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ああ憂鬱、すっごく憂鬱、とんでもなく憂鬱、嫌になるくらいに憂鬱。
これでもかってくらいに憂鬱です、という顔をしながら私は登城した。婚約者である王太子に会うために。
公爵家令嬢の私と王太子の婚約が決まったのは、まだ幼い頃の話。
初めて会った時のことはあまり覚えてないのだけど、確か初対面で王太子が言ったんだっけ。
『お前みたいなブスが俺の婚約者だと!?冗談ではない!!』
──まあ子供でしたからね。そして当時の私はソバカスいっぱい、元気いっぱい、体重いっぱい、の【3いっぱい】でしたからね。
まだ『外見より中身が大事だ!』なんて大人な年齢じゃない子供ならば、そんな事を言うのも仕方ないもの。
思いっきり泣いたけどね。でもって『ざけんな!こっちだって好きで婚約するわけじゃねえわ!立場上仕方なく、無礼で不遜なお前と婚約してやるんだ、有難く思え!!』って言ったっけね。
うん、まあ……子供だったんだよ、子供。お父様から拳骨くらったけどね。王太子も国王様に拳骨くらってたし……両成敗でその場は終わりました。
……あまり覚えてないと思ったけど、けっこう覚えてたな。
それから十年以上の年月が過ぎたわけだが。
今日の城からの呼び出しは、今後の事についての説明だそうです。
今後。
そう、私と王太子はもうすぐ貴族が通う王立学園を卒業する。卒業したら、すぐに婚約式を行い、一年後には結婚式となるのだ。
その事についての説明、なんだってさ。
改めて今日の用件を思い出した私は、ますます憂鬱になるのだった。
なんでって?
そりゃあねえ……
子供の頃の一件があったとはいえ、王太子とはとっても仲良くなった!
王太子の言葉遣いはすっかり改善、超ラブラブ!
私もソバカス消えて体重減って、元気……は減ってないけど、大人しくすることは覚えた!
──だったら良かったんだけどねえ!
現実はその真逆なのですよ。
いや、私の外見に関しては本当の事なんだけど。
ソバカスなんて気にしないわ、お転婆いたずら大好き♪とか思ってたのに、いつの間にかソバカスは消えた。お転婆高じて走り回ってたら食べる以上にカロリー消費して痩せた。
のだけど、王太子との仲は全くもって好転しなかった。というかほっとんど会わない。
あの初対面の日から、学園入学するまでまともに顔見て会話した回数、両手で足りるんじゃないだろうか。それってむしろ凄くないか!?
ちなみに学園で王太子を見かけた時は、大抵誰かと一緒だった。──100%女性だったな、そういや。
図書室の窓からどこぞの令嬢と口と口とくっつけてるのとか見た瞬間。
つまりはキッチュしてるのを見た瞬間。
あまりの気持ち悪さに、トイレダッシュで嘔吐したのも懐かしい青春の思い出……ではないな、ホント。ちなみに青春の反対は白秋というらしい。秋。いや秋どころか冬なんだけどね、心の中が吹雪くわ。
そんなわけで私と王太子の仲が進展することなどなく、あっという間に卒業とあいなった。
となればだ、当然のように正式婚約からの結婚となる。なるよなあ……。
「お父様、もしかして私と王太子の婚約って夢だったんじゃないでしょうか?」
「現実だ」
「もしかしたらとっくに解消されてるとか?」
「現在進行中だ」
「ひょっとしなくても、私はこの世の者ではなかったり……?」
「正真正銘、私の娘であるお前はこの世で生きている」
そうですかあ!
何とか逃げたいと、前を歩くお父様に言ってみたのだけど。
後ろを振り返ることなく、言われてしまいましたよ。
じゃあもうあれだな。
ようやく目的の部屋に辿り着き、ノックをする父の背中を見つめながら。
私は最後の希望を王太子に託すことにした。
そもそもあの浮気者が、私と結婚なんて受け入れるはずもない。
だから私は望む。
婚約解消を、王太子が言ってくれることを──
開かれる扉を見つめながら。
最後に希望が残されるのを期待しながら、扉をくぐるのだった。
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