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74 知らんけど【挿話 ミカの相談室】
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「で、その後どうだって? あ、店員さーん、ここ抹茶エスプーマ善哉二つお願いしまーす」
「ん、それがね、自分でも不思議なんだけど、結構自信あるんだ」
あのヘタレのららが意外にも結構自信があるとは!? この子も成長したもんだぁ……と、近所のおばちゃん目線で感慨に浸る間もなく、続くららの言葉で一瞬固まる。
「ここまで結構練習してきたしね。バンドのみんな結構腕利きらしくてかなりいい感じなんだ。あ、そうだ! ミカにまだ聞かせてなかったよね、うちのバンドの曲? ホントに自信あるんだ、聴いてみる?」
――――――――。
「って、時間止まったわーっ! びっくりしたー。あんたねぇ、バンドがどうとか訊いてないし! 恋愛方面どうかって訊いてんのに、一瞬時間止まったわ、マジで。あーこわっ」
「あー……それねー……」
途端に死んだ魚のような目をしてライフゼロの様相を呈すらら。
どしたどした? もしかしてうまく行ってないの?
「何よ、何があった? また自爆したの?」
「ちょっ、また自爆って、酷いんだけど?」
「え、違うの? んじゃぁ、何よ一体? ハッ!? まさかジンピカちゃんに持ってかれた?」
ジンピカちゃんの名前を出した途端、ららの表情が分かりやすくさらに曇った。
あちゃ、まさかのまさかだった? ジンピカちゃん確かにかわいいもんなぁ。あれなら持ってかれることもありえないとは言えないか……。
「はぁ? 違ーーーうっ。断じてそこはち・が・うっ!」
子供みたいにほっぺを膨らませて断じられてしまったんだけど、だったら一体何がどうなったのよ?
「あ、そ。じゃあやっぱり自爆だ、自爆。ご愁傷さまー」
「ちょ。ミカ酷くない? どっちも違うからねっ! ジンピカちゃんとは今は取り敢えず停戦協定中なのっ」
停戦協定? どういうことだろ。そんな悠長なこと言ってる場合?
「意味分からん。そこんとこ詳しく」
説明を求めたわたしに、ららは訥々と事の経緯を話してくれた。
「夏祭りにね、拓実君を誘って一緒に行ったのよ」
「おぉ、やることしっかりやってるじゃん、いいよいいよ」
「うん、でもね。なぜかジンピカちゃんに待ち伏せされてて邪魔されそうになって」
「げっ、マジで!? やばいじゃん」
ジンピカちゃん、意外に激しいんだ。あのかわいらしい雰囲気からはちょっと想像できないんだけど、そこまでするとは……恐るべし、ジンピカちゃん。
「うん。でね、その場で二人で話し合ったんだ」
「何を? 二人でってジンピカちゃんと二人でってこと?」
「そうだよ。夏祭りは拓実君と前から約束してたから、今日は絶対譲らないってことと、文化祭でわたし告白するって宣言してやったんだ」
「おぉ~」
マジか。超絶スーパーウルトラ奥手のららが? 凄い成長曲線じゃないの。やっぱり好敵手の存在がららを急成長させたんだね。やるわね、ジンピカちゃん。
「そこまでは良かったんだけど、ジンピカちゃんも何でかわたしたちの文化祭で拓実君に告白するとか言い出しちゃってさぁ」
「なんですとっ!?」
ほぉほぉ、盛り上がって参りました。てか、唇尖らしてるららがかわい過ぎるんですけど。
「意味分かんなくない? 何でうちの文化祭に来てわたしの拓実君にちょっかいかけるとか言うわけ? ありえないんですけどっ!?」
おぉ、おぉ。ヒートアップしとりますなぁ。さり気なくわたしの拓実君て所有権主張キターーーッ。いいぞいいぞ、もっとやれーっ。ひゃっほぅっ!
「うんうん。それでそれで? 続きはよ」
「それで、文化祭まで大人しくしとくから、わたしにもアクション起こすなとか言われた」
「なるほどなるほど。それが停戦協定ってわけね」
「そう言われてもわたし納得行かなくてぇ。だって……だって、向こうはわたしより一回多く拓実君とデートしてるんだよ!? しかもバンドで一緒にライブ演ってるしさぁ。ありえなくないっ?」
「お待たせしましたぁ~、こちら抹茶エスプーマ善哉でーす」
「あ、はいどーもー。うん、酷い酷い、んで?」
「不公平だって言ってやったら、そっちこそおんなじ学校でおんなじクラスでおんなじバンドでしょって言われた……ぐすん」
「んーー、確かに。どっちかって言うとららに大分アドバンテージあるわなぁ」
なるほどそっかぁ。でもその条件だとららに有利な気がするなぁ。ジンピカちゃん、なかなかフェアな子だわね。さてどう転ぶかなぁ。
「アドバンテージあるぅ? 大分ぅ? ホントにぃ? そ、そっかなぁ……そう思う?」
今度は急に締まらない表情でにへらぁっと悦に浸っているらら。かわいいけどポンコツ。
「うん、まぁ。大分有利なんじゃないの? 知らんけど」
確かにららが有利ではある気がする。でも結果がどうなるかはわたしにも分かんないし、一応責任逃れの似非大阪人風に「知らんけど」と付け加えておいた。
その後しばらくグダグダお喋りした後、お代をららに払わせてお気に入りの甘味処うさぎ屋を出ると、ららは颯爽とした足取りで帰っていった。
あの子散々泣き言言うくせに、いっつも最後は元気に帰っていくよねー。
まぁ、いよいよ正念場だし。頑張りなよね、らら。
「ん、それがね、自分でも不思議なんだけど、結構自信あるんだ」
あのヘタレのららが意外にも結構自信があるとは!? この子も成長したもんだぁ……と、近所のおばちゃん目線で感慨に浸る間もなく、続くららの言葉で一瞬固まる。
「ここまで結構練習してきたしね。バンドのみんな結構腕利きらしくてかなりいい感じなんだ。あ、そうだ! ミカにまだ聞かせてなかったよね、うちのバンドの曲? ホントに自信あるんだ、聴いてみる?」
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「って、時間止まったわーっ! びっくりしたー。あんたねぇ、バンドがどうとか訊いてないし! 恋愛方面どうかって訊いてんのに、一瞬時間止まったわ、マジで。あーこわっ」
「あー……それねー……」
途端に死んだ魚のような目をしてライフゼロの様相を呈すらら。
どしたどした? もしかしてうまく行ってないの?
