどお前どうする?」
「やる」
食い気味なくらいに即答した。
最近のこのクサクサした気分を晴らしたい。
バンド演奏って、チームスポーツをするのとちょっと感覚的に近いものがある。
気持ちよく演奏できた後ってなんだかスポーツをした後の爽快感と似ていていい汗かいたっていう気分になるんだ。
「おぉっ。いいねぇ、やる気満々で。んじゃあ俺も参加ってことで返事しとくわ。本番来週末だけど曲は覚えてるし大丈夫だよな?」
「あぁ、大丈夫。リハは?」
「あぁ、全体で合わせられるのは木金土みたいだけど? お前んとこのスタジオ宣伝しといたぞ」
「分かった体空けとく。予定特にないけど」
うちは音楽用の貸しスタジオを親父が営んでいるのだ。
あまり自分で宣伝することはないんだけど、メグがなぜだかちょいちょい宣伝してくれるお陰で結構それをきっかけに常連さんになってくれたバンドも少なくなかったりする。
「んでこれな。ほれ」
そう言って渡されたのは先日レコーディングしたTHE TIMEの完成音源のCDRだった。
「おぉ、サンキュ」
用が済むとメグはとっとと何処かへ消える。
こいつは良くも悪くもいつも通りだ。
今の僕にとってはありがたい。
何しろあれ以来クラスメイトの僕を見る目ときたら蔑むような汚物を見るようななんともいたたまれない気持ちにさせられるものなのだ。
しかし僕は一体何をしてみんなからこんな目で見られているんだろうか?
そんな目で見られるようなことをした覚えは何にもない。
羽深さんに誘われて登校してきて教室でちょっとの間話してたら佐坂のヤツに嫌味を言われただけだ。
あの後羽深さんが佐坂君とどんな話をしてこんな事態になったのか僕にはさっぱり分からない。
いかんいかん。
いつまでも詮無いことを考えていたって落ち込むだけだし。ライブもあるしその前には人生初デートも控えてるんだ。
余計なことなんて考えてる余裕はない。
余計なこと。自分でそう評しておいて胸の奥がまたじくじくと痛んだ。
昼休みにはもはやすっかり定例の曜ちゃんとのやりとりがあって、ライブに正式なオファーを受けたこととCDRを受け取ったことなんかを伝えた。
日曜日の細かな打ち合わせも済んだし、校内におけること以外は万事快調といったところだ。
なのにどうしてこんなに虚しいのやら。
すっかりぼっち飯が板についた僕は今日も校庭の片隅でパンをかじりながら昼休みを過ごしている。
天気が悪い時のことも考えておかなくちゃなぁ。
予鈴を聞いて教室に戻る途中でかなでちゃんに遭遇する。
「おぉっ。今話題のセクハラ少年じゃん」
「はぁっ!? なにそれ?」
「すっかり有名だよ。学園のマドンナにセクハラしてマドンナが登校拒否起こしてるって」
なんだよそれ。
初めて聞いたけどそんなことになっちゃってるのか?
呆然としていたら
「大丈夫? 甘えたくなったらお姉さんがかわいがってあげるよ」
とにやけ顔で言われた。
「冗談。かなでちゃんのは相撲部屋のかわいがりと一緒だろ」
「ふむ……意外と元気そうだね。まあ頑張りなよ。どうしてもの時はかわいがってあげるし」
そう言ってにやけ顔のままかなでちゃんは去っていった。もしやあれでも心配してくれたんだろうか。
それにしても僕が羽深さんにセクハラして登校拒否だと?
