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第五章 パラレル
第133話 アンノウン・ワールドマップ
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翌日、登校すると相変わらずディディエの人気がすごいことになっている。まぁ、留学する前からある程度想像してはいた。今ですらこの状況なのに、これからディセット編集長の瀬名さん絡みで雑誌モデルをやるであろうことを考えたらゾッとする。
そんな騒ぎにも我関せずというスタンスを一貫して通す十一夜君はさすがだ。
さすがなんだけど、昨日母と梨々花におかしなことを言われたものだから、変に意識してしまってやりにくい。まぁ、日頃から学校では挨拶程度のやり取りしかないのだけど、どうしてこんなに意識してしまうのか……。非常に困る。
実は今朝早くに十一夜君からメールが届いた。昨日あの後すみれさんの伝手で例の政府機関の人と話をしたということで、その報告があるから放課後また時間を取ってほしいとのことだった。
秋菜にまた用事で一緒に帰ることができない旨を伝えると、また頑張れと言われた。学校の昇降口でも何だかいい笑顔でサムズ・アップされたし。わたしは一体何を頑張ることを期待されているのだか……。
ともかく、何だか地に足の着かないようなふわふわした気持ちで学校での一日を過ごし、放課後を迎えた。
今日はスタバにて合流ということになっている。慎重を期して十一夜君とは別々に目的地へ向かう。ちなみに聖連ちゃんもすみれさんたちも合流しない。十一夜君と二人だけなのだ。それを思うともう昨日の件のせいで変な汗と動悸が止まらない。
待ち合わせのスタバに到着すると、十一夜君は先に来て席に着いていた。
わたしもコーヒーを受け取って席に着く。
十一夜君は相変わらずあれこれ食べ物を注文してむしゃむしゃ食べている。
「お疲れ様、十一夜君」
「おぉ」
ふふ。まただ。いつもの十一夜君。
「何?」
いささか怪訝そうに訊いてくる十一夜君だが、ついつい和んでしまうのだ。さっきまでの緊張感はどこへやら。でも仕方ない。
「なんにも?」
「またかぁ。ニヤニヤしちゃって、気になるんだよ」
結構気にしいなんだなぁ、十一夜君。わたしが勝手に和んでるだけで、別に大したことないのに。
「うーん。そんなに知りたい?」
「おぉ」
「んふふふふぅ」
また、おぉって。あははは。ぶっきらぼうすぎだよ。まぁ、こっちはしばらくの間はこのそっけない返事すら聞けなかったんだから。
「ほらまただ。何でそんなにニヤニヤするの?」
「だってぇ。十一夜君のさぁ、その、おぉっていうそっけない返事……ずっと聞けなかったんだよ、こっちはさぁ。なんか久しぶりで和むなって思ったら、自然とそうなっちゃうのっ」
って、おいおい。今度は何顔赤らめちゃってんの? 乙女かよ……って元乙女か。
いや、もうすっかり男の子でしょうがまったく。
「おぉ……」
おぉ、めっちゃ恥じらってる。こんなかわいい十一夜君は珍しい。
眺めているだけで何だか微笑ましくなってきてしまうよ。
「んふふふ」
「ちぇ、またか」
「あ、またちぇって言った。んふふふふぅ」
って、これじゃ一向に話が進まないよ、十一夜君。ってわたしが悪いのか。
「もう、これじゃ埒が明かないから進めるよ」
はいはい、そうですね。話を進めましょう。
「ごめんなさい。どうぞ」
十一夜君が場を仕切り直すかのように一度大きく呼吸をすると、わたしの方もちょっと気が引き締まる。
「まず、接触できた人物ってのは、本当に例の極秘機関に関わる人間だった」
そうか。さすがすみれさんの伝手だ。一体どんなコネなのかすごく気になるけど、なんか知ったら知ったでアチャーってなりそうで怖い。
「あ、やっぱりそうだったんだ」
