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#10 学園王子の軌跡
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なんとかセリカとの攻防を制した俺は、理性を取り戻した彼女が戻っていったのを確認して時計を見やる。
これから荷物を出すには中途半端な時間だし、かといって夕飯とするには早過ぎる。どうしたものかと逡巡した俺は、改めてこの男子寮を周ってみることにした。
部屋から出た俺は、適当に寮内をうろついてみる。一応、構造は覚えたので迷う事はない。とはいえ、構造だけじゃ分からない事もあるし、さすがに風呂などはセリカが入って説明するわけにもいかなかったので入り口前で説明された程度だ。なので、そういった部分を見ていこうと思う。
「──おや、君は……」
ふと、廊下で男子生徒となったり出くわした。
豪奢な金髪と大海のような碧眼を持つ美青年だ。俺がこの学園で出会った男子生徒の中でも、随一の金持ちオーラを纏っている。しかしそれが不思議な事に嫌味でないのだ。この男ならばそうなんだろう──そう誰もを納得させてしまう帝王のようなオーラだ。だが、それも彼の出自を鑑みれば至極当然だろう。
「編入生がいるとは聞いていたが、まさか君だったとはね」
「お前も、どこかの魔術学園に入学したとは聞いていたが、まさかフェイトだっとはな」
「はは、その不敬な口調、間違いなくレンみたいだな」
「なんだ? 丁寧な敬語とかにした方がいいか?」
「まさか。この国の王子にタメ口を使うのなんて、家族を除けばレンくらいのものだよ。そんな希少な君をわざわざ遠ざけるようなマネをするわけがないだろう?」
「相変わらず変な王子なことだ」
そう。彼こそが、この帝国の第一王子──セドリック=ラウス=クラウディアその人なのだ。
そんなこの国の重鎮たる彼に、なぜ俺がこんなに馴れ馴れしく接しているかというと、俺は彼と昔馴染みという関係性だからだ。
円卓会議第一位のアインは必然的に王宮に呼ばれる事も多々ある。しかしあの親バカが俺を一人にして留守にするわけもなく、俺も付いていく事は結構あった。
しかしよもや陛下とアインの会合に当時一般人の俺が交わるわけにもいかず、暇を持て余した俺が王宮内で出会ったのが彼──セドリックとその双子の妹のエリーゼだったというわけだ。
あの頃の俺は王子と王女の威厳など知る由も無かったため、それはもうガサツな態度で接したのだ。しかし彼等もまた、王宮という窮屈な世界しか知らず、俺という異分子は酷く新鮮に映ったようでそれから王宮に行くたびに目を盗んで三人で会っていたのだ。
「そういえば、エリーゼは今どうしているんだ?」
その可憐さと美貌から、帝国の至宝とまで呼ばれたエリーゼ。今にして考えてみれば、幼かったとはいえ、よくあそこまで彼女が懐いてくれたなと思わざるをえない。
「ああ、エリーゼなら今は帝都にある聖アスタライト女学院に通っているよ。彼女も君に会いたがっていたから、折を見て会ってくれると兄としてもありがたいな」
「そっか。まあ、もう少しして落ち着いたら機会を見て行ってみるよ。──というか、本当に同窓生なのか……なんか、変な感じだな」
「それは僕もだよ。君と話す時は、いつも王宮の庭園で三人でお茶会をしていたからね。それ以外の場所で話すのは、どこか新鮮だ」
「まあ、これからもよろしく頼むよ。折角同窓生になったんだし、仲良くやっていこうぜ」
「それはむしろ僕のセリフだよ。この学園でも、やっぱり窮屈な思いをしていたんだ。レンと会えたのなら僥倖というものだ。──そうだ、どうせだから僕がこの寮を案内してあげようか?」
「……そうだな、なら是非に」
