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しおりを挟むはよ帰れと言い続けて早一ヶ月。ええ、一ヶ月ですよ!一ヶ月も居座ってやがるんですよ!
毎日懲りずに
「カレン、俺と結婚しよう」
「私はアイノです。結婚しません。はよ帰れロリコン」
「そんなキミも好きだ」
「病気か!?」
というやり取りをしていたりする。七歳の子供に何言わせるんだ!
いつの間にかお父さんもお母さんも生温い目で見るようになっていた。うん、止めるの諦めたか。諦める前に追い出してよこの変態を。
宿屋に泊まり続けたらお金がかかるだろうと、なぜか居候してるしな!確かにうちは広いけどな!自宅兼お店だからでっかいよ!一階は広い食堂だけどさ、二階はまるまる居住空間だからね!
だからってこんな怪しい男を居候させるか!?
毎晩食卓を共にするか!?
──必ず両親と晩酌しては
「アイノ──いえ、カレンは本当に可愛らしい女性だったんです。俺のお嫁さんになるんだと微笑みながら言うカレンの愛らしさと言ったら……」
「よし、そこになおれ。今すぐ調理してやろう」
「あらあなた駄目ですよ、そんなの誰も食べないんですから。包丁が錆びるだけです」
「ふ、俺の刃の錆にしてやろう」
「だから錆びさせないでください」
というやり取りを、母もまじえて三人でやっている。この酔っ払い共が!
「お父さん落ち着いてよ。トワロさんは『カレン』さんの話をしてるんだよ。アイノのことじゃないよ?」
と、子供らしくブリッと小首を傾げて言えば、
「そうだよなあ!アイノはカレンじゃないもんなあ!こんな変態の婚約者じゃないもんなあ!でもアイノもいつかは恋をして男作って結婚して……うおおおお!駄目だ、アイノは俺のだあああ!!」
「──お父さんうるさい」
最後は父親が涙して終わるという。なんだこの最後の晩餐風景は。
「トワロさんもいい加減諦めてください。私はカレンさんじゃありません。そもそも似てるんですか?」
「いや、全然」
そうだよねえ。似てないの分かってて聞いたから。
「カレンはとても色白で整った容姿をしていた。菫色の髪がよく似合っていて、本当に美しかった……。キミとは全然違うな」
「悪かったな色黒で整ってない容姿で髪が茶色で似合ってなくてよ」
容姿差別する男、まじ軽蔑~!
ジトっと睨みつけたら慌てたように首を振るトワロ。
「いや、アイノも可愛いよ!カレンとは全く別のタイプの愛らしさを持ってる」
「おうおう分かってんじゃねえかトワロ。そうだぜうちのアイノは誰よりも可愛いんだ」
横から煩い、親バカ。
「俺はそもそもカレンの容姿に惚れたのではない。カレンはな、とても優しくて、思いやりがあって……でも結構お転婆で。ツンデレが最高だったんだ」
行き着くとこはツンデレか。やっぱ変態だな、トワロは。
というか、今サラッと言ってのけたな。
「惚れた……カレンさんのこと、本当に好きだったんですね」
「だからそう言ってるだろ?」
「婚約者という存在に意地になってるのかと」
「意地で俺は家を捨てるような男ではない!心から愛し結婚したいと思っていたのはカレンだけなんだ!」
そして爆弾発言なさいましたね。
「家、捨てた?」
「そう。家、捨てた」
私の思わず出た片言しゃべりに。
律儀に返してくれたトワロ。
おま……マジですかい。
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