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しおりを挟む「質問:あなたはハゲが好きですか」
「……別に好きでも嫌いでもないです。よほど奇抜な髪形でもないかぎり気になりません」
「質問:どういう念じ方でハゲさせてますか」
「念じて……ません。ハゲてしまえと思ってるだけでしょうか」
「質問:バンズに対してはかなりの恨みを抱いて魔法をかけましたか?」
「まあ……それなりには」
「質問:あなたはハゲマニアですか?」
「いやだから、好きでも嫌いでもないから。マニアなわけあるか」
なんなのこれ。避けるの一番とか考えてたのに、朝から絡まれてるんですけど。大魔法使いに。
私としては無視を貫きたかった。のだけど、私の席を占拠されてて無視できる方法があるのなら知りたいわ。さぼれってか?学校さぼれってか?皆勤賞捨て難し!
そしてなぜか質問攻め。なぜ、ハゲ好きかどうかを何度も聞く!?
「魔法の発動条件をまず知っておかないとね」
「じゃあ私がハゲ好きハゲマニアだったら好きになるんですか?マニアになるんですか」
「なるよ」
即答。すげーな大魔法使い。大魔法使いってチョチョイと簡単に魔法使うと思ったのだけど。結構努力(?)してんのね。
「ちなみに惚れ魔法は握手が必須。相手の心を掴みたいと思いながら握手するんだよ。試しに俺と握手してみてよ」
「聞いてないしどうでもいいしネタバレしてなお私にかけようとするのどうなの」
「人の心に関わる魔法を使う時の絶対条件。勝手に魔法をかけない、相手の承諾を得てからやる。これ魔法教会が設定してる絶対ルールね。破ると大変な事になる」
「大変なこととは?」
「さあ?自分に跳ね返るとか聞いた事あるけどよく分からないね」
「跳ね返る……惚れ魔法なら自分に惚れる、とかですか?」
「そうかもね」
なにそれ恐い。自分を好きになるって……あれ、それただのナルシストじゃないか。魔法かかってなくても一定数存在してね?
思って私は横を見た。
今現在、私は自分の席の前……どこかへ逃げたミナリスの席に座っている。私の席、未だにボイスに占拠されてるからね。自分の席を取り返したら無視を徹底してやろうという私の思惑は、完全に読まれてるわけだ。
で、そんなわけで私の席はボイスが占領してて……その右隣もまた、席の主が不在している。逃げたとも言うが。
現在その席にはとあるハゲが座っている。
──とあるも何も、バンズなんだけどさ。
「は~、僕の髪型、なんて素敵なんだろう……。これブーム来るよね、絶対来るよね、というか来てる?既に来てる?え、僕ひょっとして先駆け?流行の先取り?最先端?ファッションリーダー?」
……手鏡で自分の顔というか頭見て、ずーーーっとブツブツ言ってるんですけど!?恐いんですけど!?
やばい、ハゲ魔法のせいでバンズが壊れた。本気で毛生えの魔法を探さないとまずいのでは!?
恐怖に青ざめていると、そんな私にボイスが「大丈夫だよ」と言った。何が大丈夫なんだろう。
「バンズにもね、ちょっとばかし魔法をかけたんだよね」
「聞きたくないですが一応聞いておきましょう。どんな魔法ですか?」
「何事にもポジティブシンキングになる魔法」
「どんな魔法やねん、最強か」
何事にも前向きになれるってそれ凄くないですか?
「でもそれも心に関わる魔法ですよね。バンズに了承を得たんですか?」
「得たよ」
「得たんだ」
「まあこんなの跳ね返っても気にならないんだけどね。俺はいつだってポジティブだから」
「そこは妙に納得です」
「だけど決まりは決まりだから。大魔法使いの俺が破ってしまったら世の秩序が乱れるからね」
「大魔法使いの立場ってのも大変ですね」
「ま、ルールを破ったところでバレなきゃいいんだけどね~」
確実にあれこれやってそうな発言だけど、そこはスルーしておこう。関わらない方が吉と見た。
「バンズがこの髪型を受け入れらるようになりたいって言うからさ。じゃあこれかなって魔法をかけたんだ」
「そうですか。じゃあもう毛生えの魔法はいいのかな」
「そこは前向きに見つけるか開発で検討お願いします!」
いきなり話に入って来るな、鏡見てたんじゃないんかい。
ビシッと挙手で勢いよくバンズが言って来たのでビクッとなったわ。
そうか、その髪型を受け入れるくらいに前向きな状態でも、髪は欲しいんだな。
「髪は無くとも死なないけれど、たくさんあるにこしたことはない」
なに名言みたく言ってるんだか。迷言よそれは。
「とりあえずハゲ魔法の解明を進めてるんだけどねえ……謎が多いんだよなあ」
腕を組み、顎に手を当てて考え込んだボイス。
椅子にもたれていた体を起こして私の方へと前かがみになる。
そしておもむろに
クイッ
と私の顎を持ち上げるのだった。
「んな!?」
「う~ん、何だろうなあ、魔力は微々たるもので強いわけではないし。風魔法しか持ってなかったのにどうしてこんな魔法に目覚めたのか……やはり意思の強さか?ならば毛生えも意思が強いと開花する?となればハゲてる者で意思が飛びぬけて強い者ならひょっとして……いやでもなあ……」
考えにふけるのはいいですけどね!
私の顎をクイッと持ち上げて、顔を覗き込みながらブツブツ言わないでいただけますか!?
近いんですけど!
イケメンが目の前なんですけど!
「何か奥に秘めたるものがあるのか……?」
ひいい!
更に顔を近づけて来て、鼻先がくっ付きそうになる寸前に私がギブアップした。
すなわち。
「お腹が減った!」
と叫んで立ち上がり、教室を後にしたのだった。
赤くなった顔、見られてないよね!?
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