そうして俺は暫くセドリックと共に寮を周り、お付きの生徒などから要警戒されるのだが、気にしても仕方ないだろう。立場はどうあれ、彼が俺にとってアインの目を盗んで得た、無二の友なのだから。
これから荷物を出すには中途半端な時間だし、かといって夕飯とするには早過ぎる。どうしたものかと逡巡した俺は、改めてこの男子寮を周ってみることにした。
部屋から出た俺は、適当に寮内をうろついてみる。一応、構造は覚えたので迷う事はない。とはいえ、構造だけじゃ分からない事もあるし、さすがに風呂などはセリカが入って説明するわけにもいかなかったので入り口前で説明された程度だ。なので、そういった部分を見ていこうと思う。
「──おや、君は……」
ふと、廊下で男子生徒となったり出くわした。
豪奢な金髪と大海のような碧眼を持つ美青年だ。俺がこの学園で出会った男子生徒の中でも、随一の金持ちオーラを纏っている。しかしそれが不思議な事に嫌味でないのだ。この男ならばそうなんだろう──そう誰もを納得させてしまう帝王のようなオーラだ。だが、それも彼の出自を鑑みれば至極当然だろう。
「編入生がいるとは聞いていたが、まさか君だったとはね」
「お前も、どこかの魔術学園に入学したとは聞いていたが、まさかフェイトだっとはな」
「はは、その不敬な口調、間違いなくレンみたいだな」
「なんだ? 丁寧な敬語とかにした方がいいか?」
「まさか。この国の王子にタメ口を使うのなんて、家族を除けばレンくらいのものだよ。そんな希少な君をわざわざ遠ざけるようなマネをするわけがないだろう?」
「相変わらず変な王子なことだ」
そう。彼こそが、この帝国の第一王子──セドリック=ラウス=クラウディアその人なのだ。
そんなこの国の重鎮たる彼に、なぜ俺がこんなに馴れ馴れしく接しているかというと、俺は彼と昔馴染みという関係性だからだ。
円卓会議第一位のアインは必然的に王宮に呼ばれる事も多々ある。しかしあの親バカが俺を一人にして留守にするわけもなく、俺も付いていく事は結構あった。
しかしよもや陛下とアインの会合に当時一般人の俺が交わるわけにもいかず、暇を持て余した俺が王宮内で出会ったのが彼──セドリックとその双子の妹のエリーゼだったというわけだ。
あの頃の俺は王子と王女の威厳など知る由も無かったため、それはもうガサツな態度で接したのだ。しかし彼等もまた、王宮という窮屈な世界しか知らず、俺という異分子は酷く新鮮に映ったようでそれから王宮に行くたびに目を盗んで三人で会っていたのだ。
「そういえば、エリーゼは今どうしているんだ?」
その可憐さと美貌から、帝国の至宝とまで呼ばれたエリーゼ。今にして考えてみれば、幼かったとはいえ、よくあそこまで彼女が懐いてくれたなと思わざるをえない。
「ああ、エリーゼなら今は帝都にある聖アスタライト女学院に通っているよ。彼女も君に会いたがっていたから、折を見て会ってくれると兄としてもありがたいな」
「そっか。まあ、もう少しして落ち着いたら機会を見て行ってみるよ。──というか、本当に同窓生なのか……なんか、変な感じだな」
「それは僕もだよ。君と話す時は、いつも王宮の庭園で三人でお茶会をしていたからね。それ以外の場所で話すのは、どこか新鮮だ」
「まあ、これからもよろしく頼むよ。折角同窓生になったんだし、仲良くやっていこうぜ」
「それはむしろ僕のセリフだよ。この学園でも、やっぱり窮屈な思いをしていたんだ。レンと会えたのなら僥倖というものだ。──そうだ、どうせだから僕がこの寮を案内してあげようか?」
「……そうだな、なら是非に」
そうして俺は暫くセドリックと共に寮を周り、お付きの生徒などから要警戒されるのだが、気にしても仕方ないだろう。立場はどうあれ、彼が俺にとってアインの目を盗んで得た、無二の友なのだから。
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