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本編
第22話 決めゼリフ品評会
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「我が真の力を思い知るが良い!」
「⋯⋯ぐふっ! ははは⋯⋯ふははははは! どうやらこれまでのようだ⋯⋯。だが勇者よ! 人の子とは光と闇を併せ持つ者! お前らが人の身である以上、我は不滅ッ! 必ずや復活を果たし、今度こそこの世界を手中に収めてやろう!」
と、時田が両手を激しく動かしながらわけのわからないことを言い出した。ローテーブルの向かいに座っていた鷲津が回り込んできて、時田の傍に座り直してから肩に手を置く。
「辛いことがあったら、いつでも相談しろと言っただろう」
「違うから!」
「じゃあなんなのよ。何事かと思ったじゃないの」
巻原はデスクチェアをぐるりと回転させた。巻原のPCには火の国を治めるレオンハルト王の子供である、ユグノス・レオンハルトのデザインが映っていた。想像通りの好青年に仕上がっていたので、時田は思わずニヤリとする。
「え、今度はなんで笑ってんのよ⋯⋯怖いんだけど」
「そんなガチめに引かれると傷つくんでやめてくださいよ」
台所でやかんに火をかけていた金星がとことこと時田の元へとやってきて、ローテーブルの上に置かれた赤いPCの画面を覗き込んだ。
「ここで決めゼリフ。要検討」
「そういうこと!」
「どういうことだ」
「どういうことよ」
「頼む! 決めゼリフをみんなに考えて欲しい! 全っ然思いつかん!」
巻原が溜息を吐く。時田に呆れて溜め息を吐く。既にお決まりになりつつあるこの流れが巻原は嫌だった。それでも言わねばならない思いに駆られてしまう自分に巻原は心の中でさらに溜め息を吐く。
「あんた⋯⋯それはライターとしてどうなのよ」
「まあこれはみんなのセンスを参考にさせてもらおうかなという狙いもあるので、ご容赦いただきたいところっすね」
「とりあえず聞いてやろう。こいつは煮詰まると声に出して打開しようとするからな。放っておけばいつまで経ってもうるさいだけだ」
という時田の理解者の提言もあり、今回も時田の話に付き合うこととなった。チームが本格的に動き出した今、皆それぞれの制作により熱中するようになっていたため、良いのか悪いのか時田の癇癪を煩わしく思う瞬間が多くなっていた。
数分後。
四人で黒のローテーブルを囲み、金星が入れてくれたお茶を一斉に啜る。
「さて」
時田が一言、短く発言して視線を集めた。
「みんなにはこれからボスの設定を聞いてもらう。で、その設定から思い付く決めゼリフを考えてもらう。あ、決めゼリフは二種類ね。勇者と戦う前と戦った後」
「なるほどね。ちょっと面白そうじゃない。ノームのイケオジ化に反対された恨みもあるから、今回は本気で考えるし、本気でこき下ろそうと思う。金星ちゃんも例外じゃないからね」
「根に持ちすぎだろ。いつまで同じことを」
「ま、真希先輩ひどいです⋯⋯」
「これは守備範囲の狭すぎるあんた達への洗礼よ」
文句を言う鷲津と金星をジィッと睨む巻原。よほどお気に召さなかったらしい。しかしそんなことはどうでも良いと言わんばかりに、時田がパンと手を叩いた。
「じゃあやりましょう!」
「今回のボスの設定はなんと! 勇者の恋人です。とある者の外法によって魔王化させられてしまったという背景があります」
「⋯⋯えっぐいなおい」
「金星優勝」
「な、なんでですか!」
各々がそれぞれの感想を述べる中、時田が説明を続ける。
「良いですか? オレが『勇者はついに魔王の元へと辿り着いた⋯⋯そう。行方不明だった恋人の元に』と言いますから、そしたら戦闘前のセリフを言ってください。そしたら今度は『魔王は膝をついた。勇者が差し向ける剣の前で⋯⋯』と言うので、戦闘後のセリフを言ってください」
「大喜利じゃん」
ジト目の巻原に、
「せっかくなので楽しくいきましょう。皆は息抜きになって、オレは参考にさせてもらう感じのウィンウィンってことで」
と言いながらニッと笑う時田。
「時田。お前をライターの座から引き摺り下ろすつもりでいかせてもらうぞ」
「う、うちもそんな感じでいきます!!」
「イケオジノームを受け入れられないライターに未来がないことを思い知らせてあげるわ」
