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しおりを挟むそしてその5秒は訪れない。
「──な~にやっとんじゃお前らは」
ひょえあうあ!?
突如聞こえた声と同時。ベリッとオーバン様と引きはがされるのだった!
バッと目を開ければ、眉間に青筋立てたその人が──
「お、伯父様!?」
ノウタム公爵伯父様が立って居たのだった!!
「おおお伯父様!?」
「チッ」
慌てる私を伯父様は顔を真っ赤にして見る。それ怒りの赤ですよね?
「お前らあ!王宮内で何やっとるんだ、場所をわきまえろ!いや何処であっても許さん!そしてそこの黒騎士ぃ!今舌打ちしたな!?」
ひー、怒られたあ!そりゃ怒るよね、私も不謹慎でした御免なさい!
「俺は白騎士団長です」
「んなこた知ってるわい、この腹黒め」
すっかり口が悪くなってる伯父様はプリプリ怒りながら、オーバン様に説教垂れている。その間に私の頭も冷えるというもの。
あああ、危なかった危なかった、イケメンに流されるところだった。
確かに私はオーバン様に好意を抱いてるが、まだお付き合いも何も始まってない状態、しかも王宮内でとんでもないことをしでかすところだった。これでは噂は真実だと言ってるようなものではないか。
自重しなければと自分に言い聞かせていたところで。
ふと視界に入った物体が一つ。
──あれ?
未だ説教し続ける伯父様の背後。何かが居るのだ。
別に心霊映像とかではないよ。確かにその人は存在している。のだが。
なんだかどこかで見覚えがあるような無いような……。
「あの、伯父様……」
「オーバン、大体お前はだなあ……!」
「あーはいはい、はいのはいっと」
「聞けえ、私のありがたい話を!」
「あ、あの、あのう!伯父様……!」
「聞いてますよ聞いてます、今日も白い髪が眩しいですねえ」
「白くない、これは白銀色なのだ!」
「いやそれ白髪ですから」
「私はまだ若いから白銀だあ!」
聞けえ、私の声を!伯父様、オーバン様に聞けと言う前に私の声を聞いてください!
「伯父様!」
精一杯大きな声を出したところでようやく気付いてくださった伯父様が、パッと私を見た。
と思ったら泣きそうな顔で駆け寄って来た。バシバシ肩を叩かれる。痛い。えええ。
「おおバルバラ、オーバンに酷いことされたねえ。もう大丈夫だから、この獣は二度とお前に近づけさせないからな!私が責任もってお前に相応しい相手を見つけてやろう」
「いや、別にその必要は……」
「俺以上に相応しい人物なんて居ないでしょう」
「黙らっしゃい!お前なんぞに可愛い娘をやってたまるか!」
「いや私は伯父様の娘では……」
「構いませんよ、かっさらいますから」
「やだこの人、誘拐宣言したわ、恐~い!ちょっと誰かあ、ここに誘拐犯がいますよー!」
「まだ誘拐してません。そしてなぜオネエキャラになるんですか」
「いや、あのですね、お二人とも私の話を聞いて……」
これ収拾つくの!?この二人いつもこんな漫才してるの!?これ私どこにツッコミ入れて割り込めばいいの!?
そこでハッと思い出す。そうだ、ノウタム伯父様の奥方、つまりは伯母様。出番無いけど公爵家にご厄介になってる間に色々教えてくださったっけ。
その中に伯父様が暴走した時の止め方なんてのもあったわ。教えて貰った時は『?』だったんだけど、今なら。今なら分かる、その使い道が!
「伯父様」
「ん、なんだいバルバラ?」
ようやく私に意識が向いた伯父様の前にスッと私は──こぶし大の石を持ち上げた。どこから出したとかは言いっこ無しだ。
なんだ?と訝し気に見つめる伯父様の目の前で!
メキャアッ!!
「ひょえっ!?」
石を粉々に砕くのだった!!
呆然と私を見つめる伯父様に、ニ~ッコリ微笑んであげた。
「お話、聞いていただけますか?」
と問えば。
コクコクと素直に頷く伯父様が出来上がるのだった。流石伯母様、伯父様の扱い方を心得てらっしゃる。
本当は石じゃなくて石に似た作り物なんだけどね。これを本物だと思われて怪力女だとオーバン様に勘違いされたら……もうこの恋は終わりじゃないかなあ。
ちょっと不安になってオーバン様を見たら、肩を震わせて笑っていた。まったく心配なかったね。
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