ファンプレ! 〜ファンタジー・ロールプレイング〜

上坂 涼

文字の大きさ
32 / 37
本編

第22話 決めゼリフ品評会

しおりを挟む
「我が真の力を思い知るが良い!」
「⋯⋯ぐふっ! ははは⋯⋯ふははははは! どうやらこれまでのようだ⋯⋯。だが勇者よ! 人の子とは光と闇を併せ持つ者! お前らが人の身である以上、我は不滅ッ! 必ずや復活を果たし、今度こそこの世界を手中に収めてやろう!」
 と、時田が両手を激しく動かしながらわけのわからないことを言い出した。ローテーブルの向かいに座っていた鷲津が回り込んできて、時田の傍に座り直してから肩に手を置く。
「辛いことがあったら、いつでも相談しろと言っただろう」
「違うから!」
「じゃあなんなのよ。何事かと思ったじゃないの」
 巻原はデスクチェアをぐるりと回転させた。巻原のPCには火の国を治めるレオンハルト王の子供である、ユグノス・レオンハルトのデザインが映っていた。想像通りの好青年に仕上がっていたので、時田は思わずニヤリとする。
「え、今度はなんで笑ってんのよ⋯⋯怖いんだけど」
「そんなガチめに引かれると傷つくんでやめてくださいよ」
 台所でやかんに火をかけていた金星がとことこと時田の元へとやってきて、ローテーブルの上に置かれた赤いPCの画面を覗き込んだ。
「ここで決めゼリフ。要検討」
「そういうこと!」
「どういうことだ」
「どういうことよ」
「頼む! 決めゼリフをみんなに考えて欲しい! 全っ然思いつかん!」
 巻原が溜息を吐く。時田に呆れて溜め息を吐く。既にお決まりになりつつあるこの流れが巻原は嫌だった。それでも言わねばならない思いに駆られてしまう自分に巻原は心の中でさらに溜め息を吐く。
「あんた⋯⋯それはライターとしてどうなのよ」
「まあこれはみんなのセンスを参考にさせてもらおうかなという狙いもあるので、ご容赦いただきたいところっすね」
「とりあえず聞いてやろう。こいつは煮詰まると声に出して打開しようとするからな。放っておけばいつまで経ってもうるさいだけだ」
 という時田の理解者の提言もあり、今回も時田の話に付き合うこととなった。チームが本格的に動き出した今、皆それぞれの制作により熱中するようになっていたため、良いのか悪いのか時田の癇癪を煩わしく思う瞬間が多くなっていた。

 数分後。
 四人で黒のローテーブルを囲み、金星が入れてくれたお茶を一斉に啜る。
「さて」
 時田が一言、短く発言して視線を集めた。
「みんなにはこれからボスの設定を聞いてもらう。で、その設定から思い付く決めゼリフを考えてもらう。あ、決めゼリフは二種類ね。勇者と戦う前と戦った後」
「なるほどね。ちょっと面白そうじゃない。ノームのイケオジ化に反対された恨みもあるから、今回は本気で考えるし、本気でこき下ろそうと思う。金星ちゃんも例外じゃないからね」
「根に持ちすぎだろ。いつまで同じことを」
「ま、真希先輩ひどいです⋯⋯」
「これは守備範囲の狭すぎるあんた達への洗礼よ」
 文句を言う鷲津と金星をジィッと睨む巻原。よほどお気に召さなかったらしい。しかしそんなことはどうでも良いと言わんばかりに、時田がパンと手を叩いた。
「じゃあやりましょう!」
「今回のボスの設定はなんと! 勇者の恋人です。とある者の外法によって魔王化させられてしまったという背景があります」
「⋯⋯えっぐいなおい」
「金星優勝」
「な、なんでですか!」
 各々がそれぞれの感想を述べる中、時田が説明を続ける。
「良いですか? オレが『勇者はついに魔王の元へと辿り着いた⋯⋯そう。行方不明だった恋人の元に』と言いますから、そしたら戦闘前のセリフを言ってください。そしたら今度は『魔王は膝をついた。勇者が差し向ける剣の前で⋯⋯』と言うので、戦闘後のセリフを言ってください」
「大喜利じゃん」
 ジト目の巻原に、
「せっかくなので楽しくいきましょう。皆は息抜きになって、オレは参考にさせてもらう感じのウィンウィンってことで」
 と言いながらニッと笑う時田。
「時田。お前をライターの座から引き摺り下ろすつもりでいかせてもらうぞ」
「う、うちもそんな感じでいきます!!」
「イケオジノームを受け入れられないライターに未来がないことを思い知らせてあげるわ」
 三人の準備は万端ということがわかったところで、いよいよ決めゼリフ品評会がその幕を上げようとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...