もう何が何やら……。
僕のスクールライフマジで終わったかなぁ……。
ここのところの寝不足もあったが、昨夜も寝付けずに何度も寝返りを打ってみたり寝苦しさに布団を蹴脱いでみたり色々しながらようやく寝付いたと思ったら目覚ましのアラームに起こされた。
あぁ……今日はもう早起きする必要はなかったのにタイマーの時間を変更し忘れていた……。
ベッドに腰を下ろしたまま寝ぼけた頭でそんなことを思うがまた寝直したら今度は起きられないだろう。
かといってもう起きて準備を始めようとするには気怠い体が動くのを拒んでいるようで何をする気にもなれない。
結局ギリギリまでその姿勢で何するともなくぼんやりしていたようだ。
ハッと思って時計を見たらもうギリギリと言う時間になっていた。
教室に入ると自然と羽深さんの席の方に目が向いてしまったが彼女は見当たらなかった。
そのことになんとなくホッとして自分の席に着く。
基本的に元々彼女との接点などなかった僕だ。
とりあえず顔を合わせなければ気まずい思いをしなくて済む。
そしてその日も次の日も羽深さんは学校に来ることがなかった。
今日も今の所姿を見せていない。
チクチクと胸が痛むが、僕にはどうすることもできないことだし、じくじく痛む古傷みたいなものを抱え込んで相変わらず悶々として過ごすだけだった。
「楠木ー、生きてっかぁー」
メグが能天気に声をかけてきた。
「見て分かんねーか?」
「おぉ、おぉー。目が死んでるなぁ、完全に。ガハハ」
「うるさいわ」
「青柳高校のこの前のバンドだけど」
「THE TIMEな」
「おー、それそれ。ライブの助っ人依頼きたけどお前どうする?」
「やる」
食い気味なくらいに即答した。
最近のこのクサクサした気分を晴らしたい。
バンド演奏って、チームスポーツをするのとちょっと感覚的に近いものがある。
気持ちよく演奏できた後ってなんだかスポーツをした後の爽快感と似ていていい汗かいたっていう気分になるんだ。
「おぉっ。いいねぇ、やる気満々で。んじゃあ俺も参加ってことで返事しとくわ。本番来週末だけど曲は覚えてるし大丈夫だよな?」
「あぁ、大丈夫。リハは?」
「あぁ、全体で合わせられるのは木金土みたいだけど? お前んとこのスタジオ宣伝しといたぞ」
「分かった体空けとく。予定特にないけど」
うちは音楽用の貸しスタジオを親父が営んでいるのだ。
あまり自分で宣伝することはないんだけど、メグがなぜだかちょいちょい宣伝してくれるお陰で結構それをきっかけに常連さんになってくれたバンドも少なくなかったりする。
「んでこれな。ほれ」
そう言って渡されたのは先日レコーディングしたTHE TIMEの完成音源のCDRだった。
「おぉ、サンキュ」
用が済むとメグはとっとと何処かへ消える。
こいつは良くも悪くもいつも通りだ。
今の僕にとってはありがたい。
何しろあれ以来クラスメイトの僕を見る目ときたら蔑むような汚物を見るようななんともいたたまれない気持ちにさせられるものなのだ。
しかし僕は一体何をしてみんなからこんな目で見られているんだろうか?
そんな目で見られるようなことをした覚えは何にもない。
羽深さんに誘われて登校してきて教室でちょっとの間話してたら佐坂のヤツに嫌味を言われただけだ。
あの後羽深さんが佐坂君とどんな話をしてこんな事態になったのか僕にはさっぱり分からない。
いかんいかん。
いつまでも詮無いことを考えていたって落ち込むだけだし。ライブもあるしその前には人生初デートも控えてるんだ。
余計なことなんて考えてる余裕はない。
余計なこと。自分でそう評しておいて胸の奥がまたじくじくと痛んだ。
昼休みにはもはやすっかり定例の曜ちゃんとのやりとりがあって、ライブに正式なオファーを受けたこととCDRを受け取ったことなんかを伝えた。
日曜日の細かな打ち合わせも済んだし、校内におけること以外は万事快調といったところだ。
なのにどうしてこんなに虚しいのやら。
すっかりぼっち飯が板についた僕は今日も校庭の片隅でパンをかじりながら昼休みを過ごしている。
天気が悪い時のことも考えておかなくちゃなぁ。
予鈴を聞いて教室に戻る途中でかなでちゃんに遭遇する。
「おぉっ。今話題のセクハラ少年じゃん」
「はぁっ!? なにそれ?」
「すっかり有名だよ。学園のマドンナにセクハラしてマドンナが登校拒否起こしてるって」
なんだよそれ。
初めて聞いたけどそんなことになっちゃってるのか?
呆然としていたら
「大丈夫? 甘えたくなったらお姉さんがかわいがってあげるよ」
とにやけ顔で言われた。
「冗談。かなでちゃんのは相撲部屋のかわいがりと一緒だろ」
「ふむ……意外と元気そうだね。まあ頑張りなよ。どうしてもの時はかわいがってあげるし」
そう言ってにやけ顔のままかなでちゃんは去っていった。もしやあれでも心配してくれたんだろうか。
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