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9話:地穿鹿を解体する
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いったん家に戻った俺は、さっそく地穿鹿の解体を始める。俺の解体方法は人目に付くとまずいため、家の隣に建てた「農具倉庫」兼「解体部屋」で行う。
普通なら大きい獲物は仕留めたらその場で解体をするものだが、俺はもろもろの都合で丸ごと持って帰る。
初めの頃は村の皆に驚かれたが今ではすっかり見慣れたもので、帰りの時も地穿鹿を担いだ俺よりも冒険者の方に目が向いていたくらいだ。
「血抜きは終わっているから、まずは頭を落とすか――【血織刃:鎌首】」
部屋に置いてある血染めのローブで大鎌を作り、そのままひと息に首を落とす。野盗討伐で大量の血液を採取できたおかげで威力も上がり、首はほとんど抵抗を感じずにきれいに切り落とされた。
「すげえ切れ味だな。夜狩熊と野盗十六人の血を吸わせると、【血濡魔術(ブラッティー・マジック)】の威力も上がるな」
その分消費魔力もやや上がってしまったが、布を用いた【血織刃】はもともと消費魔力も少ないためこの程度なら誤差みたいなものだ。
流石に野盗の血を全部抜くのは見つかった時に吸血鬼騒ぎにでもなりそうだったから、血はひとりから全体の四分の一程度しか吸収しなかったがこれで充分だったな。
「これなら予想よりも早く解体が終わりそうだ。明日の朝には皆に渡せそうだな」
そうとなれば今日は少し張り切ることにする。
肛門を切り離して腹を裂いたら、内臓を順に取り除いていく。心臓と肝臓は食用で肉とは別で保存しておく。体内に残っていたわずかな血も、【渇紅紋】が付与された布を被せておけば、布が触れた部分を起点に体中から血が集まってくる。
わざわざ血の布を介せず直接血を抜けと思わるかもしれないが、【血濡魔術(ブラッティー・マジック)】に血液を直接動かす能力はない。
一見すると血液自体を動かしているように見えるから勘違いされがちだが、俺の魔術の肝はあくまで血に濡れた「核となっている物体」であり、血とはあくまでその物体に付与効果を持たせるための強化パーツなのだ。
かみ砕いて説明すると、物に「切断能力」や「浮遊能力」、それから「巨大化」や「圧縮」などといった機能を持たせるのが【血濡魔術(ブラッティー・マジック)】の権能だ。ただ血がついてないと魔術を発動できないという制限があるだけだ。
体内の血液に直接干渉できればいろいろと速いのだが、これが俺の固有魔術なのだから仕方ない。
「頭はどうしようか。角は薬になるし脳には魔石もあるから、取り出して売れば金になるし……そのまま剥製にするのも悪くないか? 剥製を村の酒場のホールに飾れば箔が付きそうだし、上手くいけばダリオンの心象アップにもつながるかも」
しばらく悩んだが決められず、とりあえずそのまま放置しておいた。明日誰かに相談しよう。
【血濡魔術(ブラッティー・マジック)】のおかげで解体も掃除も早く終わり、外が完全に暗くなる前にはすべて終わらせることができた。
この日の夕食は贅沢に地穿鹿の肉をステーキにして食べ、今日狩りに使った弓と血染布の整備をして眠りについた。
そして翌日。地穿鹿の肉を実家に届けると、期待通り喜んでもらえた。果実の類を渡せなかったのは少し心残りだが、その分美味い部位を多めに渡すことでカバーした。
それから地穿鹿の頭は相談した結果、剥製にして酒場の主人に送ることにした。完成したらダリオンに頼んで届けてもらおう。
色恋沙汰に関して俺は未経験ではないものの、良いアドバイスができるわけでもない。ぜひ兄には頑張っていただきたいものだ。
「いやアゼル。他人事のように言っているが、お前もいい歳だろ。好きな女性の一人や二人くらい見つけろ」
「じゃあミレーヌで……冗談だ冗談。そんなショックを受けたような顔で凝視すんな。でもそんくらいの焦りは持っておいたほうがいいぞ?」
固まってしまったダリオンを放置してその場を離れる。さあて、兄のささやかなきっかけ作りのために、ちったあ良い物でも作ろうかね。
そこから数日の間、俺は剥製作りに没頭した。製作途中で地穿鹿の目を潰してしまいかなり焦ったが、魔石を取り出し球体に加工して眼孔に嵌めて目の代わりにした。
【血濡魔術(ブラッティー・マジック)】も駆使して完璧な球になるよう拘ったが、思いのほか出来がよくまるで生きた瞳のように輝いていた。