「何よ、何があった? また自爆したの?」
「ちょっ、また自爆って、酷いんだけど?」
「え、違うの? んじゃぁ、何よ一体? ハッ!? まさかジンピカちゃんに持ってかれた?」
ジンピカちゃんの名前を出した途端、ららの表情が分かりやすくさらに曇った。
あちゃ、まさかのまさかだった? ジンピカちゃん確かにかわいいもんなぁ。あれなら持ってかれることもありえないとは言えないか……。
「はぁ? 違ーーーうっ。断じてそこはち・が・うっ!」
子供みたいにほっぺを膨らませて断じられてしまったんだけど、だったら一体何がどうなったのよ?
「あ、そ。じゃあやっぱり自爆だ、自爆。ご愁傷さまー」
「ちょ。ミカ酷くない? どっちも違うからねっ! ジンピカちゃんとは今は取り敢えず停戦協定中なのっ」
停戦協定? どういうことだろ。そんな悠長なこと言ってる場合?
「意味分からん。そこんとこ詳しく」
説明を求めたわたしに、ららは訥々と事の経緯を話してくれた。
「夏祭りにね、拓実君を誘って一緒に行ったのよ」
「おぉ、やることしっかりやってるじゃん、いいよいいよ」
「うん、でもね。なぜかジンピカちゃんに待ち伏せされてて邪魔されそうになって」
「げっ、マジで!? やばいじゃん」
ジンピカちゃん、意外に激しいんだ。あのかわいらしい雰囲気からはちょっと想像できないんだけど、そこまでするとは……恐るべし、ジンピカちゃん。
「うん。でね、その場で二人で話し合ったんだ」
「何を? 二人でってジンピカちゃんと二人でってこと?」
「そうだよ。夏祭りは拓実君と前から約束してたから、今日は絶対譲らないってことと、文化祭でわたし告白するって宣言してやったんだ」
「おぉ~」
マジか。超絶スーパーウルトラ奥手のららが? 凄い成長曲線じゃないの。やっぱり好敵手の存在がららを急成長させたんだね。やるわね、ジンピカちゃん。
「そこまでは良かったんだけど、ジンピカちゃんも何でかわたしたちの文化祭で拓実君に告白するとか言い出しちゃってさぁ」
「なんですとっ!?」
ほぉほぉ、盛り上がって参りました。てか、唇尖らしてるららがかわい過ぎるんですけど。
「意味分かんなくない? 何でうちの文化祭に来てわたしの拓実君にちょっかいかけるとか言うわけ? ありえないんですけどっ!?」
おぉ、おぉ。ヒートアップしとりますなぁ。さり気なくわたしの拓実君て所有権主張キターーーッ。いいぞいいぞ、もっとやれーっ。ひゃっほぅっ!
「うんうん。それでそれで? 続きはよ」
「それで、文化祭まで大人しくしとくから、わたしにもアクション起こすなとか言われた」
「なるほどなるほど。それが停戦協定ってわけね」
「そう言われてもわたし納得行かなくてぇ。だって……だって、向こうはわたしより一回多く拓実君とデートしてるんだよ!? しかもバンドで一緒にライブ演ってるしさぁ。ありえなくないっ?」
「お待たせしましたぁ~、こちら抹茶エスプーマ善哉でーす」
「あ、はいどーもー。うん、酷い酷い、んで?」
「不公平だって言ってやったら、そっちこそおんなじ学校でおんなじクラスでおんなじバンドでしょって言われた……ぐすん」
「んーー、確かに。どっちかって言うとららに大分アドバンテージあるわなぁ」
なるほどそっかぁ。でもその条件だとららに有利な気がするなぁ。ジンピカちゃん、なかなかフェアな子だわね。さてどう転ぶかなぁ。
「アドバンテージあるぅ? 大分ぅ? ホントにぃ? そ、そっかなぁ……そう思う?」
今度は急に締まらない表情でにへらぁっと悦に浸っているらら。かわいいけどポンコツ。
「うん、まぁ。大分有利なんじゃないの? 知らんけど」
確かにららが有利ではある気がする。でも結果がどうなるかはわたしにも分かんないし、一応責任逃れの似非大阪人風に「知らんけど」と付け加えておいた。
その後しばらくグダグダお喋りした後、お代をららに払わせてお気に入りの甘味処うさぎ屋を出ると、ららは颯爽とした足取りで帰っていった。
あの子散々泣き言言うくせに、いっつも最後は元気に帰っていくよねー。
まぁ、いよいよ正念場だし。頑張りなよね、らら。
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