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しおりを挟むミナリスも夏休みは農家巡りの旅に出るそうで、折角なので一緒に旅する事にした。
「ところで農家ってイケメン多い?」
「そこは一応貴族を探しなさいよ」
「別に私は家の後継ではないので。誠実で出来ればイケメンであれば問題ないのですよ」
私には兄がいるので家は継ぐ必要はない。本来ならバンズの家に嫁ぐ予定だったがそれも無くなった。
気楽なお一人様もいいけれど、やはり誰かと一緒に暮らす方がいいよねえ。ちなみにミナリスにはちゃんとした婚約者がいる。勿論誠実な。
「私もミナリスみたく良い男性を見つけたいと思います」
「何それ。宣言?」
「こう言っておけば言霊発動するかなと思って」
「言霊って発動させるものだっけ」
国の地図を机の上に広げてアレコレ言ってる女子高生(?)がここに居ますよ。
「この辺はまだ行ったことないから行こうと思ってるの」
「じゃあこの村の近くで……あ、この街が大きいね。珍しい魔法持ちも居るかな」
「それならこっちも行くからこの街がいいわよ。異国からの旅人も多いから」
「おお、なるほど!」
なんだろうね、旅の計画ってなんでこんなに楽しいんだろう。
そう言えば旅行なんてついぞしてなかったな。私はこれからの楽しい旅路に心を躍らせた。
更に地図を食い入るように見つめる。
「う~んと、この辺も行ってみたいなあ」
「ああそこは……」
「そこには大きな湖があるからね。夏に行くなら泳げるからいいと思うよ」
「そうなの?……って誰!?」
突如割って入る第三者の声にギョッとして顔を上げた。そこには見知らぬ男性が一人。
「いや本当に誰なの?」
「初めまして。昨日転校してきたボイスだ」
「なるほど、いいお声ですね」
これはいわゆるイケボという奴だろうか。実に耳触りのよいお声で。でもって珍しい紫の髪と瞳をマジマジと見つめた。こんなイケメン、会えば絶対に忘れる事は無いだろう。つまり初対面だ。
「転校生ですか?三年生で?」
「キミがハゲ魔法の持ち主?」
人の話を聞け。
私の質問を無視して質問を返してくる。これは自己中男ならではだよね。イケメンイケボで高得点だったけれど、いきなりマイナスです。
「そうですけど」
「そうかあ……じゃあ握手して」
「なぜに」
なぜいきなり握手なんですかね!?怪しさしかないんですけど!?
「ん~っとねえ、俺、大魔法使いなんだよね」
「あ、思い出した」
怪しさ全開の自己紹介に対して、ミナリスが思い出したとポンと手を叩いたのだった。
「ボイスって名前でその髪と瞳の色。そうよそうよ、この国と言うか世界一の大魔法使い!噂では聞いてたけど……え、本物?」
「知っててもらえて光栄だよ。そう、俺がその世界一の大魔法使いね。んじゃあ握手して」
だからなんで握手なんだよ!!
差し出される手に警戒して、ちょっと身を引いた時だった。
バーンッ!!
教室の扉が物凄い音を立てて開かれた。
そして……
「シーラあぁっ!!!!」
私の名を叫びながら、そいつは教室に入って来たのだった。
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