三人の準備は万端ということがわかったところで、いよいよ決めゼリフ品評会がその幕を上げようとしていた。
「⋯⋯ぐふっ! ははは⋯⋯ふははははは! どうやらこれまでのようだ⋯⋯。だが勇者よ! 人の子とは光と闇を併せ持つ者! お前らが人の身である以上、我は不滅ッ! 必ずや復活を果たし、今度こそこの世界を手中に収めてやろう!」
と、時田が両手を激しく動かしながらわけのわからないことを言い出した。ローテーブルの向かいに座っていた鷲津が回り込んできて、時田の傍に座り直してから肩に手を置く。
「辛いことがあったら、いつでも相談しろと言っただろう」
「違うから!」
「じゃあなんなのよ。何事かと思ったじゃないの」
巻原はデスクチェアをぐるりと回転させた。巻原のPCには火の国を治めるレオンハルト王の子供である、ユグノス・レオンハルトのデザインが映っていた。想像通りの好青年に仕上がっていたので、時田は思わずニヤリとする。
「え、今度はなんで笑ってんのよ⋯⋯怖いんだけど」
「そんなガチめに引かれると傷つくんでやめてくださいよ」
台所でやかんに火をかけていた金星がとことこと時田の元へとやってきて、ローテーブルの上に置かれた赤いPCの画面を覗き込んだ。
「ここで決めゼリフ。要検討」
「そういうこと!」
「どういうことだ」
「どういうことよ」
「頼む! 決めゼリフをみんなに考えて欲しい! 全っ然思いつかん!」
巻原が溜息を吐く。時田に呆れて溜め息を吐く。既にお決まりになりつつあるこの流れが巻原は嫌だった。それでも言わねばならない思いに駆られてしまう自分に巻原は心の中でさらに溜め息を吐く。
「あんた⋯⋯それはライターとしてどうなのよ」
「まあこれはみんなのセンスを参考にさせてもらおうかなという狙いもあるので、ご容赦いただきたいところっすね」
「とりあえず聞いてやろう。こいつは煮詰まると声に出して打開しようとするからな。放っておけばいつまで経ってもうるさいだけだ」
という時田の理解者の提言もあり、今回も時田の話に付き合うこととなった。チームが本格的に動き出した今、皆それぞれの制作により熱中するようになっていたため、良いのか悪いのか時田の癇癪を煩わしく思う瞬間が多くなっていた。
数分後。
四人で黒のローテーブルを囲み、金星が入れてくれたお茶を一斉に啜る。
「さて」
時田が一言、短く発言して視線を集めた。
「みんなにはこれからボスの設定を聞いてもらう。で、その設定から思い付く決めゼリフを考えてもらう。あ、決めゼリフは二種類ね。勇者と戦う前と戦った後」
「なるほどね。ちょっと面白そうじゃない。ノームのイケオジ化に反対された恨みもあるから、今回は本気で考えるし、本気でこき下ろそうと思う。金星ちゃんも例外じゃないからね」
「根に持ちすぎだろ。いつまで同じことを」
「ま、真希先輩ひどいです⋯⋯」
「これは守備範囲の狭すぎるあんた達への洗礼よ」
文句を言う鷲津と金星をジィッと睨む巻原。よほどお気に召さなかったらしい。しかしそんなことはどうでも良いと言わんばかりに、時田がパンと手を叩いた。
「じゃあやりましょう!」
「今回のボスの設定はなんと! 勇者の恋人です。とある者の外法によって魔王化させられてしまったという背景があります」
「⋯⋯えっぐいなおい」
「金星優勝」
「な、なんでですか!」
各々がそれぞれの感想を述べる中、時田が説明を続ける。
「良いですか? オレが『勇者はついに魔王の元へと辿り着いた⋯⋯そう。行方不明だった恋人の元に』と言いますから、そしたら戦闘前のセリフを言ってください。そしたら今度は『魔王は膝をついた。勇者が差し向ける剣の前で⋯⋯』と言うので、戦闘後のセリフを言ってください」
「大喜利じゃん」
ジト目の巻原に、
「せっかくなので楽しくいきましょう。皆は息抜きになって、オレは参考にさせてもらう感じのウィンウィンってことで」
と言いながらニッと笑う時田。
「時田。お前をライターの座から引き摺り下ろすつもりでいかせてもらうぞ」
「う、うちもそんな感じでいきます!!」
「イケオジノームを受け入れられないライターに未来がないことを思い知らせてあげるわ」
三人の準備は万端ということがわかったところで、いよいよ決めゼリフ品評会がその幕を上げようとしていた。
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