完成品をダリオンに渡して酒場に届けさせると、主人は大層気に入ったらしく帰ってきたダリオンの手には手土産に渡された酒瓶が握られていた。
ふむ、将来は剥製で生計を立てるのもありかもしれないな。
普通なら大きい獲物は仕留めたらその場で解体をするものだが、俺はもろもろの都合で丸ごと持って帰る。
初めの頃は村の皆に驚かれたが今ではすっかり見慣れたもので、帰りの時も地穿鹿を担いだ俺よりも冒険者の方に目が向いていたくらいだ。
「血抜きは終わっているから、まずは頭を落とすか――【血織刃:鎌首】」
部屋に置いてある血染めのローブで大鎌を作り、そのままひと息に首を落とす。野盗討伐で大量の血液を採取できたおかげで威力も上がり、首はほとんど抵抗を感じずにきれいに切り落とされた。
「すげえ切れ味だな。夜狩熊と野盗十六人の血を吸わせると、【血濡魔術(ブラッティー・マジック)】の威力も上がるな」
その分消費魔力もやや上がってしまったが、布を用いた【血織刃】はもともと消費魔力も少ないためこの程度なら誤差みたいなものだ。
流石に野盗の血を全部抜くのは見つかった時に吸血鬼騒ぎにでもなりそうだったから、血はひとりから全体の四分の一程度しか吸収しなかったがこれで充分だったな。
「これなら予想よりも早く解体が終わりそうだ。明日の朝には皆に渡せそうだな」
そうとなれば今日は少し張り切ることにする。
肛門を切り離して腹を裂いたら、内臓を順に取り除いていく。心臓と肝臓は食用で肉とは別で保存しておく。体内に残っていたわずかな血も、【渇紅紋】が付与された布を被せておけば、布が触れた部分を起点に体中から血が集まってくる。
わざわざ血の布を介せず直接血を抜けと思わるかもしれないが、【血濡魔術(ブラッティー・マジック)】に血液を直接動かす能力はない。
一見すると血液自体を動かしているように見えるから勘違いされがちだが、俺の魔術の肝はあくまで血に濡れた「核となっている物体」であり、血とはあくまでその物体に付与効果を持たせるための強化パーツなのだ。
かみ砕いて説明すると、物に「切断能力」や「浮遊能力」、それから「巨大化」や「圧縮」などといった機能を持たせるのが【血濡魔術(ブラッティー・マジック)】の権能だ。ただ血がついてないと魔術を発動できないという制限があるだけだ。
体内の血液に直接干渉できればいろいろと速いのだが、これが俺の固有魔術なのだから仕方ない。
「頭はどうしようか。角は薬になるし脳には魔石もあるから、取り出して売れば金になるし……そのまま剥製にするのも悪くないか? 剥製を村の酒場のホールに飾れば箔が付きそうだし、上手くいけばダリオンの心象アップにもつながるかも」
しばらく悩んだが決められず、とりあえずそのまま放置しておいた。明日誰かに相談しよう。
【血濡魔術(ブラッティー・マジック)】のおかげで解体も掃除も早く終わり、外が完全に暗くなる前にはすべて終わらせることができた。
この日の夕食は贅沢に地穿鹿の肉をステーキにして食べ、今日狩りに使った弓と血染布の整備をして眠りについた。
そして翌日。地穿鹿の肉を実家に届けると、期待通り喜んでもらえた。果実の類を渡せなかったのは少し心残りだが、その分美味い部位を多めに渡すことでカバーした。
それから地穿鹿の頭は相談した結果、剥製にして酒場の主人に送ることにした。完成したらダリオンに頼んで届けてもらおう。
色恋沙汰に関して俺は未経験ではないものの、良いアドバイスができるわけでもない。ぜひ兄には頑張っていただきたいものだ。
「いやアゼル。他人事のように言っているが、お前もいい歳だろ。好きな女性の一人や二人くらい見つけろ」
「じゃあミレーヌで……冗談だ冗談。そんなショックを受けたような顔で凝視すんな。でもそんくらいの焦りは持っておいたほうがいいぞ?」
固まってしまったダリオンを放置してその場を離れる。さあて、兄のささやかなきっかけ作りのために、ちったあ良い物でも作ろうかね。
そこから数日の間、俺は剥製作りに没頭した。製作途中で地穿鹿の目を潰してしまいかなり焦ったが、魔石を取り出し球体に加工して眼孔に嵌めて目の代わりにした。
【血濡魔術(ブラッティー・マジック)】も駆使して完璧な球になるよう拘ったが、思いのほか出来がよくまるで生きた瞳のように輝いていた。
完成品をダリオンに渡して酒場に届けさせると、主人は大層気に入ったらしく帰ってきたダリオンの手には手土産に渡された酒瓶が握られていた。
ふむ、将来は剥製で生計を立てるのもありかもしれないな。
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