「うん、それで黛君なんだが……どうやら本当に平行世界からやってきたってことのようだ」
「えぇっ?」
マスオさんばりに驚きの声が出てしまったが、そんなトンデモ話まさかホントにあるとでも? さすがにその話には無理があるんじゃないかな。
「まぁ、驚くのも無理はないと思うけど、どうも政府は本気で研究しているらしい。というのも、黛君より以前に実例があって、その人物はすでに他界しているらしいんだけど、その人物が最初に日本政府と接触して、黛君はその二代目ということになるらしい」
なんか急にSFじみた話になってきちゃったんだけど、やっぱり信じられないような話だなぁ。
「一体何のためにそんなことを⁉」
「ああ。どうやら向こうの世界はこっちの世界より技術が随分発達しているらしいんだが……あ、世界時計って分かる?」
世界時計ってあれか。世界の終わりを十二時として、それまで後どれくらいの時間かっていうのを示した象徴的な時計のことだよね。
「うん、まぁ、知ってるけど」
「そうか。それでその、向こうの世界は技術は発達しているのに世界時計はもう十二時の二分前とかを指しているらしいんだよ」
「ほぉほぉ。つまり世界の終末が近いと?」
「そういうことになるな」
「うーん、この二十一世紀にまさかの終末論……でもそれが黛君と何の関係が?」
「そこなんだけど。その接触できた人間が言うには、向こうの世界からこっちの世界に警鐘を鳴らしに来たっていうんだよ。それがどうも胡散臭いんだよなぁ」
「はぁ……そもそもの話が胡散臭い気がするんだけど?」
「うん、それを言っちゃったらまぁそうなんだけど。でもまぁ、黛君が平行世界からやってきたのが事実だと仮定してだよ。わざわざ交わることのない別の世界にやってきて警告することに何のメリットがあるっていうんだ? それに向こうの技術をこちらにもたらして、その結果こっちの世界の技術も進めてしまうことになったら、向こうと同じ道を辿らせるようなものじゃないか」
「はぁ~、なるほどぉ……確かにそれもそうだね。警告しにきた意味ないじゃん」
「そういうことなんだよ……しかも向こうの世界っていうのが、戦争で日本が負けなかった世界だっていうんだな、これが」
「えっ? それってつまり……?」
「黛君のいた日本は軍隊を持つ軍事国家らしい」
そんな騒ぎにも我関せずというスタンスを一貫して通す十一夜君はさすがだ。
さすがなんだけど、昨日母と梨々花におかしなことを言われたものだから、変に意識してしまってやりにくい。まぁ、日頃から学校では挨拶程度のやり取りしかないのだけど、どうしてこんなに意識してしまうのか……。非常に困る。
実は今朝早くに十一夜君からメールが届いた。昨日あの後すみれさんの伝手で例の政府機関の人と話をしたということで、その報告があるから放課後また時間を取ってほしいとのことだった。
秋菜にまた用事で一緒に帰ることができない旨を伝えると、また頑張れと言われた。学校の昇降口でも何だかいい笑顔でサムズ・アップされたし。わたしは一体何を頑張ることを期待されているのだか……。
ともかく、何だか地に足の着かないようなふわふわした気持ちで学校での一日を過ごし、放課後を迎えた。
今日はスタバにて合流ということになっている。慎重を期して十一夜君とは別々に目的地へ向かう。ちなみに聖連ちゃんもすみれさんたちも合流しない。十一夜君と二人だけなのだ。それを思うともう昨日の件のせいで変な汗と動悸が止まらない。
待ち合わせのスタバに到着すると、十一夜君は先に来て席に着いていた。
わたしもコーヒーを受け取って席に着く。
十一夜君は相変わらずあれこれ食べ物を注文してむしゃむしゃ食べている。
「お疲れ様、十一夜君」
「おぉ」
ふふ。まただ。いつもの十一夜君。
「何?」
いささか怪訝そうに訊いてくる十一夜君だが、ついつい和んでしまうのだ。さっきまでの緊張感はどこへやら。でも仕方ない。
