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三ツ葉第一銀行現金強奪事件
バイク好き
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午前零時。コンビニから戻った相羽は、自転車のカゴに入れていたコンビニ袋を手に取った。
普段のスーツ姿ではなく、上下ネイビーのスウェット姿で、髪もセットされていない。
相羽はため息を吐く。それがもう癖になっていた。そしてそれでどうなるでもないということを知っていた。
枯れた中年オヤジ。これから先の展望など期待できない。失うものはなにもない。
いったい自分はなにを守っているのだろう。いっそ楽になってしまおうか。いや、その意気地すらないじゃないか。
そんなことを思いながら、相羽は駐輪場から歩きだす。二階建ての安アパートの六畳間、そこに向かい。
すると、こんな時間にやかましい音がする。それは徐々に相羽へと近づいてくる。
なんだ? 相羽はすっと路地の方へと視線をやった。
すると街灯の明かりよりも更に眩い光が広がり、それは相羽のくたびれた顔を照らし出した。
その音と眩しさに、相羽は顔を逸らす。そして視線だけを目的に向かい上げてゆく。
バイク。そこにまたがるシルエット。自分を迎えに来た死神にしては、ずいぶんとパンクな登場だ。
そんなことを思っている間に光は消えて、相羽にとっては懐かしいと感じる音も消えていた。
SR400。そうか、こいつだったのか。相羽の脳裏に、過去の映像がよみがえる。
亜希子。妻の名前を呼ぶ自分の声。それはまだ瑞々しく、希望を持っていた頃のもの。
街灯の薄明りに浮かぶシルエット。それはゆっくりと頭に被ったものを脱ぐ。
後ろで束ねた黒髪がふわりと舞う。
真希那。最後に見たのは五年前、十二歳の頃。まだ見ぬ成長した娘の姿を、相羽はそのシルエットに重ねてしまう。
「あ、どうも」
シルエットの正体は過だった。過は相羽の姿を確認し、「どうしたんすか?」と尋ねた。
「あ、ああ、いいバイクだなと思ってね」
それを聞き、「でしょ!」と過の表情が明るくなる。
「色は違うけど、別れた妻が昔乗っていたんだよ」
少々重い話題にも関わらず、「いいっすね」と過は気にした様子もなく返す。
「おじさんも、バイク好きなんすか?」
「昔はね」
最後に乗っていたのはバンディット1200。週末は妻を連れてよく出かけていたものだ。
「今日、買ったばかりなんすよ。妹がバイクデビューなんで」
「それはめでたい。妹さんが選んだのかい?」
「もう一目惚れ。これがいいって聞かなくて」
過は困ったように頭を掻くが、嬉しさを隠すことができていない。
「いい娘じゃないか。もしかして、それは君のかい?」
相羽は、SR400の隣にあるバリオス2に視線を送った。
「そうっすよ。これが俺の愛車っす」
過は「いいしょ」と満面の笑みを浮かべながら、手入れの行き届いたボディを撫でる。
「うん、僕も好きだよ」
長いこと忘れていた笑顔。相羽は自然と、しがらみなく笑えていた。
「それじゃ、事故らないように。妹さんにも、しっかりと教えてあげるんだよ」
相羽はそういうと、軽く右手を上げて、アパートの階段を上ってゆく。
その背中に、「うーっす」と過は頭を下げる。同じアパートに、あんな人がいたんだなと思いながら。
普段のスーツ姿ではなく、上下ネイビーのスウェット姿で、髪もセットされていない。
相羽はため息を吐く。それがもう癖になっていた。そしてそれでどうなるでもないということを知っていた。
枯れた中年オヤジ。これから先の展望など期待できない。失うものはなにもない。
いったい自分はなにを守っているのだろう。いっそ楽になってしまおうか。いや、その意気地すらないじゃないか。
そんなことを思いながら、相羽は駐輪場から歩きだす。二階建ての安アパートの六畳間、そこに向かい。
すると、こんな時間にやかましい音がする。それは徐々に相羽へと近づいてくる。
なんだ? 相羽はすっと路地の方へと視線をやった。
すると街灯の明かりよりも更に眩い光が広がり、それは相羽のくたびれた顔を照らし出した。
その音と眩しさに、相羽は顔を逸らす。そして視線だけを目的に向かい上げてゆく。
バイク。そこにまたがるシルエット。自分を迎えに来た死神にしては、ずいぶんとパンクな登場だ。
そんなことを思っている間に光は消えて、相羽にとっては懐かしいと感じる音も消えていた。
SR400。そうか、こいつだったのか。相羽の脳裏に、過去の映像がよみがえる。
亜希子。妻の名前を呼ぶ自分の声。それはまだ瑞々しく、希望を持っていた頃のもの。
街灯の薄明りに浮かぶシルエット。それはゆっくりと頭に被ったものを脱ぐ。
後ろで束ねた黒髪がふわりと舞う。
真希那。最後に見たのは五年前、十二歳の頃。まだ見ぬ成長した娘の姿を、相羽はそのシルエットに重ねてしまう。
「あ、どうも」
シルエットの正体は過だった。過は相羽の姿を確認し、「どうしたんすか?」と尋ねた。
「あ、ああ、いいバイクだなと思ってね」
それを聞き、「でしょ!」と過の表情が明るくなる。
「色は違うけど、別れた妻が昔乗っていたんだよ」
少々重い話題にも関わらず、「いいっすね」と過は気にした様子もなく返す。
「おじさんも、バイク好きなんすか?」
「昔はね」
最後に乗っていたのはバンディット1200。週末は妻を連れてよく出かけていたものだ。
「今日、買ったばかりなんすよ。妹がバイクデビューなんで」
「それはめでたい。妹さんが選んだのかい?」
「もう一目惚れ。これがいいって聞かなくて」
過は困ったように頭を掻くが、嬉しさを隠すことができていない。
「いい娘じゃないか。もしかして、それは君のかい?」
相羽は、SR400の隣にあるバリオス2に視線を送った。
「そうっすよ。これが俺の愛車っす」
過は「いいしょ」と満面の笑みを浮かべながら、手入れの行き届いたボディを撫でる。
「うん、僕も好きだよ」
長いこと忘れていた笑顔。相羽は自然と、しがらみなく笑えていた。
「それじゃ、事故らないように。妹さんにも、しっかりと教えてあげるんだよ」
相羽はそういうと、軽く右手を上げて、アパートの階段を上ってゆく。
その背中に、「うーっす」と過は頭を下げる。同じアパートに、あんな人がいたんだなと思いながら。
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