お約束の異世界転生。計画通りに婚約破棄されたので去ります──って、なぜ付いてくる!?

リオール

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「私、女心をもてあそぶ様な奴と結婚する趣味無いので、お断りします」

 全力でお断りします!
 叫んで私は走り出した!何処へって?自分ちの馬車のあるとこまでだよ!

「ラミ!待つんだ!」
「待ちません!婚約破棄お受けしました、追放もお受けしました!家に戻って準備してサッサと出て行きます!アラン様もお元気……でなくていいです!禿げて滅びろ!」
「ほろ……!?滅びろはともかく禿げへの呪いはやめろ!」

 滅びるより禿げる方が嫌なんだ、男の人って大変ね。ってそんな事はどうでもいいわ。

 私は裸足のせいで足裏が痛いけれど、どうにか全力で走る!それを王太子は追いかけて来る!何でだ!

 そして長い階段に差し掛かったところで……

「待つんだラミ!!」
「きゃあっ!?」

 あまりに勢いよく腕を掴まれたせいで。
 その反動で。

 思い切り足を踏み外した私は、あろうことか王太子と共に階段から落ちる!

 ……あ、これヤバイやつ。

 全てがスローモーション。
 ゆっくりなのに、どうにも対処できない!

 ただ落ちる私の目には、驚いた目で私を見つめ手を伸ばしてくるアラン王子。金髪碧眼の見目麗しき王子が視界いっぱい。

 ああ、くそう……やっぱりいい男だよなあ。見た目だけはいいんだよなあ。やった事は許せないし、このまま死んだらそれこそ呪ってやりたいけれど。

 でも──

 何かを考えようと思って。
 けれど思考はそこでプツンと消えた。

 衝撃と共に、私の世界はブラックアウトしたのだった。





・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・





 死んだのかな?

 あんな高くて長い階段を落ちたんだから、やっぱり死んだんじゃないのかしら。
 死ぬのはこれで二度目だが、どうして死とはこんなにも冷たいものなのだろう。

 悲しいような苦しいような。

 けれど意識があるのが不思議。
 ひょっとしなくても、またどこかの世界に転生したのだろうか?

 そうかもしれない。
 そうなのかもしれない。

 もしそうならば。

私はふとある世界を思い描く。

 どうか神様、また転生するならば。

私は願う。

 また、地球人に転生させてください──

 そう願った瞬間、何かが聞こえた気がした。

(ピッピッピッ……)

 笛の音?いいえ違う、こんな音じゃない。

(ピッピッピッピッピッピッ……)

 知らない音。けれどどこかで聞いた事ある音。聞き覚えのある音。
 私はこの音を知っている。

 同時に別のものが聞こえた。

『……ミ!ラミ!』

 これは声だ。私を呼ぶ声。
 まだ私は生きてるのだろうか?ではこの音は何なのか?

 体は動かない。動かないまま内心首を傾げた瞬間。

「……み!」

 また、声が聞こえた。
 煩いなと思って眉をしかめた瞬間──!

「!?愛美(まなみ)!?看護師さん!愛美の眉が動きました!」
「先生呼んできます!!」

 かつての名を。
 とても懐かしい名を呼ばれて。

 私の意識は一気に覚醒するのだった──





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