「なんにも?」
「またかぁ。ニヤニヤしちゃって、気になるんだよ」
結構気にしいなんだなぁ、十一夜君。わたしが勝手に和んでるだけで、別に大したことないのに。
「うーん。そんなに知りたい?」
「おぉ」
「んふふふふぅ」
また、おぉって。あははは。ぶっきらぼうすぎだよ。まぁ、こっちはしばらくの間はこのそっけない返事すら聞けなかったんだから。
「ほらまただ。何でそんなにニヤニヤするの?」
「だってぇ。十一夜君のさぁ、その、おぉっていうそっけない返事……ずっと聞けなかったんだよ、こっちはさぁ。なんか久しぶりで和むなって思ったら、自然とそうなっちゃうのっ」
って、おいおい。今度は何顔赤らめちゃってんの? 乙女かよ……って元乙女か。
いや、もうすっかり男の子でしょうがまったく。
「おぉ……」
おぉ、めっちゃ恥じらってる。こんなかわいい十一夜君は珍しい。
眺めているだけで何だか微笑ましくなってきてしまうよ。
「んふふふ」
「ちぇ、またか」
「あ、またちぇって言った。んふふふふぅ」
って、これじゃ一向に話が進まないよ、十一夜君。ってわたしが悪いのか。
「もう、これじゃ埒が明かないから進めるよ」
はいはい、そうですね。話を進めましょう。
「ごめんなさい。どうぞ」
十一夜君が場を仕切り直すかのように一度大きく呼吸をすると、わたしの方もちょっと気が引き締まる。
「まず、接触できた人物ってのは、本当に例の極秘機関に関わる人間だった」
そうか。さすがすみれさんの伝手だ。一体どんなコネなのかすごく気になるけど、なんか知ったら知ったでアチャーってなりそうで怖い。
「あ、やっぱりそうだったんだ」
「うん、それで黛君なんだが……どうやら本当に平行世界からやってきたってことのようだ」
「えぇっ?」
マスオさんばりに驚きの声が出てしまったが、そんなトンデモ話まさかホントにあるとでも? さすがにその話には無理があるんじゃないかな。
「まぁ、驚くのも無理はないと思うけど、どうも政府は本気で研究しているらしい。というのも、黛君より以前に実例があって、その人物はすでに他界しているらしいんだけど、その人物が最初に日本政府と接触して、黛君はその二代目ということになるらしい」
なんか急にSFじみた話になってきちゃったんだけど、やっぱり信じられないような話だなぁ。
「一体何のためにそんなことを⁉」
「ああ。どうやら向こうの世界はこっちの世界より技術が随分発達しているらしいんだが……あ、世界時計って分かる?」
世界時計ってあれか。世界の終わりを十二時として、それまで後どれくらいの時間かっていうのを示した象徴的な時計のことだよね。
「うん、まぁ、知ってるけど」
「そうか。それでその、向こうの世界は技術は発達しているのに世界時計はもう十二時の二分前とかを指しているらしいんだよ」
「ほぉほぉ。つまり世界の終末が近いと?」
「そういうことになるな」
「うーん、この二十一世紀にまさかの終末論……でもそれが黛君と何の関係が?」
「そこなんだけど。その接触できた人間が言うには、向こうの世界からこっちの世界に警鐘を鳴らしに来たっていうんだよ。それがどうも胡散臭いんだよなぁ」
「はぁ……そもそもの話が胡散臭い気がするんだけど?」
「うん、それを言っちゃったらまぁそうなんだけど。でもまぁ、黛君が平行世界からやってきたのが事実だと仮定してだよ。わざわざ交わることのない別の世界にやってきて警告することに何のメリットがあるっていうんだ? それに向こうの技術をこちらにもたらして、その結果こっちの世界の技術も進めてしまうことになったら、向こうと同じ道を辿らせるようなものじゃないか」
「はぁ~、なるほどぉ……確かにそれもそうだね。警告しにきた意味ないじゃん」
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