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探偵の門
よく食う人
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久能は採用が決まると、すぐさま事務作業へと投入された。
なにもかもがわからないなか、睦美の指示を頼りに、必死に書類の山と向かい合った。
そして今日六杯目になるコーヒーに口をつけたところで、昼を迎えた。
「久能くん、出前とるけど、君はどうする?」
睦美は伸びをしながら、外の景色を眺めている。都市の外れとあって、この建物より背の高いビルはない。
「そうですね……」
まさかこんなことになるとは思ってもいなかったので、久能はなんの用意もしていなかった。お寒い懐事情もあって、即座に出前に食いつくこともできない。
そんな久能の内心を察したのか、「採用祝いでおごるわよ。遠慮しないで選びなさい」と、睦美は机の上にあったメニューを久能に向かい放り投げた。
「いいんですか?」
「しつこい人は嫌われるわよ。ほらほら、ちゃっちゃと決めなさい」
久能はメニューを手に取ると、ざっと目を通す。
ここ最近まともな食事をとっていなかったので、口のなかに唾液が広がり、腹が鳴った。
「一人暮らしでしょ、自炊はしてるの?」
「滅多に。いつもカップラーメンで済ませてます」
睦美は「おいおい」と呆れたように首を横に振った。
「ま、その年頃はそんなもんかもしれないけどさ、これからは栄養のあるものをとりなさい。身体がもたんよ」
「そうですね。あ、俺、月見うどんにします」
「それだけでいいの? 遠慮しないでいいのよ」
その言葉に、久能はジッとメニューを見下ろす。
「じゃあ、ナポリタンも」
「飲み物は?」
「じゃあ、サイダーで」
「それでいい?」
「はい、これ以上は。睦美さんは、なんにします?」
その問いに、睦美はなぜか胸を張り、「私はね、牛丼にかつ丼、後はバニラアイス、コーラにするわ」といった。
「い、意外に食うんですね」
「意外に食うわよ、私」
睦美は勝ち誇った笑みを浮かべた。
それにしては細くもなく、太くもなく、スカートから覗く脚はしなやかで。久能の頬が赤くなる。
「ほらほら、ぼさっとしない。注文を頼みましょう」
「あ、はい」
久能は飛びつくように受話器を手に取り、メニューにあった番号をプッシュした。
「はい、こちら『游来軒』です」
聞こえてきたのは、気だるげな男の声だった。
「あ、出前、頼みたいんですけど」
「はい、かしこまりー」
なにやらすれる音がして、男の「はい、注文どうぞー」という言葉。
久能はちらちらと睦美の方を盗み見ながら、「えっと、かつ丼と牛丼と……」と覚えた品名を口にした。
なにもかもがわからないなか、睦美の指示を頼りに、必死に書類の山と向かい合った。
そして今日六杯目になるコーヒーに口をつけたところで、昼を迎えた。
「久能くん、出前とるけど、君はどうする?」
睦美は伸びをしながら、外の景色を眺めている。都市の外れとあって、この建物より背の高いビルはない。
「そうですね……」
まさかこんなことになるとは思ってもいなかったので、久能はなんの用意もしていなかった。お寒い懐事情もあって、即座に出前に食いつくこともできない。
そんな久能の内心を察したのか、「採用祝いでおごるわよ。遠慮しないで選びなさい」と、睦美は机の上にあったメニューを久能に向かい放り投げた。
「いいんですか?」
「しつこい人は嫌われるわよ。ほらほら、ちゃっちゃと決めなさい」
久能はメニューを手に取ると、ざっと目を通す。
ここ最近まともな食事をとっていなかったので、口のなかに唾液が広がり、腹が鳴った。
「一人暮らしでしょ、自炊はしてるの?」
「滅多に。いつもカップラーメンで済ませてます」
睦美は「おいおい」と呆れたように首を横に振った。
「ま、その年頃はそんなもんかもしれないけどさ、これからは栄養のあるものをとりなさい。身体がもたんよ」
「そうですね。あ、俺、月見うどんにします」
「それだけでいいの? 遠慮しないでいいのよ」
その言葉に、久能はジッとメニューを見下ろす。
「じゃあ、ナポリタンも」
「飲み物は?」
「じゃあ、サイダーで」
「それでいい?」
「はい、これ以上は。睦美さんは、なんにします?」
その問いに、睦美はなぜか胸を張り、「私はね、牛丼にかつ丼、後はバニラアイス、コーラにするわ」といった。
「い、意外に食うんですね」
「意外に食うわよ、私」
睦美は勝ち誇った笑みを浮かべた。
それにしては細くもなく、太くもなく、スカートから覗く脚はしなやかで。久能の頬が赤くなる。
「ほらほら、ぼさっとしない。注文を頼みましょう」
「あ、はい」
久能は飛びつくように受話器を手に取り、メニューにあった番号をプッシュした。
「はい、こちら『游来軒』です」
聞こえてきたのは、気だるげな男の声だった。
「あ、出前、頼みたいんですけど」
「はい、かしこまりー」
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