婚約者が親友と浮気してました。婚約破棄だけで済むと思うなよ?

リオール

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3、

 
 
「やあミーシャ、今帰りかい?」

 授業が終わり、帰ろうとしたところでカルシスと出くわした。クラスは違えど学年は同じなのだから、こうやって帰宅が同じになるのは珍しくないことだ。

 そしていつもなら……

「ええカルシス。それじゃあね」
「え、ミーシャ!?」

 驚いた顔で私の名前をカルシスが呼ぶ。

「なあに?」
「え、いや……その……」

 いつもなら。
 私は自分の馬車に一緒に乗ろうと誘う。そしてカルシスの伯爵邸に寄ってから、私の──公爵邸に帰るのが当然の流れだった。

 だから私が誘わない事に驚いたのだ。

 本当は気持ちを押し殺して一緒に帰るべきなのだ。怪しまれない為にはそうすべきだと分かってる。
 それでもどうにも我慢できないものだってあるのだ。

 きっと今一緒に馬車に乗ろうものなら……カルシスと一緒に、狭い空間である馬車に乗ってしまったら。

 吐く自信がある。

「ごめんなさい、今日は体調が悪くて。早く帰りたいの」
「あ、ああ、そうか、それは大変だ。早く帰ってゆっくり休むんだよ」

 そう言うカルシスの表情は、心底心配してますというようで。昼の情事を見なければ、きっと私はとても嬉しかった事だろう。馬鹿みたいに、なんて優しい婚約者だとウットリしてたことだろう。

 でももう違う。今の私は違う。
 私は婚約者の裏切りを知ってしまった。もう、無条件に婚約者を愛した馬鹿な娘は、どこにも居ないのだ。

 それでも今は耐えなければいけない。内心歯軋りをしていても、表面上はカルシスに申し訳なさそうな顔をしなければいけない。

 その時がくるまで。
 私は演じる事を決意する。

 出来るだろうか?
 一抹の不安がよぎるのは、このグツグツと煮えくり返るはらわたのせいか。

 ──出来るかどうかじゃない。やるんだ。

 弱音が出そうになる己の心を叱咤しながら、私は決意を胸に馬車に乗り込むのだった。





 音を立てて走り去る馬車。格上の公爵家が馬車は、流石に我が伯爵家のそれより数段大きく立派だ。乗り心地も最高の代物。

 今日はそれに乗って帰りたい気分だったので、ミーシャを待っていた。会えば必ず彼女は同席を提案してくるから。

 だからまさか、誘われないなんて思わず。驚いてしまった。

 遠ざかる馬車を見送りながら、まあそんな事もあるよなと俺は思いながら。

「ふうん……?」

 眉をしかめて小さく呟くのだった。

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